4. 退職一時金の所得税は、退職所得控除を差し引いて2分の1にした金額にかかる

退職金を一時金で受け取ると、所得税では「退職所得」として扱われます。国税庁のタックスアンサー「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」で、計算のしかたを確認します。

4.1 退職所得の金額は「(収入金額-退職所得控除額)×2分の1」

退職所得の金額は、原則として、源泉徴収される前の収入金額から退職所得控除額を差し引き、その残りを2分の1にして計算します。退職所得は、原則としてほかの所得と分けて所得税額を計算します。

ただし、役員等として勤めた期間が5年以下の人の退職金や、勤続年数が5年以下の人の退職金には、2分の1にしない部分があります。

4.2 退職所得控除は勤続20年までが1年40万円、20年を超えた分は1年70万円

退職所得控除額は、勤続年数が20年以下なら「40万円×勤続年数」(80万円に満たないときは80万円)、20年を超えるなら「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」で計算します。勤続年数に1年未満の端数があるときは、1年に切り上げます。

障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、計算した額に100万円が加わります。前の年以前に退職金を受け取ったことがある場合などは、計算が異なることがあります。

4.3 勤続38年なら退職所得控除は2060万円、勤続30年なら1500万円

計算例として、22歳で入社して60歳で定年を迎えた勤続38年の人の退職所得控除額を出すと、800万円+70万円×18年で2060万円です。大学・大学院卒の管理・事務・技術職の平均1896万円を退職一時金として受け取った場合、退職所得控除の範囲に収まり、退職所得の金額は0円になります。

勤続30年の場合の退職所得控除額は、800万円+70万円×10年で1500万円です。同じ1896万円を一時金で受け取ると、(1896万円-1500万円)×2分の1で、退職所得の金額は198万円になります。

5. 「退職所得の受給に関する申告書」を出しているかどうかで、源泉徴収の扱いが変わる

退職金から差し引かれる所得税は、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を出しているかどうかで扱いが分かれます。同じタックスアンサーの「税額の計算方法」で確認します。

5.1 申告書を出している人は、原則として確定申告がいらない

申告書を提出している人は、勤務先が所得税額と復興特別所得税額を計算し、退職金を支払うときに源泉徴収します。そのため、原則として確定申告は必要ありません。

ただし、医療費控除や寄附金控除を受けるなどの理由で確定申告書を出す場合は、確定申告書に退職所得の金額も書く必要があります。

5.2 申告書を出していない人は、支払金額の20.42%が源泉徴収される

申告書を提出していない人は、退職金の支払金額の20.42%にあたる所得税額と復興特別所得税額が源泉徴収されます。この場合は、本人が確定申告をして税額を精算します。

退職所得控除が差し引かれないまま源泉徴収されるため、受け取った直後の手取り額が少なくなります。精算が終わるまでの金額を、個人向け国債を買う資金として見込まないようにしたいところです。

6. 退職金を個人向け国債に回す前に、振込額と源泉徴収の内訳を書面で確かめる

銀行で退職金のご相談に携わっていた頃は、振り込まれた金額を見て、思っていた額と違うと驚かれる方がいらっしゃいました。退職金を個人向け国債に回す前に、確かめておきたいことをお伝えします。

6.1 振込額は、退職金の額から源泉徴収された税額を差し引いた金額

口座に振り込まれるのは、退職金の額そのものではなく、源泉徴収された税額を差し引いた後の金額です。退職所得控除の範囲に収まっていれば差し引かれる税額はありませんが、申告書を出していなければ20.42%が差し引かれています。

勤務先から受け取る書類で、退職金の支払額と源泉徴収された税額を確かめてから、個人向け国債に回す金額を決めると、後から計算が合わなくなることを避けられます。

6.2 国債を買う金融機関で口座を開き、口座管理手数料の有無も確かめる

財務省によると、国債は証券が発行されず、口座上の記録で管理されています。初めて国債を買うときは、購入する金融機関で国債の取引をするための口座を開く必要があり、運転免許証やマイナンバーが記載されている書類などが求められます。

金融機関によっては、口座の管理手数料などがかかる場合があります。退職金の振込先とは別の金融機関で買うときは、振替の手間とあわせて事前に窓口で確かめておくと安心です。

7. まとめ

個人向け国債の10月募集分は、固定5年が年2.39%、固定3年が年2.07%、変動10年の初回の利子が年2.05%で、募集は10月30日までです。11月募集分の利率は11月6日に発表される予定です。

厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」では、定年退職者の退職給付額の平均は大学・大学院卒の管理・事務・技術職で1896万円、高校卒の管理・事務・技術職で1682万円、高校卒の現業職で1183万円でした。

退職金を一時金で受け取ると、退職所得控除を差し引いて2分の1にした金額に所得税がかかります。「退職所得の受給に関する申告書」を出していないと20.42%が源泉徴収されるため、振込額と税額の内訳を確かめてから、個人向け国債に回す金額を決めることが大切です。

参考資料

中本 智恵