4. 墓じまいの前に知っておきたい注意点3つ

代わりの書面が示されたとはいえ、墓じまいには見落としやすい点がいくつかあります。ここでは3つの注意点を確認しましょう。

4.1 注意点1:代わりの書面で必ず許可されるとは限らない

代わりの書面を認めるかどうかは、市町村長が判断します。総務省の同資料では、市町村から「代わりの書面として何が適当か分からない」という声も聞かれたそうです。

窓口によって案内が異なる可能性もあるため、申請の前に電話などで必要書類を確かめておくと安心でしょう。

4.2 注意点2:自宅に安置・散骨する場合、改葬許可は不要とされている

総務省の同資料は、取り出した遺骨を自宅に安置する場合や散骨する場合には、改葬許可は必要ないとする厚生労働省の見解に触れています。

ただし、改葬許可が要らない場合でも、墓地の返還や原状回復といった管理者との手続きは別に必要です。許可の要否だけで手続きが軽く済むと考えないよう注意しましょう。

4.3 注意点3:離檀料には明確な基準がない

国民生活センターが2022年6月に発行した「見守り新鮮情報」第424号では、墓じまいの際に高額なお布施(いわゆる離檀料)を求められたという相談事例が取り上げられました。同号は、離檀料に明確な基準はなく、金額に納得できない場合は基本的に寺などと話し合うことになるとしています。

困ったときは、消費者ホットライン「188」に電話すると、最寄りの消費生活センターなどの相談窓口を案内してもらえる仕組みです。

5. 終活を始めている人は8%。老後の家計から見たお墓の準備

冒頭の介護マーケティング研究所の調査は、「介護ポストセブン」の会員組織「介護のなかま」登録者を対象に、2026年4月24日から5月19日にインターネットで実施されました。有効回答は3375人で、介護に関心の高い人が中心の回答である点には留意が必要です。

終活の実施状況と、始めていない理由3/4

終活の実施状況と始めていない理由

出所:介護マーケティング研究所 by 介護ポストセブン「自身の終活に関する調査」をもとにLIMO編集部作成

5.1 終活を始めていない理由は?

同調査では、検討または情報収集中の人のうち71%が「本格的に始めたい」「やや始めたい」と答えています。一方、終活を始めていない人の理由は次のとおりでした。

  • まだ先のことだから:50%
  • 仕事や現在の生活が忙しい:27%
  • 何をすればよいかわからない:27%

終活の相談先は「家族」が56%で最も多く、「専門家」は9%、「相談サービス」は4%にとどまりました。お墓のように親族や寺院が関わるテーマほど、家族の間だけで抱え込みやすいといえそうです。

5.2 高齢無職夫婦の家計は毎月いくら不足している?

墓じまいのような一度きりの支出は、老後の家計の中で準備することになります。総務省統計局が2026年に公表した「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計は次のとおりでした。

  • 実収入:25万4395円
  • 実支出:29万6829円
  • 毎月の不足:4万2434円

たとえば月4万2434円の不足が1年続くと、4万2434円×12カ月で50万9208円を貯蓄から取り崩す計算です。

なお、この家計収支は1カ月の平均的な支出を示したもので、介護が必要になったときの費用や、墓じまいのような一時的な出費は見込まれていません。

5.3 65歳以上の無職世帯の貯蓄はいくら?

2026年5月19日に総務省統計局が公表した「家計調査報告 貯蓄・負債編 2025年(令和7年)平均結果の概要(二人以上の世帯)」によると、世帯主が65歳以上の無職世帯の貯蓄現在高は2494万円でした。

前年に比べて66万円(2.6%)減り、6年ぶりの減少となっています。定期性預貯金は778万円で、前年から81万円減りました。

平均値は一部の貯蓄の多い世帯に引き上げられやすいため、自分の家計に当てはめるときは注意が必要です。

墓じまいの費用は墓地の広さや移し先によって変わるため、管理者や石材店に見積もりを取り、家計の取り崩し計画に組み込んでおくと慌てずに済みます。

6. まとめにかえて|お墓の終活は「管理者」と「書類の場所」の確認から

墓じまいで遺骨を別のお墓へ移すには、市区町村の改葬許可が必要です。その際に求められる埋蔵証明書がもらえない場合について、2026年1月に厚生労働省が代わりの書面の例を示しました。

とはいえ、代わりの書面は話し合っても進まないときの手段です。まずは今のお墓の管理者が誰か、使用者の名義はどうなっているか、契約書や使用許可証がどこにあるかを確かめることから始めてみてはいかがでしょうか。

熊谷 良子

終活の調査では、始めていない理由として「何をすればよいかわからない」が27%にのぼりました。お墓は、その「何から」が特に見えにくいテーマのひとつだと思います。改葬件数が10年で約2倍になったことからも分かるように、お墓の悩みは決して特別なものではありません。

ただ、最初の一歩は意外と小さなものです。管理者の連絡先を控える、契約書のありかを確かめる、それだけでも次に何を聞けばよいかがはっきりしてきます。いきなり墓じまいを決める必要はありません。

家族に重い話を切り出しにくいときは、「お墓の書類、どこにしまってあったかな」という確認から始めるのもひとつの方法です。費用の目安も、見積もりを1つ取るだけで家計の計画に落とし込みやすくなります。見積書は、家族と話すときの具体的な材料にもなるはずです。できるところから少しずつ、準備を進めていきましょう。

参考資料