「終活を始めたいけれど、何から手をつければいいのか分からない」。2026年10月8日に小学館の「介護マーケティング研究所 by 介護ポストセブン」が公表した「自身の終活に関する調査」によると、終活をしている人は8%にとどまり、検討または情報収集中の人が38%でした。
自由回答には、墓じまいの手続きや費用についての疑問も寄せられています。お墓の遺骨を移す「改葬」は、平成26年度の約8万4000件から令和6年度には約17万6000件へと増えました。
その手続きでつまずきやすいのが、今のお墓の管理者が作る「埋蔵証明書」です。本記事では、2026年1月に厚生労働省が示した、証明書がもらえないときの取り扱いを中心に確認していきます。
1. 墓じまいに必要な「改葬許可」とは?改葬は10年で約2倍の約17万6000件に
2026年1月30日に総務省東北管区行政評価局が公表した「墓じまいに関する情報収集結果」によると、全国の改葬件数は平成26年度の約8万4000件から、令和6年度には約17万6000件に倍増しました。もとになっているのは、厚生労働省の「衛生行政報告例」です。
改葬とは、いったん納めた遺骨を別のお墓や納骨堂へ移すことを指します。墓じまいで遺骨を永代供養墓などに移す場合は、「墓地、埋葬等に関する法律」第5条にもとづき、市区町村長の許可が必要とされているのです。
- 平成26年度:約8万4000件
- 令和6年度:約17万6000件
1.1 墓じまいの手続きはどんな順番で進む?
同資料には、一般的な改葬手続きの例として次の流れが載っています。
- 今の墓地の管理者に相談する
- 移し先を決め、使用許可証などを入手する
- 改葬許可申請書を入手する
- 今の墓地の管理者から埋蔵証明書をもらう
- 埋蔵証明書を添えて、市区町村に改葬許可申請書を出す
- 改葬許可証を受け取る
- 遺骨を取り出し、墓石を撤去して更地で返す
- 移し先に納骨する
宗教や宗派によっては、閉眼供養や開眼供養といった儀式が必要になる場合もあるでしょう。必要な書類や窓口は自治体ごとに異なるため、お墓がある市区町村の案内で確かめてください。
2. お寺に「埋蔵証明書」を拒否されたらどうする?→厚労省が2026年1月に示した「代わりの書面」とは
改葬許可の申請では、墓地の管理者が作る埋蔵証明書を添えるのが原則です。ただし「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」では、これによりがたい特別の事情があれば、市町村長が必要と認める書面でよいとされています。
管理者が証明を拒んだ場合の扱いは、1955年(昭和30年)の国の回答が根拠になってきました。しかし総務省の同資料によると、聞き取りをした東北管内の9市町村のうち7市町村が、この回答を把握していなかったといいます。
こうした状況を受けて、厚生労働省は2026年1月23日付けの事務連絡で、代わりの書面の例をQ&Aとして自治体に示しました。
2.1 代わりの書面にはどんなものがある?
厚生労働省のQ&Aで例として挙げられたのは、次の2つです。
- 墓の写真
- 埋蔵証明書を提出できない経緯を書いた申述書
総務省の同資料には、実際に代わりの書面で改葬を許可した市町村の例も載っています。寺院が証明書の作成を拒んだケースでは、市町村が次の書類の追加提出を求めたうえで許可しました。
- 墓地の使用者と分かる契約書・使用許可証
- 遺骨が埋蔵されていることが分かる墓石・墓誌の刻字の写真
- 故人との続柄が分かる除籍謄本・戸籍謄本
どの書面を求めるか、改葬を許可するかどうかは、あくまで市町村長の判断です。
3. 【筆者コメント】
「埋蔵証明書がなくても墓じまいできる」と受け取られがちですが、Q&Aが示しているのは、話し合ってもなお証明書が出ない場合の扱いにすぎません。国の回答でも、市町村はまず管理者に証明書を出すよう指導すべきだとされています。
お寺との関係がこじれてから窓口に駆け込むより、最初の相談の段階で「いつまでに」「何を」お願いするのかを書き留めておくほうが、結果として話は進みやすいかもしれません。
やり取りの日付や内容の記録は、万一申述書が必要になったときに経緯を説明する材料にもなるでしょう。
墓じまいは、改葬許可を受ければ終わりというわけではありません。墓石の撤去や区画の返還など、管理者との取り決めも残ります。
なお、代わりの書面として何を求めるかは自治体ごとに判断されるため、同じ書類がどこでも通用するとは限りません。書類の準備と並行して、契約書や使用許可証がどこにあるかを早めに確かめておきましょう。
