厚生労働省が2026年8月28日に公表した「令和7年度 医療費の動向」では、概算医療費は49.2兆円で前年度より2.6%増えています。
高額療養費の限度額も2026年8月診療分から見直され、70歳未満の月額上限は所得区分ごとに引き上げられました。上限が高くなると、1人分の医療費だけでは限度額に届かない月が増えます。
そこで注目したいのが、同じ月の家族の自己負担を合わせる「世帯合算」です。協会けんぽの案内では、70歳未満は1つの医療機関の自己負担額が2万1000円以上なら合算できるとされています。
「世帯」の範囲と2万1000円の数え方を確認し、夫の入院と妻の通院が重なった月の計算例を見ていきましょう。
1. 高額療養費の世帯合算は、同じ医療保険に入る家族の自己負担を1か月単位で合わせる仕組み
高額療養費制度では、1か月(1日から月末まで)に医療機関の窓口で払った自己負担が、所得区分ごとの上限(自己負担限度額)を超えると、超えた分が払い戻されます。世帯合算は、この自己負担を家族の分まで合わせて限度額と比べる仕組みです。
協会けんぽは、自己負担額は世帯で合算でき、合算した額が自己負担限度額を超えた場合は超えた額が払い戻されると案内しています。1人が複数の医療機関にかかった月も、同じように合算できます。
1.1 協会けんぽの世帯合算の「世帯」は、被保険者とその被扶養者
ここでいう世帯は、住民票の世帯ではありません。協会けんぽの場合、協会けんぽに加入している被保険者とその被扶養者が1つの世帯です。会社員の夫と、夫の扶養に入っている妻や子どもは、同じ世帯として合算できます。
1.2 70歳未満は、受診者別・医療機関別に2万1000円以上の自己負担だけを合算する
70歳未満の人の自己負担は、すべてを合算できるわけではありません。協会けんぽのよくある質問では、高額療養費の対象となる自己負担額は受診者別、医療機関別、入院・通院別で算出し、2万1000円以上のものが対象とされています。
- 同じ医療機関でも、医科入院・医科外来・歯科入院・歯科外来はそれぞれ別に計算する
- 処方せんで調剤薬局に払った自己負担は、処方せんを出した医療機関の自己負担に合わせて計算する
- 70歳以上の人は、2万1000円未満の自己負担もすべて合算できる
たとえば、同じクリニックの外来で1か月に1万5000円と1万円を払った場合は、合計2万5000円で2万1000円以上になるため合算の対象になります。別の歯科医院で払った1万円は、それだけでは2万1000円に届かないため合算できません。
2. 【計算例】2026年8月からの区分ウで、夫の入院と妻の通院が同じ月に重なったら世帯合算でいくら戻るか
2026年8月診療分からの協会けんぽの自己負担限度額を使い、70歳未満の家族3人が同じ月に受診した場合を計算しました。夫は会社員で、標準報酬月額28万〜50万円の区分ウです。妻と大学生の長男は夫の被扶養者で、窓口負担はいずれも3割とします。
【この月の受診(いずれも同じ月)】
- 夫:A病院に入院。医療費(10割)50万円、自己負担15万円
- 妻:Bクリニックに通院し、処方せんで薬局を利用。医療費10万円、自己負担3万円
- 長男:C歯科医院に通院。医療費6万円、自己負担1万8000円
区分ウの自己負担限度額は「8万5800円+(総医療費−28万6000円)×1%」です。2026年7月診療分までは「8万100円+(総医療費−26万7000円)×1%」でした。
2.1 夫ひとりの分なら、払い戻しは6万2060円
夫の医療費50万円に当てはめると、限度額は8万5800円+2140円で8万7940円です。自己負担15万円との差額6万2060円が払い戻されます。
妻の自己負担3万円は、妻ひとりでは区分ウの限度額に届きません。合算しなければ、妻の分からは何も戻りません。
2.2 妻の3万円を合わせると、世帯の払い戻しは9万1060円
妻の自己負担3万円は2万1000円以上なので、夫の分と合算できます。合算すると医療費は60万円、自己負担は18万円です。
限度額は8万5800円+(60万円−28万6000円)×1%=8万5800円+3140円で、8万8940円になります。自己負担18万円との差額9万1060円が払い戻されます。夫ひとりの分で申請した場合と比べると、2万9000円多く戻る計算です。
2.3 長男の歯科の1万8000円は2万1000円に届かず、合算に入らない
長男がC歯科医院で払った1万8000円は、2万1000円未満のため合算の対象になりません。家族3人の自己負担は合計19万8000円ですが、限度額と比べるのは夫と妻の18万円です。
なお、この計算例では、直近12か月に高額療養費の支給が3回以上あった場合の「多数回該当」は計算に入れていません。入院時の食事代や差額ベッド代などは、高額療養費の対象外です。
2026年8月に限度額が上がったあとも、同じ医療保険に入る家族の自己負担は、同じ月の分を世帯で合算できます。70歳未満の人は、受診者別・医療機関別に2万1000円以上の自己負担が合算の対象です。
1人分では限度額に届かない月でも、家族の分を合わせると払い戻しの対象になることがあります。自分の所得区分は、加入している協会けんぽ・健康保険組合・市区町村の国民健康保険などの案内で確かめられます。
ここからは、世帯合算ができない3つのケースと、合算の申請の進め方を見ていきます。
世帯合算は、家族それぞれの領収書がそろって初めて計算できます。入院や通院が重なった月は、家族の分の領収書も医療機関ごとに分けて保管しておくと、2万1000円以上かどうかを確かめやすくなります。
