「ROEが高い会社」と聞くと、借金を効かせて数字をかさ上げしているのでは、と身構える方もいるかもしれません。ですが、なかには本業の稼ぐ力だけで高いROEを実現している会社もあります。その代表格が、ユニクロを展開するファーストリテイリング<9983>です。
10月8日に発表された2026年8月期決算で、ROEは21.2%に達しました。この高さがどこから来ているのか、デュポン分解で中身を開けてみましょう。
1. 2026年8月期は増収を上回る増益
2026年8月期(IFRS・連結)は、売上収益が3兆9,633億円(前期比+16.6%)、営業利益が7,431億円(同+31.7%)、親会社の所有者に帰属する当期利益が5,425億円(同+25.3%)でした。
注目すべきは、売上の伸び(+16.6%)を、利益の伸び(営業利益+31.7%)が大きく上回っている点です。つまり、ただ規模が大きくなっただけでなく、利益率そのものが改善しています。
この結果、親会社の所有者に帰属する持分当期利益率(ROE)は21.2%となり、前期の20.2%からさらに切り上がりました。日本企業のROEが8〜10%を一つの目安とされるなかで、20%超は際立って高い水準です。
2. 何が稼いでいるのか——ユニクロのSPAモデル
稼ぎ頭は、言うまでもなく「ユニクロ」です。国内に加え、海外ユニクロが成長のエンジンとなり、これに「ジーユー(GU)」やグローバルブランド事業が続きます。同社の強さの源泉は、企画から生産、販売までを自社で一貫して手がける「SPA(製造小売)」モデルにあります。素材の大量調達から店頭の値付けまでを自前で握ることで、高い利益率を生み出しています。売上高純利益率が13.7%と、小売業としては非常に高い水準にあるのは、このビジネスモデルの表れです。
3. デュポン分解——高ROEの「中身」を開ける
では本題です。ROEは、次の3つの掛け算に分解できます。
ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
ファーストリテイリングの2026年8月期を(期首と期末の平均ベースで)分解すると、売上高当期純利益率が13.7%、総資産回転率が0.94回、財務レバレッジが1.64倍。これを掛け合わせると、ちょうど21.2%になります。
ここで効いているのが、第一の「売上高純利益率13.7%」です。3つの要素のうち、ROEを押し上げている主役は、明らかに本業の利益率です。一方で、第三の「財務レバレッジ1.64倍」は低め。自己資本比率は62.6%と高く、借金への依存はむしろ小さい会社です。つまり、ファーストリテイリングの21.2%という高ROEは、借金のてこで膨らませたものではなく、本業の稼ぐ力で達成した「質の高いROE」だということがわかります。
4. 元機関投資家イズミダの視点:レバレッジに頼らない高ROEは本物
私がアナリストとしてROEを見るとき、いちばん警戒するのが「借金で水増しされた高ROE」です。財務レバレッジを効かせれば、稼ぐ力が平凡でもROEは高く見えます。しかしファーストリテイリングは逆で、自己資本比率62.6%という健全すぎるほどの財務を保ちながら、21.2%のROEをたたき出しています。これは、売上高純利益率13.7%という本業の強さがあってこそ。レバレッジに頼らずに高ROEを実現している会社は、ROEの「質」という点で、私が最も評価するタイプです。
会社の2027年8月期予想は、親会社の所有者に帰属する当期利益が+3.2%と、増益率の鈍化を見込んでいます。海外比率の高まりは、成長の源泉であると同時に、為替や各国の消費環境に業績が左右されやすくなることも意味します。高ROEの「質」の高さを確かめたうえで、その稼ぐ力がこの先も伸び続けるか——そこを、私は追っていきたいと考えています。前提しだいで景色は変わりますので、通期の数字だけで判断しないことが肝心です。