データセンター向けビジネスやAI関連銘柄として、株式市場から注目を集めるミネベアミツミ。動画の聞き手も、同社をAIやデータセンター関連で盛り上がっている銘柄の一角だと、ぼんやり受け止めていたと話します。ところが、今期予想の営業利益の半分以上を稼ぐのは、機械の滑らかな動きを支える「ベアリング」という伝統的な部品です。AIが話題になる会社の利益は、どこから生まれているのでしょうか。この疑問について、元機関投資家の泉田良輔氏が事業構造と決算をもとに解説します。

この記事のポイント

  • ミネベアミツミは、機械部品と電子部品の2社が統合し、入力から出力までを一気通貫で担う企業です
  • 売上規模が最大の事業は半導体関連だが、利益の過半を稼ぎ出しているのはベアリング事業です
  • AIサーバーやヒューマノイド向けの部品群が、中長期的な成長を牽引する計画となっています

1. 異なる強みを持つ2社の統合がもたらしたもの

1.1 「究極の部品メーカー」を目指した経営統合

ミネベアミツミという企業を理解する上で欠かせないのが、その成り立ちです。同社は、2015年12月に「ミネベア」と「ミツミ電機」が経営統合の基本合意を発表し、2017年4月に株式交換の効力発生を予定していたという経緯で誕生しました。

統合発表時の資料によれば、両社はアナログとデジタルの融合により「究極のエレクトロ メカニクス ソリューションズ プロバイダー」を目指すという目標を掲げていました。売上高1兆円、営業利益1,000億円強という世界でも類のない総合部品メーカーになることを掲げた統合でした(達成時期は資料に記載がありません)。

1.2 入力から出力までを一気通貫で担う事業構造

泉田氏は、統合のニュースを聞いた当時、やっていることが全然違う会社がくっつくという印象だったと振り返ります。そのうえで、この統合がもたらした事業領域の補完関係に注目します。

統合前のミネベアは、ベアリングやモーターといった「動くもの(メカ)」を扱う出力側の部品に強みを持っていました。一方のミツミ電機は、コネクターやスイッチ、センサーといった「電子信号(エレクトロニクス)」を扱う入力・変換側の部品を得意としていました。

泉田氏はこの構造について、次のように解説します。

「ミネベアがメカでミツミが電子みたいな」「事業ポートフォリオからすると結構ばらけてていいな、そんな見方ができますよね」

入力から出力までの部品を網羅することで、顧客に対して総合的な提案が可能になります。

「仮にお客さんが一緒だとソリューションで提案できるし、行ったことないお客さんだったら『あのお客さん紹介してよ』みたいな話は簡単に想像つくじゃない」

このように、入力から出力までを両社で分担することで、顧客ごとに提案の幅が広がる補完関係が生まれたと泉田氏は見ています。

経営統合に向けた基本合意の資料(2015年12月21日)1/4

経営統合に向けた基本合意の資料(2015年12月21日)

出所:ミネベア・ミツミ電機「経営統合に向けた基本合意の締結について」p.2(2015年12月21日)

 

2. 稼ぎ頭と売上の柱は別? 4つのセグメントを解剖する

2.1 売上最大を誇る「セミコンダクタ&エレクトロニクス」

ミネベアミツミの事業は、現在大きく4つのセグメントに分かれています。その中で最も大きな売上規模を誇るのが、「セミコンダクタ&エレクトロニクス(SE)」セグメントです。

同セグメントは、半導体や光デバイスなどを扱っており、通期の売上予想は5,300億円に上ります。AIサーバー向けのEEPROM(書き換え可能なメモリ)などもこのセグメントに含まれており、データセンター需要の拡大を背景に注目を集めている領域です。

2.2 利益の半分以上を稼ぐ「プレシジョンテクノロジーズ」

一方で、利益の観点から見ると全く異なる景色が広がります。全社の営業利益予想1,200億円のうち、700億円(約58.3%)を稼ぎ出しているのが「プレシジョンテクノロジーズ(PT)」セグメントです。

PTセグメントの主力製品は、機械の摩擦を減らして滑らかな回転を助ける「ボールベアリング」です。データセンター向けサーバーの冷却ファンや、航空宇宙産業向けのロケット・人工衛星など、あらゆる「動く機械」に使われる部品です。

他にも、モーターやバッテリー保護モジュール、センサーを扱う「モーター・ライティング&センシング(MLS)」や、自動車向け部品を主力とする「アクセスソリューションズ(AS)」があり、多様な産業に製品を供給しています。売上の柱と利益の柱が異なるセグメントに分かれていることは、同社の事業構造を測る重要なモノサシとなります。

 

セグメント別の売上高と営業利益(2027年3月期 通期予想)2/4

セグメント別の売上高と営業利益(2027年3月期 通期予想)

出所:ミネベアミツミ「2027年3月期 第1四半期 決算説明会資料」(2026年8月5日)を基にイズミダイズム作成

27/3期 セグメント別業績予想(決算説明会資料)3/4

27/3期 セグメント別業績予想(決算説明会資料)

出所:ミネベアミツミ「2027年3月期 第1四半期 決算説明会資料」p.14(2026年8月5日)