ユニチカが2026年8月6日に発表した、2027年3月期第1四半期決算。読者の皆さんは、ユニチカと聞いてどのような企業を思い浮かべるでしょうか。「ユニチカといえば繊維の会社」という見方を持つ方が多いかもしれません。

実は、現在のユニチカが稼いでいる中身を見ると話が違います。祖業である繊維事業などから撤退した結果、全社の売上高が前年同期比で22%減ったにもかかわらず、本業の儲けを示す営業利益は46%も増えました。稼ぐ事業をフィルムや無機素材に絞り込んだ今、その稼ぎが続くかどうかが、この会社を評価するうえでの焦点になります。

この点について、元機関投資家の泉田良輔氏が事業構造と財務体質を分析し、業績好調の本当の理由を解説します。

この記事のポイント

  • ユニチカは祖業の繊維事業から撤退し、2026年10月1日から所属業種が「繊維製品」から「化学」に変わる
  • 儲からない事業を切り離した結果、第1四半期は22%の減収ながら営業利益は46%の大幅増益
  • 利益を伸ばしているのは高分子事業(フィルム・樹脂)と機能資材事業で、機能資材では半導体向けのガラス繊維の販売が好調
  • 収益基盤ができつつある中、次はその利益をどこへ投資するかが評価の焦点となる

1. 祖業からの撤退と業種変更——「繊維」から「化学」へ

ユニチカの事業構造が大きく変化していることを最も端的に表しているのが、2026年9月1日に同社が発表した「所属業種変更のお知らせ」です。

現在、東京証券取引所におけるユニチカの所属業種は「繊維製品」ですが、2026年10月1日から「化学」へ変更されます。会社側の発表によれば、2024年11月より実行している構造改革において繊維や不織布等の事業から撤退したことにより、フィルムや樹脂などの化学関連事業の売上構成比率が拡大したことが理由とされています。

泉田氏はこの変化について、「テキスタイルからケミカルへと」会社が生まれ変わる過程であり、企業再生(ターンアラウンド)のひとつの結果が見えた状態だと指摘します。

当社株式の所属業種変更のお知らせ(2026年9月1日)1/3

当社株式の所属業種変更のお知らせ(2026年9月1日)

出所:ユニチカ株式会社「当社株式の所属業種変更のお知らせ」(2026年9月1日)

では、なぜユニチカは長年親しまれてきた祖業の繊維事業を捨てる決断をしたのでしょうか。その背景には、厳しい財務状況がありました。

泉田氏が繊維事業の業績を振り返ったところによると、繊維事業の売上高は長く右肩下がりで(足元5〜6年は横ばい)、利益が出ていた時期でも利益率は1桁台前半にとどまっていました。さらに、繊維事業のセグメント利益は2021年3月期以降6期連続で赤字となっており、ビジネスとしては存在していても「お金が出て行っている状態」だったと言います。

全社的に見ても、2022年度、2023年度と収益が大きく悪化し、手元の現預金も減少していました。自社単独での再生が困難な状況に追い込まれたユニチカは、2024年11月28日に株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)へ事業再生計画を提出し、支援決定を受けました。事業再生計画では、REVICと三菱UFJ銀行から役職員の派遣を受けて体制を強化するとしており、本格的な構造改革に乗り出したのです。

「強いものを残し、弱いものを捨てる。(中略)稼げないものをやめて当たり前なんだけど、稼げるものに集中するってそれしかないんですよ」

泉田氏はこのように述べ、企業が生き残るためには、衣料繊維や不織布といった不採算事業から撤退し、収益の柱となる高分子事業(フィルム・樹脂)や無機系素材(ガラス繊維など)に経営資源を集中させるしかなかったと解説します。

実際に、2026年3月期末時点でのセグメント資産を見ると、事業ごとに割り当てられた資産(セグメント資産)を見ると、報告セグメントの合計が1,080億円(108,022百万円)ある中で、繊維事業の資産はもはや66億円(6,602百万円)にまで縮小しています。

「撤退がここまで粛々と行われてきて、あとはもう儲かる事業に集中するだけ」

2. 売上22%減でも営業利益46%増——構造改革が生んだ「減収増益」

不採算事業からの撤退を進めた結果は、直近の決算数字に鮮明に表れています。

2026年8月6日に発表された2027年3月期第1四半期の決算実績を見ると、売上高は241億800万円(24,108百万円)で前年同期比22.0%の減収となりました。しかし、本業の儲けを示す営業利益は41億6,200万円(4,162百万円)で同46.4%の大幅増益、最終的な儲けである四半期純利益も40億5,600万円(4,056百万円)で同211.3%増となっています。

2027年3月期 第1四半期の前年同期比(売上高・営業利益・純利益)2/3

2027年3月期 第1四半期の前年同期比(売上高・営業利益・純利益)

出所:ユニチカ株式会社「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年8月6日)を基にイズミダイズム作成(純利益=親会社株主に帰属する四半期純利益)

売上が下がっているのに利益が大きく増えているという、一見すると不思議な現象について、泉田氏は次のように分析します。

「これを構造改革をやって、儲からない事業を減らして、収益が高い事業に集中した結果というのが、これだけで言えますね」

また、会社側が発表している通期の業績予想と比べると、第1四半期の進み具合がわかります。通期の営業利益予想は80億円(8,000百万円、前期比24.2%減)で据え置かれていますが、第1四半期の時点ですでに41億6,200万円を稼いでおり、通期予想の半分以上を最初の3ヶ月で達成しています。泉田氏は、予想は修正していないものの「結構いいペースで来てる」と見ています。