3. ユニチカはいま何で稼いでいるのか?——フィルムと無機素材の実力
では、繊維事業を切り離した現在のユニチカは、具体的にどのような製品で利益を生み出しているのでしょうか。
第1四半期から、同社の報告セグメントは従来の3区分から「高分子事業」と「機能資材事業」の2区分へと変更されました(旧繊維事業などは「その他」に内包)。営業利益の増減を見ると、高分子事業が前年同期比で7億円の増益、機能資材事業が6億円の増益となり、その他が1億円の減益であったため、差し引きで13億円の増益となっています(説明会資料の表示。億円未満の端数などがあるため、各事業の増減を足した数とは一致しません)。
2027年3月期 第1四半期 セグメント別の売上高・営業利益3/3
出所:ユニチカ株式会社「2027年3月期 第1四半期 決算の概要」(2026年8月6日) p.7
3.1 高分子事業:高付加価値フィルムへのシフト
高分子事業の中で最も伸びているのが「フィルム」です。包装分野では石油化学製品(石化製品)の供給不安を背景とした需要増があり、工業分野でも電子材料の需要が継続して堅調に推移しています。
また、高分子事業の「他」に含まれるユニチカ上海では、食品の包装に使われるハイバリアナイロンフィルム「エンブレムHG」を中心に販売が拡大しています。工業分野では、シリコーンフリー離型フィルム「ユニピール」や高耐熱ポリアミドフィルム「ユニアミド」などがあり、会社は事業再生計画で、独自のニッチ領域で存在感を発揮しているとしたうえで、電気電子用途を中心に拡販に注力するとしています。
利益が伸びている要因は、単に物が売れたからだけではありません。説明会資料は高分子事業の増益要因として、高付加価値品の販売伸長に加え、機動的な価格改定、不採算販売の見直し、コストダウンの効果を挙げています。泉田氏は、数量と売上が増えたうえにオペレーションの効果も出ており、会社が経営資源を振り向けた分野で一番よい状況が実現できている、と評価しています。
3.2 機能資材事業:半導体分野で活躍するガラス繊維
もう一つの柱である機能資材事業では、「ガラス繊維」の売上が最も伸びています。
特に注目されるのが電子材料分野です。ユニチカは事業再生計画で、絶縁性や寸法安定性などの機能を生かした超薄ガラスクロス(ガラス繊維を織って布状にしたもの)で、ハイエンドメモリなどの半導体パッケージ基板(半導体チップを載せて機器の基板とつなぐ土台)向けに注力するとしています。第1四半期も超極薄低熱膨張ガラスクロスと超極薄Eガラスクロスの販売が好調で、アプリケーションプロセッサー(スマートフォンなどの頭脳にあたる半導体)用途への採用も拡大しました。
インタビュワーは、体操服などを作っていた会社が半導体関連の材料を手がけていることに驚いていました。この点について、泉田氏は次のように説明します。
「やっぱりコアの技術というのは絶対に残ってるし、繊維事業は売っても、次この会社が残さなきゃいけないR&Dは繊維技術なんだよね。なので、そういった技術は残しながら売る形を変える」
泉田氏の見立てでは、祖業の繊維事業から撤退しても、そこで培われた技術は形を変えて、現在の高付加価値製品を支えているということです。
4. 収益が出た後の「投資先」が次の評価ポイント
大幅な構造改革によって止血を行い、稼げる事業に集中することで、ユニチカは収益を生み出す体質へと生まれ変わりつつあります。第1四半期に41億6,200万円の営業利益を計上したことは、その証左と言えるでしょう。
しかし、企業再生の道のりはここで終わりではありません。泉田氏は、今後のユニチカを評価する上で投資家が注目すべきポイントを次のように提示します。
「1回ここでしっかり収益出る形を作って、その後が成長戦略で、成長戦略をかけるかっていうのがセカンドステップになる」
つまり、現在生み出している利益を、次にどの分野へ投資していくのかを見極めるフェーズに入ったということです。
ただし、投資判断においては慎重に見るべき限界点もあります。例えば、好調なガラスクロスの用途について、インタビュワーはデータセンターと結びつけていました。泉田氏も、ハイエンドメモリといえば今はデータセンターだとしつつ、「最終的な仕向け先、ちょっとこの資料だとわかんないですけども、キーワードでそういったことは推測できますね」と、推測であると断っています。実際、決算短信に記載されている用途は「ハイエンド携帯端末向けモバイルメモリ用途」と「アプリケーションプロセッサ用途」であり、データセンター向けと確認できる記述は会社の資料にはありません。
泉田氏は、再生局面の会社の株価はまず「損が止まり収益が改善する」という期待で動き、落ち着いたところで収益の規模が見えてくると説明しています。ユニチカが化学メーカーとしてどのような成長戦略を描き、稼いだ利益をどこに投じるのか。それが次に同社を評価するうえでの分かれ目になると考えられます。
参考資料
- ユニチカ株式会社「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年8月6日)
- ユニチカ株式会社「2027年3月期 第1四半期 決算の概要」(2026年8月6日)
- ユニチカ株式会社「2025年3月期 中間期決算及び事業再生計画説明資料」(2024年12月6日)
- ユニチカ株式会社「当社株式の所属業種変更のお知らせ」(2026年9月1日)
- ユニチカ株式会社「第216期 有価証券報告書」(2025年4月1日〜2026年3月31日)
- YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
各資料の入手先: ユニチカ株式会社 IRライブラリ
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