また、子供が本音で話せず心が乱れているときの特徴に「落書き」があります。周りの環境を見ても、落書きの目立つ地域はどこか危なそうな雰囲気を出していませんか。

次のような男の子がいました。訳あって母親とは別居で父親のもとで暮らしていたのですが、父親の帰りがいつも遅かったためにいっしょに時間を過ごすことが少なかったようです。

またその父親は怒ると怖かったようで、その子は言うだけ言われて何も言い返せず目に涙をためていたとのこと。それでだんだん胸の内を明かすことがなくなってきたようです。

すると、その男の子の教科書やノートに落書きが目立つようになってきました。教科書の乱れは心の乱れ。今思い返してみても、たまったストレスを落書きで放っていたのかもしれません。落書きをするので当然授業は集中できず、成績も伸び悩みました。

さらに学童保育で働いている知人から聞いた話ですが、学童で学校の宿題を終わらせる児童の中に「やり直し」と言われても仕方ないくらい汚い字で宿題をする子がいたそうです。

「あれだけ汚く書いていたら親に絶対に注意される」とその知人は言っていました。推測するに親の気を引く、親にかまってほしいからわざと汚く書くのではないかとのことです。さびしい気持ちがあったのかもしれません。

おわりに

以上、本音で話せない子供達のとる行動についていくつか述べてきましたが、共通するのは親との言葉のキャッチボールができていないこと。親から一方的に話すことはあっても子供の言い分受けとめることはありません。少しでも子供の話を聞くだけで状況はよくなるのにと思うことは多いです。

勉強するにしても健やかに生活するにしても、おだやかな家庭環境は欠かせません。そして、心から話し合える環境を整えることは子供に安心感を与えます。うれしいことがあれば話し手も聞き手もうれしい気持ちを共有する、相談があればいっしょに考える、子供と会話をする時間そのものを大切にしていけばおたがい生活が充実するはずです。勉強だって進んでするようになるかもしれません。ほんの少し子供の話に耳を傾ける余裕を持って笑顔で会話を楽しんでみてはいかがでしょうか。

久枝 壮一郎