3. 木の持ち主が知っておきたい注意点は3つ
実家の庭木の枝が隣家に越境している場合、木の持ち主の側が知っておきたい注意点は、次の3つです。
3.1 注意点1:催告から2週間程度で切られることがある
先に見たように、所有者に催告してから相当の期間(基本的には2週間程度)が過ぎても枝が切られないと、隣地の所有者が自ら切り取れるようになります。
実家を離れて暮らしている場合、隣家からの連絡が実家の郵便受けに届いたまま、気づかないうちに期間が過ぎてしまうことも考えられるでしょう。
3.2 注意点2:切り取りにかかった費用を請求される可能性がある
法務省の「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」では、枝の越境が土地の所有権を侵害していることや、本来は竹木の所有者が負っている切除の義務を免れることを踏まえ、切り取りにかかった費用は基本的に竹木の所有者に請求できると考えられるとの見解が示されています。
根拠として挙げられているのは、民法703条・709条です。
3.3 注意点3:所有者が分からないと、催告なしで切られることがある
3つのケースの2つ目に挙げた、所有者が分からない、または所在が分からない場合には、催告を経ずに枝が切られることがあります。
相続登記がされないまま年月がたつと、登記簿を見ても今の所有者がすぐには分からない状態になりかねません。法務省は、相続登記がされないことなどにより、登記簿から所有者が直ちに判明しない土地や、所有者が判明しても連絡がつかない土地を「所有者不明土地」と説明しています。
3.4 自治体に仲介を頼めない点も盲点
越境した枝をめぐる問題は、居住の有無にかかわらず民事(相隣関係)の問題です。八千代市のように、自治体として仲介や伐採の依頼、仲裁などを行えないと案内している自治体もあります。
4. 空き家約900万戸の時代、実家の庭木は「相続の宿題」に
総務省が2024年に公表した「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年10月1日時点の全国の空き家は約900万戸で、空き家率は13.8%でした。いずれも過去最多・過去最高です。
このうち、賃貸用や売却用、別荘などの二次的住宅を除いた「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は385万6000戸で、2018年の前回調査から36万9000戸増えました。戸建ての空き家に限ると、この「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」が約8割を占めています。
親が暮らしていた戸建てが空き家になると、庭木の手入れが行き届かず、気づかないうちに枝が隣地へ伸びていくことも考えられるでしょう。こうした背景もあり、同じ令和3年の法改正では、不動産を相続したときの相続登記の申請が義務化され、2024年4月1日から施行されました。
相続登記を済ませ、隣家に連絡先を伝えておくことは、所有者が分からないために催告なしで枝を切られる事態を避けることにもつながると考えられます。
5. まとめにかえて|秋の帰省で実家の木を見ておく
2023年4月1日の民法改正で、越境した枝は、催告しても切られない場合、所有者が分からない場合、急迫の事情がある場合の3つのケースで、隣地の所有者が自ら切り取れるようになりました。
切り取れるのは越境した部分に限られますが、費用は基本的に木の所有者に請求できると考えられています。
連休などで実家に帰る機会があれば、境界付近の枝の伸び具合を見ておくとよいでしょう。あわせて、隣家に今の連絡先を伝えておくこと、相続登記が済んでいるかを確認しておくことも大切です。
個別の事情で判断に迷う場合は、弁護士など専門家や、自治体の法律相談窓口に相談してください。
私の実家にも、父が遺した大きなヒノキがありました。日当たりを遮るうえに古い葉の掃除も大変で、太い根が物置を押し上げるほどだったため、植木屋さんからは根ごと抜くよう勧められたのです。
それでも伐採してしまうのは忍びなく、高さ2メートルほどで幹を残して切ってもらいました。いまはその切り株にツタとハツユキカズラを絡ませていて、老木を包むように茂る姿がわが家の見どころになっています。
ただ、ツタやハツユキカズラは繁殖力が強いため、地植えにする場合は隣地への越境や外壁への付着を防ぐよう、こまめな剪定・管理が欠かせません。
庭木は、切るか残すかを決めるまでに時間がかかるものです。だからこそ、隣家に迷惑がかかる前に、家族で一度話題にしておくことをおすすめします。
秋は庭のお手入れがしやすい季節です。次の帰省では、庭の木を少しだけ眺めてみてはいかがでしょうか。
