日本株から日本株投信へ

フィデリティ退職・投資教育研究所が2010年から継続して実施している「サラリーマン1万人アンケート」では、投資をしていると回答した人にその投資商品を聞いています(複数回答)。その結果から、投資対象商品の志向に変化が出ていることがわかります。

2010年と2019年を比較すると、比率を下げているのが、日本の株(73.7%➡66.1%)、外貨預金(19.3%➡13.3%)、外国為替証拠金取引(15.6%➡13.2%)、毎月分配型投資信託(16.5%➡12.2%)、日本の債券(12.7%➡11.4%)などです。

日本の株式を選ぶ比率は依然トップなのですが、7.6ポイント減っており、その代わりに日本株に投資する投資信託の比率が21.8%➡30.8%へと上昇しています。日本株を投資対象にしていることにあまり変わりはありませんが、その対象が現物株式から投資信託に変わってきていることが窺えます。

外国の株式に関しては、現物でも7.4%➡13.2%へと比率が高まっており、外国株式に投資する投資信託の増加(20.1%➡23.7%)と相まって、外国株式への投資の志向は強くなっているようです。代わりに海外関係の投資先として外貨預金や外国為替証拠金取引が減っている点を考えると、海外向けでは株式投資への志向が強まっていることがわかります。

一方、毎月分配型投資信託の比率は2013年まで上昇して、その後は減少傾向となっています。毎月分配型投資信託に対する厳しい見方が登場したことが背景にありそうですが、アンケート対象者が現役世代であることを考えると、分配金を受け取るよりも複利効果で資産形成を狙った投資を志向するべきです。これはちょっともったいない感じが残ります。

非課税制度の整備がその背景に

これまでこのコラムで2019年のサラリーマン1万人アンケートの結果を分析してきました。その中で一貫した流れとして、若年層を中心にして投資への理解が進み始めたこと、積立投資への志向が強まっていることなどが挙げられます。

その同じ流れが投資商品への志向にも表れているように思われます。すなわち、上記の通り投資信託を志向する傾向が強まっている点です。2014年に導入されたNISA(少額投資非課税制度)では、個別株も対象になっていましたが、投資信託の使い勝手の良さが目立ちました。

さらにその後のつみたてNISA、iDeCo(個人型確定拠出年金)では株式が投資対象から外れ、一段と投資信託に向かう流れを作りました(元本確保型商品なども含まれますが)。

こうした非課税制度が積立投資の制度として利用されるようになってきたことが、その背景といえそうです。

投資対象商品の変化 (単位:人、%)

出所:フィデリティ退職・投資教育研究所、サラリーマン1万人アンケート(2010年、2013年、2015年、2016年、2018 年、2019年)
注:複数回答可

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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史