3. 生活保護の住宅扶助は、福祉事務所が家主へ直接払う「代理納付」もできる
本人に交付するのが原則の住宅扶助ですが、生活保護法には、福祉事務所が家賃を本人に代わって家主へ支払う「代理納付」の規定があります。どのような費用が対象になるのか、条文で確認します。
3.1 生活保護法第37条の2が定める「保護の方法の特例」
代理納付の根拠は、生活保護法第37条の2「保護の方法の特例」です。条文の冒頭と結びは次のとおりです。
保護の実施機関は、保護の目的を達するために必要があるときは、(略)被保護者に代わり、政令で定める者に支払うことができる。
出所:e-Gov法令検索「生活保護法」第37条の2
同じ条文は、この支払いがあったときは、本人に保護金品を交付したものとみなすとしています。家賃分は家主に渡りますが、保護費として本人に支給されたことに変わりはありません。
3.2 代理納付の対象は家賃のほか、介護保険料や学校の設置者が徴収する費用など
代理納付の対象になる費用は、生活保護法施行令第3条に並んでいます。
- 住宅扶助の保護金品(家賃など):支払先は家主などの債権者
- 生活扶助で支払う、住宅を借りて住むのに通常必要な費用のうち厚生労働省令で定めるもの:支払先は債権者
- 生計困難者に無利子・低利で資金を貸す事業の貸付金の償還:支払先は貸付をした者
- 教育扶助で支払う、通学する学校の設置者が徴収する費用:支払先は学校の設置者
- 介護保険料:支払先は被保険者としている市町村・特別区
住宅扶助(家賃)を本人に支給する場合と、代理納付の場合の流れ2/2
出所:e-Gov法令検索「生活保護法」、e-Gov法令検索「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」をもとにLIMO編集部作成
3.3 居住サポート住宅に住む人の家賃は、事業者の通知があれば家主へ支払うのが原則
2025年10月1日に施行された改正住宅セーフティネット法(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律)で、「居住サポート住宅」の認定制度が始まりました。法律上の名前は「居住安定援助賃貸住宅」です。
居住サポート住宅は、福祉事務所を設置する市区町村の長などが認定する住宅で、日常の安否確認、訪問などによる見守り、生活や心身の状況が不安定になったときの福祉サービスへのつなぎが行われます。
同法第53条は「生活保護法の特例」として、居住サポート住宅の認定事業者が、入居する生活保護受給者の家賃等を家主へ支払うことを希望すると保護の実施機関に通知できると定めています。通知を受けた保護の実施機関は、家賃等を口座振替で納めている場合などを除き、本人に代わって家主に支払うものとされています。
生活保護を受けている世帯の55.2%は高齢者世帯で、その多くはひとり暮らしです。家賃は住宅扶助として本人に支給するのが原則ですが、生活保護法には福祉事務所が家主へ直接支払う代理納付の規定もあります。
居住サポート住宅に住む場合は、認定事業者の通知を受けて家主への支払いが原則とされています。自分の家賃がどちらの方法で支払われているかは、担当のケースワーカーに確かめられます。
ここからは、ひとり暮らしの高齢者の家計と生活扶助基準額の例を確かめたうえで、代理納付に切り替わったときの通帳の見方を見ていきます。
代理納付への変更は、手取りが減るのではなく「家賃滞納を防ぎ、生活費を見える化する」ための仕組みです。口座の入金額が生活扶助(食費・光熱費など)の純額となるため、初月に明細で内訳を確認し、従来の「家賃込みのやり繰り」から「純粋な生活費の予算管理」へ頭を切り替えることが家計安定の近道です。
