4. 月額給与のほかに見ておきたい3つの数字
先ほど紹介した月額給与の分布が示すのは、機関から給与を得ている人の水準です。同じ調査には、機関からの給与なしの区分、社会保険の加入状況、任期の数字も載っています。
4.1 機関からの給与なしは16.9%
2021年度は、機関からの給与なしの区分が2314人(16.9%)でした。この区分にはフェローシップ等も含まれており、収入の有無までは調査結果から分かりません。
分野別では差が大きく、人文は467人(48.1%)、社会は267人(40.5%)、その他は155人(36.6%)が機関からの給与なしでした。
理学は743人(14.6%)、工学は255人(8.4%)、保健は237人(10.7%)、農学は180人(15.9%)です。
男女別では、女性が909人(21.9%)、男性が1405人(14.8%)でした。
4.2 機関負担の社会保険の加入率は67.4%
調査では、機関が負担する社会保険(共済・厚生年金、健康保険)への加入状況も聞いています。2021年度は、加入ありが9205人(67.4%)、加入なしが4401人(32.2%)、不明が51人(0.4%)でした。2018年度の65.9%から1.5ポイント上がっています。
分野別では、人文が22.7%、社会が37.4%と低く、理学が75.3%、工学が77.3%と高い水準でした。性別・国籍別では、日本人女性が56.5%と、日本人男性の67.7%、外国人男性の76.3%、外国人女性の67.5%を下回っています。
この調査が示すのは、機関負担の社会保険への加入状況です。「加入なし」の人が国民健康保険や国民年金など、ほかの制度に加入しているかどうかは、確認した資料に記載がありません。したがって、32.2%は無保険の人の割合を示す数字ではありません。制度の詳細は、所管省庁の公表情報で確認できます。
4.3 任期3年未満は77.0%
任期をみると、「3年未満」が10522人で、全体の77.0%でした。このうち最も多いのは任期1年の6270人(45.9%)です。1年未満が1992人(14.6%)、1年を超え2年未満が1319人(9.7%)、2年以上3年未満が941人(6.9%)でした。割合は、「雇用関係なし」の1542人(11.3%)を含む全体13657人を分母にしています。
現在の所属機関に所属してからの年数は、1年未満が5216人(38.2%)、1年が3126人(22.9%)でした。
5. 博士号取得後の年数と、次年度の進路は?
ポスドクの次年度の在籍状況(2018年度・2021年度)4/4
出所:文部科学省科学技術・学術政策研究所「ポストドクター等の雇用・進路に関する調査(2021年度実績)」概要図表10、同「ポストドクター等の雇用・進路に関する調査(2018年度実績)」をもとにLIMO編集部作成
博士課程修了後の経過年数は、5年以下が8311人(60.9%)で最も多く、6年から10年が2349人(17.2%)です。11年以上も2709人で、全体の約2割を占めます。
次年度(2022年4月1日時点)の在籍状況をみると、ポスドク等を続けている人が9278人(67.9%)で、2018年度調査の11101人(71.2%)から3.3ポイント下がりました。
一方、大学教員やその他の研究開発職に職種を変えた人は2354人(17.2%)で、2018年度の2030人(13.0%)から4.2ポイント上がっています。
ポスドク等の延べ人数は、2018年度の15590人から2021年度の13657人に減りました。
調査の要旨は、この背景として、新型コロナウイルス感染症の影響で移動を伴う雇用が抑えられたことや、URA(大学などで研究活動を支える専門職)をはじめとするポスドク以外の研究・開発職など、キャリアパスが多様化したことが一因とみられる、と述べています。
任期3年未満の割合は、2018年度の67.6%から2021年度の77.0%へ上がりました。
ただし、「雇用関係なし」の割合も22.8%から11.3%に変わっており、理由は資料から確認できませんでした。このため、任期の比率が変わった要因は、確認した資料から読み取れません。
6. まとめにかえて|ノーベル賞の季節に、研究の現場の働き方を知る
ノーベル賞の話題が続く季節に、ポスドクの月額給与、任期、社会保険、次年度の進路を、国の調査から確認してきました。研究の現場には、さまざまな雇用の形があります。
ここで紹介した数字は、2024年3月22日に公表された調査(2021年度実績)のものです。現在の状況を示すものではないため、より新しい調査が公表された際には、あらためて確認する必要があります。
分野別や属性別の詳しい表は、調査報告書に掲載されています。関心のある方は、公表ページをご覧ください。

熊谷 良子
ノーベル賞の知らせが届く季節は、研究という仕事に、ふと目が向く時期でもあります。華やかな受賞の場面の一方で、研究の現場には、任期のある立場で日々向き合っている人たちがいます。
今回の調査を読んで感じたのは、「研究者」とひとことで言っても、その働き方はずいぶん幅広いということです。月額給与や任期、社会保険のように、暮らしに近い項目を並べてみると、見えてくる景色が少し変わります。
お子さんやお孫さん、身近な方が研究の道を考えているとき、こうした調査は話をするきっかけになるかもしれません。
調査報告書には、分野別や男女別の詳しい表も載っています。気になる分野があれば、公表ページをのぞいてみてください。
参考資料
- 文部科学省科学技術・学術政策研究所「ポストドクター等の雇用・進路に関する調査(2021年度実績)」(調査資料-337、2024年3月22日公表)
- 文部科学省科学技術・学術政策研究所「ポストドクター等の雇用・進路に関する調査(2018年度実績)」(調査資料-304)
- 総務省 e-Stat「ポストドクター等の雇用・進路に関する調査」調査計画
池上 翠