1. ノーベル賞の発表の裏側で、ポスドクの月額給与は?
毎年10月は、ノーベル賞の発表で科学や研究が話題になる時期です。受賞者の業績が報じられるたびに、研究の現場に目が向く方もいるでしょう。
その現場には、博士の学位を取得した後、任期付きで研究に従事するポストドクター(ポスドク)と呼ばれる研究者もいます。大学や公的研究機関に在籍する立場です。
この記事では、国の調査をもとに、ポスドクの月額給与の分布、任期、社会保険の加入状況、次年度の進路を整理します。給与の数字だけでなく、契約の長さや社会保険といった、働き方に関わる項目もあわせて確認していきます。
2. ポスドクとは?人数と平均年齢
文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)が2024年3月22日に公表した「ポストドクター等の雇用・進路に関する調査(2021年度実績)」では、博士の学位を取得した人、または所定の単位を修得して博士課程を退学した人のうち、任期付きで採用されている研究者を「ポストドクター等」としています。
大学で教授・准教授・助教・助手などの職にない人と、公的研究機関で研究グループのリーダーなど管理的な職にない人が対象です。
同調査は、大学や公的研究機関1187機関のすべてから回答を得た調査で、2021年度に在籍したポストドクター等は延べ13657人でした。2018年度の15590人から1933人減っています。
平均年齢は38.0歳で、男性が37.5歳、女性が38.9歳です。中央値は35歳でした。男女別の人数は、男性9476人(69.5%)、女性4153人(30.5%)です。性別・年齢が不明の28人は、この年齢と男女の集計に含まれていません。
なお、調査の要旨には、2021年度に在籍した事実を示すものであり、博士課程修了直後から継続してポスドクとして研究してきた人ばかりではない、という注意書きがあります。
3. ポスドクの月額給与はいくら?
月額給与水準の項目は、2021年度の調査から新たに加わりました。2018年度の調査には給与の項目がないため、給与の水準が前回からどう変わったかを比較することはできません。
全体(13657人)でみると、最も多いのは35万円以上40万円未満の2293人(16.8%)で、30万円以上35万円未満の2241人(16.4%)とほぼ並んでいます。
2つを合わせると4534人(33.2%)です。10万円刻みで合算すると、30万円以上40万円未満が最も多い範囲になります。
区分ごとにまとめると、次のとおりです(人数は表10の区分を編集部が合計したものです)。
- 30万円未満:4016人(29.4%)
- 30万円以上40万円未満:4534人(33.2%)
- 40万円以上:2648人(19.4%)
- 機関からの給与なし(フェローシップ等を含む):2314人(16.9%)
- 無回答:145人(1.1%)
15万円未満は1669人で、全体の12.2%を占めます。ただし、この割合の分母は、機関からの給与なしの2314人を含む全体です。給与が分かる11198人(全体から機関からの給与なしと無回答を除いた人数)を分母にすると、15万円未満は14.9%になります。
たとえば、給与が分かる11198人を100人に見立てると、約36人が30万円未満、約40人が30万円台、約24人が40万円以上という分布です。
男女別では、男性は35万円以上40万円未満が1702人(18.0%)で最も多く、女性は30万円以上35万円未満が676人(16.3%)で最も多くなっています。
15万円未満は、男性が1040人(11.0%)、女性が620人(14.9%)です。男女別の割合は、それぞれ男性9476人、女性4153人を分母にしています。
ここまで見てきた月額給与は、機関から給与を受け取っている人の分布です。同調査には、機関からの給与なしの区分、社会保険の加入状況、任期の長さといった項目も並んでいます。
月額給与だけでは、働き方の全体は見えてきません。毎月の金額に加えて、契約がどのくらい続くのか、社会保険はどうなっているのかを重ねてみると、同じ「研究者」でも状況に幅があることが分かります。
なお、月額給与水準が額面か手取りか、賞与を含むかは、確認した資料に記載がなく、この記事では資料の表現のまま「月額給与」と書いています。
ご家族や身近な方に研究職を目指す人がいるときにも、こうした数字は一つの手がかりになるかもしれません。
次の章では、月額給与のほかに見ておきたい「3つの数字」を順に見ていきたいと思います。
