4. 国民健康保険の窓口で多かった、さかのぼった保険料の相談

国民健康保険の保険料の計算を担当していた頃、加入の届出が遅れた人の相談を何度も受けてきました。とくに多かったのは次の2つです。

4.1 「届け出ていない月の分はかからない」と考えていた

届出をした月から保険料がかかると考えていた人は少なくありませんでした。届出のあとに届いた納付書に届出前の月の分まで入っていて、驚いて窓口に来る人をよく見てきました。

退職後は、失業給付や住民税の手続きも重なります。国民健康保険の届出だけが遅れても、資格の始まりは動かないという点は、最初に押さえておきたいところです。

4.2 国民健康保険料の所得割は前年の所得で決まるため、退職した年度は高めに出やすい

国民健康保険料の所得割は、前年の所得をもとに計算します。退職した年度は、会社員として働いていた前年の給与所得が基準になるため、収入が減ったあとでも保険料は高めに出ます。

そこに届出前の月の分が加わるので、最初の納付書の額が大きくなりやすかったのです。

ただし、倒産や解雇などで離職した人には例外があります。北九州市の場合、失業時に65歳未満で、雇用保険の特定受給資格者または特定理由離職者にあたる人は、前年の給与所得を100分の30として保険料を計算します。期間は離職日の翌日から翌年度末までで、届出がないと軽減されません。

届出には、ハローワークで交付される雇用保険受給資格者証などの写しが必要です。加入の届出と同じ日に窓口で伝えると、手続きが1回で済みます。

5. 国民健康保険の届出が遅れたあとに取れる手段と、それぞれの期限

国民健康保険の届出が遅れてしまった場合でも、取れる手段はあります。期限のあるものから順に見ていきます。

5.1 療養費の申請は2年で時効になる

国民健康保険法第110条は、保険給付を受ける権利は、行使できる時から2年を経過すると時効によって消滅すると定めています。届出前の医療費が療養費の対象になりそうなときは、領収書を捨てずに早めに相談します。

対象になるかどうかは、受診したときの事情によります。領収書と診療内容のわかる書面を持って、市区町村の窓口で確かめてください。

5.2 まとまった保険料を一度に払えないときは、納付書が届いた時点で相談する

さかのぼった分を含めた保険料が一度に払えないという相談も、窓口ではよく受けてきました。分けて納める方法などを一緒に考えることができたのは、納期限の前に相談に来た人でした。

払えないまま納期限を過ぎると、選べる方法が少なくなります。納付書を受け取って額に驚いたら、その時点で市区町村の窓口に連絡するのが近道です。

5.3 勤め先の健康保険に入ったら、国民健康保険をやめる届出も14日以内

再就職して勤め先の健康保険に入ったときは、国民健康保険をやめる届出が必要です。北九州市は、資格がなくなったのに届出が遅れ、国民健康保険の資格確認書などで受診した場合、国民健康保険が負担した医療費はあとで返すことになると案内しています。

二重に払った保険料の還付にも、先に見た2年の制限が関わります。加入のときと同じく、やめるときの届出も早めに済ませておきます。

6. まとめにかえて

国民健康保険の資格は、届け出た日ではなく退職日の翌日に始まります。加入の届出が遅れると、保険料は資格を得た時点までさかのぼって請求され、届出前の医療費は特別な理由がない限り全額自己負担になります。

保険料をさかのぼって計算できる期間や、療養費を申請できる期間には、いずれも2年の制限があります。倒産や解雇などで離職した人は、保険料の軽減を受けられることもあります。

退職したら、まず14日以内に住所地の市区町村で加入の届出を済ませ、保険料の額や軽減の対象になるかを窓口で確かめておきましょう。

参考資料

太田 彩子