厚生労働省は2026年9月3日、令和8年度の地域別最低賃金の改定額が全ての都道府県で答申されたと公表しました。全国加重平均は1177円で、前年度の1121円から56円の引上げです。
時給が上がると、パートやアルバイトで働きながら国民健康保険に入っている方は、保険料の軽減の区分が変わるのではと気になるかもしれません。
この記事では、国民健康保険料の決まり方と令和8年度の軽減の基準を確認し、時給1177円で働いた場合にどこで7割・5割・2割の区分が変わるのかを試算します。
なお、国民健康保険料の決まり方に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。
1. 国民健康保険料は「前年の所得」と「世帯の人数」で決まる
国民健康保険料の軽減を考える前に、保険料そのものがどう計算されるのかを押さえておきます。
1.1 パートで勤め先の健康保険に入らない人も国民健康保険の対象
国民健康保険は、勤め先の健康保険や後期高齢者医療制度に入っていない方が加入する医療保険です。自営業やフリーランスの方のほか、パートやアルバイトで勤め先の健康保険の加入要件を満たさない方も対象になります。
1.2 所得に応じた部分と人数・世帯にかかる部分がある
厚生労働省によると、国民健康保険料は世帯単位で計算し、被保険者ごとに応能分と応益分を計算して合計します。具体的な計算方法は、市区町村が条例で定めています。
応能割(負担能力に応じた部分):所得割(前年所得に応じて課される)/資産割(固定資産税額に応じて課される、採用していない自治体もあり)
応益割(受益に応じた部分):均等割(加入者1人あたり一律)/平等割(1世帯あたり一律)
出所:【2026年度の国民健康保険料】まもなく6月から納期スタート!年間上限は「110万円」に引き上げへ
所得が少ない世帯でも、均等割と平等割は人数や世帯にかかるため、そのままでは負担が重くなります。そこで設けられているのが、この部分を減らす軽減の仕組みです。
2. 令和8年度の国民健康保険料の軽減は「5割31万円・2割57万円」で判定する
国民健康保険料の軽減には7割・5割・2割の3段階があり、前年の世帯の所得が基準以下なら均等割と平等割が減額されます。令和8年度の基準を確認します。
2.1 判定の入口は43万円、人数に応じて基準が上がる
さいたま市や松阪市の案内では、令和8年度の基準は次のとおりです。
- 7割軽減:43万円+10万円×(給与所得者等の数−1)以下
- 5割軽減:43万円+31万円×被保険者数+10万円×(給与所得者等の数−1)以下
- 2割軽減:43万円+57万円×被保険者数+10万円×(給与所得者等の数−1)以下
被保険者数には、国民健康保険から後期高齢者医療制度に移った特定同一世帯所属者も含みます。5割の31万円と2割の57万円は、令和7年度の30万5000円・56万円から引き上げられた額です。給与所得者等とは、給与収入が55万円を超える方や、一定額を超える公的年金を受け取る方を指します。
2.2 単身で給与収入だけなら108万円・139万円・165万円が境目
被保険者が1人で収入が給与だけの場合、給与所得者等の数は1人なので、10万円の加算はありません。7割は所得43万円以下、5割は74万円以下、2割は100万円以下が基準です。
令和7年分の給与所得控除は、給与収入190万円までは65万円です。給与収入に直すと、7割は108万円以下、5割は139万円以下、2割は165万円以下になります。
国民健康保険料の軽減の判定基準(令和8年度)と、単身で給与収入だけの場合の目安1/2
出所:さいたま市「国民健康保険税の軽減(低所得)」、国税庁「No.1410 給与所得控除」をもとにLIMO編集部作成
3. 最低賃金1177円で働くと、国民健康保険料の軽減の境目は週何時間か
令和8年度の最低賃金の答申と、時給から年収を出したときの軽減の境目を見ていきます。
3.1 全国加重平均は1177円、発効は10月1日から12月2日にかけて順次
厚生労働省によると、47都道府県で54円から65円の引上げが答申されました。最高額は1280円、最低額は1085円で、比率は84.8%です。
改定後の最低賃金は、令和8年10月1日から12月2日までの間に都道府県ごとに順次発効する予定です。お住まいの都道府県で、いつから新しい額になるかを確かめておきましょう。
3.2 時給が上がると境目の時間は約1時間短くなる
時給×週の労働時間×52週で年収を出し、単身の境目に当てはめてみました。時給1121円なら、7割は週18.5時間、5割は週23.8時間、2割は週28.3時間までが目安です。
時給1177円になると、7割は週17.6時間、5割は週22.7時間、2割は週27.0時間までに縮みます。
時給1121円と1177円で比べた、軽減の区分が変わる週の労働時間の目安2/2
出所:厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」、さいたま市「国民健康保険税の軽減(低所得)」をもとにLIMO編集部作成
たとえば週28時間働く単身の方は、時給1121円なら年収163万2176円で2割軽減の範囲です。時給1177円では年収171万3712円となり、165万円を超えるため軽減の対象から外れます。
週20時間の場合は、時給1121円で116万5840円、1177円で122万4080円です。どちらも5割軽減の範囲に収まります。
国民健康保険料の計算を担当していた頃、パートの勤務時間を少し増やした翌年度に、軽減の割合が変わった理由を聞かれることがありました。軽減は前年の所得で決まるので、働き方を変えた年ではなく翌年度の通知で気づく方が多かったです。

