10月末で会社を辞め、11月から国民健康保険に切り替える人もいるでしょう。退職後は手続きが続くため、市区町村への届出が後回しになることがあります。
国民健康保険の資格は、届け出た日ではなく、勤め先の健康保険をやめた日から始まります。北九州市は、加入の届出が遅れると資格が発生した時点までさかのぼって保険料を納めることになり、その間にかかった医療費は特別な理由がない限り全額自己負担になると案内しています。
この記事では、国民健康保険に加入する人と令和8年度の保険料の決まり方を確認したうえで、加入の届出が遅れたときに保険料と医療費がどう扱われるかを解説します。
1. 国民健康保険に加入するのはどんな人?
はじめに、国民健康保険に加入する人と、加入者になるタイミングを確認します。
1.1 自営業やフリーランス、退職して任意継続や被扶養者にならなかった人など
国民健康保険は、職場の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合など)や後期高齢者医療制度に加入していない人が入る公的医療保険です。たとえば次のような人が加入します。
- 自営業やフリーランスとして働く人
- 会社を退職し、任意継続や家族の被扶養者にならなかった人
- パートやアルバイトで、勤め先の健康保険に加入していない人
1.2 国民健康保険の資格は、退職日の翌日から始まる
国民健康保険法第7条は、勤め先の健康保険などに加入しなくなった日から、国民健康保険の資格を取得すると定めています。会社員が退職すると勤め先の健康保険の資格は退職日の翌日になくなるため、国民健康保険の資格もこの日から始まります。
資格の始まりは、本人が届け出た日とは関係がありません。市区町村への届出は、すでに始まっている資格を知らせる手続きにあたります。
2. 国民健康保険料は令和8年度から4つの区分の合計で決まる
次に、届出が遅れたときにさかのぼって課される国民健康保険料が、どのように計算されるかを見ていきます。
2.1 基礎分・後期高齢者支援金分・介護分に「子ども・子育て支援金分」が加わった
国民健康保険料は、基礎分、後期高齢者支援金分、介護分(40歳以上65歳未満の人)の3区分で計算されてきました。基礎分と後期高齢者支援金分は、合わせて「医療分」とも呼ばれます。令和8年度からは子ども・子育て支援金分が加わり、4区分になっています。
各区分は、前年の所得に応じてかかる所得割と、加入者1人ごとの均等割、1世帯ごとの平等割などを組み合わせて計算します。料率は市区町村ごとに決まっています。
2.2 年間の上限は4区分の合計で113万円
保険料には、区分ごとに年間の上限(賦課限度額)があります。令和8年度は、従来の3区分の合計が110万円で、新設の子ども・子育て支援金分を含めると113万円です。基礎分は前年度から1万円引き上げられて67万円となり、後期高齢者支援金分と合わせた医療分の上限は93万円です。
令和8年度の国民健康保険料は4区分で、年間の上限は合計113万円1/2
出所:厚生労働省「国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について」、厚生労働省「国民健康保険法施行令及び国民健康保険の国庫負担金等の算定に関する政令の一部を改正する政令の公布について(通知)」を参考にLIMO編集部作成
- 基礎分:67万円
- 後期高齢者支援金分:26万円
- 介護分(40歳以上65歳未満):17万円
- 子ども・子育て支援金分:3万円
- 合計:113万円
3. 国民健康保険の加入の届出が遅れると
ここからは、国民健康保険の加入の届出が遅れたときの扱いを、北九州市の案内をもとに保険料と医療費に分けて確認します。
3.1 国民健康保険の加入の届出は原則14日以内
北九州市は、国民健康保険の加入や脱退の事由が発生したら、原則として事実発生日から14日以内に住所地の窓口へ届け出るよう案内しています。
3.2 保険料は届け出た月ではなく、資格を得た月の分からかかる
届出が遅れても、保険料が届け出た月から始まるわけではありません。北九州市の案内では、資格が発生した時点までさかのぼって保険料を納めることになります。
たとえば10月31日に退職して翌年1月に届け出た場合、資格は11月1日に始まっています。届け出るまでの11月と12月の分も、あとから保険料として請求されます。
3.3 国民健康保険料をさかのぼって計算できるのは2年まで
国民健康保険法第110条の2は、保険料の賦課決定はその年度の最初の納期の翌日から2年を経過するとできないと定めています。北九州市は、起算日を通常7月1日と説明しています。
この2年の制限は、払いすぎた保険料を返してもらう場面にも関わります。北九州市は、納付した保険料を還付できなくなる場合があるとして注意を促しています。
なお、第110条の2は保険料についての規定です。国民健康保険税として集めている市区町村には地方税法の規定が適用されるため、期間はお住まいの市区町村で確かめてください。
3.4 届出前にかかった医療費は、原則として全額自己負担
保険料はさかのぼる一方で、届出前に受けた医療は扱いが異なります。北九州市は、届出が遅れた間にかかった医療費は、特別な理由がない限り全額自己負担になると案内しています。
ただし、やむを得ない理由でマイナ保険証や資格確認書を持たずに受診したと認められる場合は、市区町村に申請すると療養費が支給されます。宮城県によると、支給額は保険診療で認められる医療費から一部負担金を差し引いた額で、診療内容のわかる書面と領収書を添えて申請します。
国民健康保険の資格は退職日の翌日に始まり、保険料は届出の時期にかかわらず、その月の分からかかります。届出が遅れた間の医療費は、原則として全額自己負担です。
退職したら、勤め先の健康保険をやめた日がわかる書類を用意し、14日以内に住所地の市区町村の窓口で加入の届出を済ませておくと安心です。
ここからは、元自治体職員として保険料の計算を担当していた頃の窓口の様子をもとに、届出が遅れたあとに取れる手段を見ていきます。