5. 生活保護の通院の交通費は、福祉事務所が決める前に使った分は原則として対象外

移送の給付は、医療扶助の中でも手続きの順番が決められている扶助です。医療扶助運営要領の「給付手続き」をもとに、申請から決定までの流れを確認します。

5.1 移送の給付は原則として事前の申請と領収書等の提出が必要

医療扶助運営要領は、福祉事務所に対して、移送の給付の内容と、原則として事前の申請や領収書等の提出が必要であることを周知するよう求めています。

申請があると、福祉事務所は「給付要否意見書(移送)」で主治医の意見を確認します。嘱託医との協議や、必要に応じて検診命令を行ったうえで、対象となる医療機関、受診日数の程度、経路、利用する交通機関を決めます。

医療要否意見書などで移送が必要なことが明らかで、交通費も確実に確認できる場合は、給付要否意見書(移送)の提出は求めなくてよいとされています。

5.2 決定と違う経路や交通機関で生じた交通費も原則として対象にならない

利用する交通機関は、地域の実態料金や複数の事業者の見積もりなどを比べたうえで、最も経済的な交通機関を福祉事務所が決めます。

福祉事務所が給付を決める前に交通機関を使った交通費は、原則として給付の対象になりません。決定した医療機関、受診日数、経路、交通機関と違うことで生じた交通費も同じ扱いです。

ただし、緊急の場合などで事前の申請が難しいやむを得ない事情があり、その事情がなくなったあとすぐに申請したときは、事後の申請でも内容を確認したうえで給付してよいとされています。

5.3 3か月を超えて続くときは、第4月分を決める前に継続の要否を検討

翌月にわたって移送が必要なときは、引き続き給付を行ってかまいません。3か月を超えて必要な場合は、第4月分を決める前に、給付要否意見書(移送)などを参考に続けるかどうかを検討します。

傷病などの状態から3か月を超えることが明らかで、電車・バスなどの公共交通機関を使っている場合は、検討の時期を第7月分の決定前としてよいとされています。

6. 通院の交通費の申請が遅れたとき、さかのぼれるのは前々月分までが目安

通院の交通費は、領収書をためてまとめて申請しようとすると、時期によっては認められない分が出てきます。さかのぼりの考え方は、行政不服審査会の答申にも示されています。

6.1 最低生活費の遡及変更は「3か月程度」とする国の問答集

福岡県行政不服審査会の答申(令和5年)は、通院移送費の追加支給について、厚生労働省の「生活保護問答集」を引いています。そこでは、最低生活費の遡及変更は3か月程度(発見月からその前々月分まで)と考えるべきとされています。

同じ問答集では、受給者に過失がなく、保護の実施機関が認定を誤ったことが明らかな場合は、発見月から前5年間を限度に追加支給してよいとしています。

6.2 自治体で保険料の窓口に立っていた頃も、申請の時期が論点になった

自治体で国民健康保険の保険料を担当していた頃、制度ごとに届出や申請の期限が違うことは、窓口でもよく説明してきました。医療にかかわるお金でも、保険料、医療費、交通費で手続きの窓口と順番が分かれています。

生活保護の通院の交通費は、福祉事務所の生活保護担当が窓口です。保険料や医療費の窓口とは違うため、通院が始まった段階で担当のケースワーカーに確かめておくと、手続きが後から重ならずに済みます。

7. 【確認したいこと】通院が続くときに福祉事務所で聞いておく3つのこと

移送の給付は、福祉事務所が医療機関・経路・交通機関を決めてから支給されます。通院が続きそうなときは、次の3点を担当者に確かめておくと流れが分かります。

  • 通う医療機関と、認められる経路・交通機関
  • 領収書などを出す時期と方法(郵送でよいかを含めて)
  • 体調によって通院の回数や交通手段が変わるときの連絡先

タクシーなど電車・バス以外の手段が必要な場合も、主治医の意見をもとに福祉事務所が判断します。自分で判断して使う前に、まず相談するのが手続きの順番です。

8. まとめにかえて

被保護者調査(令和8年7月分概数)では、生活保護を受けている世帯は164万4102世帯で、保護停止中を除く世帯の55.2%が高齢者世帯でした。

生活保護の医療扶助では、電車・バスで受診するときの交通費も「移送の給付」として支給されます。移送は経済的かつ合理的な経路と交通手段で行い、原則として事前の申請と領収書等の提出が必要です。

福祉事務所が決める前に使った交通費は、原則として対象になりません。通院が決まったら、医療機関・経路・申請の時期を福祉事務所の生活保護担当で確かめておきましょう。

参考資料

太田 彩子