5. 2025年の食料内訳でみる「削られたもの」と「残ったもの」
物価高の中で、世の中の家庭はどの食品の購入を控え、何を残しているのでしょうか。家計調査の詳しい品目別データから、各家庭の工夫の痕跡を追ってみましょう。
5.1 実質で減ったのは飲料や菓子類、増えたのは外食と乳卵類
総務省統計局「家計調査(2025年平均結果)」第Ⅰ-1-1表によると、食料の各品目における実質増減率(物価変動を除いた購入量の変化)には明確なコントラストが見受けられます。
実質で減少した主な品目を見ると、「飲料」がマイナス3.1%、「菓子類」がマイナス2.8%、「魚介類」がマイナス2.7%、「穀類」がマイナス2.6%、「調理食品」がマイナス1.2%となっています。お茶や清涼飲料水などの飲料、お菓子類のほか、惣菜などの調理食品の購入が抑制されている様子が見受けられます。
一方で、実質で増加した品目も存在します。手軽なたんぱく源である「乳卵類」はプラス1.4%となり、さらに「外食」はプラス1.8%の伸びを示しています。日常の食卓では飲料やお菓子、調理食品の購入をセーブしつつ、日々の栄養や外食の機会を維持しようとするメリハリの効いた家計防衛の姿が見て取れます。
5.2 「外食」が増加している実態と見直しの余地
家計調査のデータ上、外食は実質で前年比1.8%の増加を示しており、実質で減少した飲料や菓子類などとは対照的な動きとなっています。
外食費は1回あたりの支出額が大きくなりやすいため、家計を引き締める際の調整弁としても機能します。外食を全面的に禁止するのではなく、「休日の外食を月1回減らす」「平日のランチをテイクアウトやお弁当に切り替える」といった回数の取り決めを持つ工夫が、大きな支出削減につながる余地を残しています。
6. 明日からできる食費防衛策。独自試算でみる削減効果と固定費の見直し
食卓の現在地と内訳の特徴を把握したところで、明日から家庭で取り組める具体的な対策を整理していきましょう。
6.1 食費を1%・3%・5%削減すると年間いくら?2025年の平均額で独自試算
日々の節約を長続きさせるコツは、無理な我慢を強いるのではなく、「小さな割合の改善」を積み重ねることです。
二人以上世帯の年間食料支出(試算約113万8740円)を基準に考えると、食費をわずか1%削減するだけで年間約1万1387円、3%の削減なら年間約3万4162円、5%の削減なら年間約5万6937円が手元に残る試算になります。
月に直すと、1%で約949円、3%で約2847円、5%で約4745円です。毎食切り詰めるのではなく、「月々の買い出しで数百円から数千円の工夫をする」という小さな意識の積み重ねが、年単位では数万円の差になる計算です。
6.2 データから導く買い物術のポイント
家計調査の内訳データをヒントに、具体的な買い物の工夫を実践してみましょう。
- 購入頻度の高い飲料やお菓子の買い方を見直す:実質減少率が大きかった飲料やお菓子類は、都度買いを避け、ドラッグストアでのまとめ買いやプライベートブランド(PB)商品へ切り替えるなどの工夫をするのも良いでしょう。
- 前年より価格が下がっている食材を献立の主役に据える:東京都区部の物価指数で前年同月比マイナスとなっていた生鮮野菜などを旬の時期に積極的に取り入れ、食卓のボリュームを確保してみるのも一案です。
- 外食の頻度をあらかじめ決めておく:月に利用する回数や予算の上限を家族で共有し、特別な楽しみとして位置づけることで無計画な出費を防ぐ意識を高めておくのも効果がありそうです。
6.3 固定費の見直しで食費の値上がり分を補う
食費を守るためには、食費の枠内だけで考えないことも一つの方法です。
食事の量を減らしたり栄養バランスを崩したりする過度な節約は、家族の健康や幸福感を損なう恐れがあります。
そこで、通信プランや不要なサブスクリプション、保険の契約内容などを点検し、固定費を見直す方法も選択肢の一つです。保険は必要な保障を確認したうえで検討することが前提です。
試算として、食費を5%削減した場合の年間約5万6937円は、月に直すと約4745円です。
食費を切り詰める代わりに固定費で月4745円ほど見直せれば、同じ金額を確保でき、食卓の質を保ちながら家計のバランスを取る選択肢になります。なお、見直せる金額は契約内容や家庭ごとに異なります。
7. まとめにかえて|感覚ではなく数字で現在地を把握しよう
本記事の重要ポイントを振り返りましょう。
- 2026年10月の食品値上げは3153品目に上り、飲料や調味料を中心に高水準な推移が続いています。
- 二人以上世帯の食費は月平均9万4895円で、支払額(名目)は5.5%増えたものの購入量(実質)は1.2%減少しました。
- 飲料やお菓子を抑えつつ外食を適度にコントロールし、固定費の見直しと組み合わせることが食卓を守る選択肢になります。
ニュースの見出しに不安を募らせる前に、まずは直近1か月のレシートを集め、わが家の食費を平均値と比べてみる作業から始めてみてはいかがでしょうか。
8. 【筆者コメント】熊谷良子
値上げが続くと、つい目先の10円、20円の安さに目が行き、疲れてしまうことがあります。
しかし大切なのは、食事の質や団らんの時間を犠牲にすることではありません。
内訳データが示すように、抑えられる項目と大切にしたい項目にメリハリをつけ、固定費など他の支出とトータルでバランスを取ることが持続可能な家計管理のコツです。
先月のレシートから飲料・お菓子・外食の3つだけを抜き出して眺めてみるなど、無理のない一歩を踏み出してみましょう。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概況」
- 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概況」
- 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概況」
- 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概況」
- 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2021年(令和3年)平均結果の概況」
- 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2020年(令和2年)平均結果の概況」
- 総務省統計局「家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表 年次」
- 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2026年7月分速報」
- 総務省統計局「東京都区部消費者物価指数 2026年9月中旬速報」
- 株式会社帝国データバンク「食品主要195社」価格改定動向調査(2026年10月)
