スーパーのレシートを眺めながら、「以前と同じような買い物をしているはずなのに、合計金額が高くなっている」と感じる方は多いのではないでしょうか。
野菜や調味料、お肉やお菓子まで、日々の食卓に欠かせない商品の値上げニュースが毎月のように報じられ、毎月のやりくりに頭を抱える声が聞かれます。
帝国データバンクの調査によると、2026年10月は主要食品メーカー195社だけで3153品目の価格改定が判明しており、2026年の累計はすでに2万品目を突破しました。
毎月のニュースを聞いていると「世の中の家計は一体どうなっているのだろう」「わが家の食費は平均と比べて使いすぎなのだろうか」と不安を覚える場面もあるでしょう。
では、実際の家庭では食費にいくら支出し、物価高に対してどのような変化が生じているのでしょうか。
本記事では、帝国データバンクの値上げ速報と総務省統計局の「家計調査」年次データをもとに、日本の食卓の現在地を客観的な数字から読み解き、無理なく続けられる実践的な防衛策を確認していきましょう。
1. 2026年10月は3153品目が値上げ。食品値上げの現在地
まず、足元で起きている食品値上げの全体像について、最新の公表データから整理していきます。
1.1 分野別では酒類・飲料が1399品目で最多、3000品目超は2か月連続
株式会社帝国データバンクが2026年9月30日に公表した「食品主要195社」価格改定動向調査(2026年10月)によると、2026年10月に価格改定が行われる食品は3153品目に上ります。
月間の値上げ品目数が3000品目を超えるのは2か月連続であり、これは約3年3か月ぶりの水準となります。
分野別の内訳を見ると、最も多いのがビールや清涼飲料水などの「酒類・飲料」で1399品目(全体の約44.4%)を占め、次いで「調味料」が820品目という結果です。家庭で頻繁に消費される飲料や調味料の値上げが重なっており、家計の負担感を強める可能性があります。
なお、年内の推移を振り返ると、9月は4965品目の改定があり、11月は1469品目と、現時点の判明分では10月から減少しています。ただし、今後の追加発表によって品目数が変わる可能性があります。
1.2 2026年累計は2万187品目、加工食品と調味料が中心
2026年全体の動向を見渡すと、9月30日公表時点での判明分を合わせた年間累計の値上げ品目数は2万187品目に達しました。年間で2万品目を超える高水準は2年連続となります。
年間の主な内訳を分析すると、冷凍食品やレトルト食品などの「加工食品」が6961品目と最多であり、次いで「調味料」が6250品目、「酒類・飲料」が3309品目、「菓子」が1390品目という順列になっています。
毎日の献立作りに直結する食材全般において、値上げが定着している現状がうかがえます。
食品メーカーが挙げた主な値上げ要因(複数回答)を見ると、「原材料高」が91.3%で突出しており、次いで「エネルギー」が63.8%、「中東情勢」が27.8%、「円安」が8.1%となっています。原材料に加えてエネルギーなどのコスト上昇が重なっており、複合的な要因が価格を押し上げている背景が示されています。
1.3 東京都区部の物価統計でも食料は上昇。ただし生鮮野菜は下落
消費者が実際に購入する価格の動きを物価指標から確かめてみましょう。
総務省統計局が公表した「2026年9月中旬速報 東京都区部消費者物価指数」によると、食料総合指数は前年同月比で3.2%の上昇を記録しました。天候要因に左右されやすい生鮮食品を除く食料は3.6%の上昇、外食も4.7%の上昇となっています。
ただし、すべての食材が一律に跳ね上がっているわけではありません。同速報において「生鮮野菜」は前年同月比マイナス5.3%と下落しており、品目によって値動きの方向性に違いがある点は意識しておきたい視点です。
2. 2025年の食費は月9万4895円。家計調査で見る「食卓の現在地」
物価高が続く中で、世間一般の家庭は実際に毎月いくら食費を支払っているのでしょうか。年間の確定値から確認してみましょう。
2.1 2025年の食料支出は月平均9万4895円、エンゲル係数は28.6%
総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概況」によると、二人以上の世帯(平均世帯人員2.87人、世帯主平均年齢60.7歳)における1世帯あたりの食料支出は、月平均で9万4895円となりました。
この月平均額を単純に年間へ換算すると、1世帯あたり年間113万8740円(9万4895円×12か月)を食料に費やしている計算となります。
【図版2】二人以上世帯の食料支出とエンゲル係数の推移2/4
出所:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)平均結果の概況」2020〜2025年をもとにLIMO編集部作成
また、消費支出全体(月平均31万4001円)に占める食料支出の割合を示す「エンゲル係数」は28.6%となり、前年から0.3ポイント上昇しました。
なお、消費支出(31万4001円)と食料支出(9万4895円)から単純計算すると約30.2%となります。ただし、概況の注3では、エンゲル係数に用いる食料費は「他の世帯への贈答品やサービスの支出を含まない金額」と定められています。
このため公表値は28.6%となっています。エンゲル係数は2022年の26.6%から3年連続で上昇しており、家計における食費負担の重さがデータの上でも裏付けられています。
各年の概況によると、二人以上世帯の食料支出(月平均)とエンゲル係数は、2020年が8万198円・27.5%、2021年が7万9401円・27.2%、2022年が8万1888円・26.6%、2023年が8万6554円・27.8%、2024年が8万9936円・28.3%でした。
2.2 世帯類型で見ると差がある。総世帯は月7万7394円、単身世帯は月4万9321円
食費の目安を捉える際には、世帯の人数や構成に留意することが欠かせません。先述の9万4895円は、平均約3人(2.87人)の二人以上世帯を対象とした数値です。
同調査によると、単身世帯を含む「総世帯」(平均世帯人員2.15人)の食料支出は月平均7万7394円であり、「単身世帯」(平均年齢58.6歳)では月平均4万9321円となっています。
世帯人員が少なくなれば総額は下がりますが、世帯構成によって支出の配分も異なります。他人の家庭や統計と比べる際は、前提となる世帯人数が自家庭と近いかどうかを確認することが大切です。
3. 食費は名目で増えているのに、実質では減っている
ここで、物価高に直面する家計のリアルを浮き彫りにする重要な指標に目を向けてみましょう。
3.1 「名目」と「実質」の違いとは
家計の統計を見る際、「名目」と「実質」という2つの指標を区別することが重要です。
「名目増減率」とは、実際にレジで支払った金額の増減を表します。一方で「実質増減率」とは、物価の変動による影響を取り除き、「実際に購入できたモノやサービスの量」がどれだけ増減したかを示す指標です。
支払った金額が増えていても、それ以上に物価が上がっていれば、手元に届いた食品の量そのものは減っていることになります。
3.2 2025年は名目プラス5.5%、実質マイナス1.2%
総務省統計局「家計調査」によると、2025年における二人以上世帯の食料支出は、名目では前年比プラス5.5%の増加となりました。ところが、物価変動の影響を除いた実質では前年比マイナス1.2%の減少となっています。
家計は前年よりも月々の支払額を増やしているにもかかわらず、購入できた食品のボリュームは1.2%縮小している計算になります。
多くの家庭が「頑張って食費にお金を回しているのに、食卓が豊かになった実感が湧かない」と感じる一因として、この名目と実質のズレがあると考えられます。
3.3 2026年7月速報も名目プラス2.2%、実質マイナス1.3%
この傾向は2025年通年の結果にとどまりません。総務省統計局「家計調査(2026年7月分速報)」を確認すると、二人以上世帯の食料支出は9万5681円で、名目では前年同月比2.2%増である一方、実質では1.3%減を記録しています。
支払額が増加しているにもかかわらず手に入る食品の量は目減りするという構造は、足元の家計でも継続している状況です。
家計のやりくりを考える上では、「使いすぎているから支出が増えた」と自分を責めるのではなく、「値上げによって支出総額が押し上げられている」という構造的な要因を正しく把握することが求められます。
4. 【筆者コメント】熊谷良子
毎月の家計簿をつけていて食費の合計が増えていると、「自分の節約が足りないのではないか」と不安に思いがちです。
しかし、名目5.5%増に対して実質1.2%減という数字が示す通り、多くのご家庭は買う量を抑えながら知恵を絞って工夫を重ねています。
食費が増えているのは無駄遣いのせいばかりではなく、物価上昇という外的な波による影響が大きい現実があります。
まずは数字のカラクリを理解し、過度な罪悪感を持たないことから始めてみてください。
