確定給付型の場合は会社が運用責任を負いますが、確定拠出型の場合は加入者たる社員自らが運用内容を決めなければなりません。愚息の質問ではありませんが、何に運用するかを自分で決めないとならないのです。

残念ながら、確定拠出年金を取りまとめている人事部は、その中身については運用対象資産が多数のためしっかりした説明はできていないはずです。そういう意味では社員は放ったらかしにされています。結局、社員もあれこれ考えるのが面倒くさいので、企業確定拠出年金の運用対象資産の6割程度が預貯金等の元本確保金融商品になっているのです。

預貯金が悪いというつもりはありませんが、非課税メリットがあったとしても実質的に金利がつかない預金で運用しても元本以上には増えません。加入者は大事な年金の運用でリスクを取りたくないと思っているかもしれませんが、確定拠出年金は数十年の運用期間を生かしてより高いリターンを求めたほうが合理的なのです。

運用リターンがマイナスになるケースも

さらに年金システムをわかりにくくしているのが、iDeCo(個人型確定拠出年金)です。企業型確定拠出年金の口座管理料は原則企業負担ですが、iDeCoの場合は個人負担です。これが以外とバカにならず、金融機関により月あたり200円〜600円程度かかります(積立を行う場合)。

たとえば、iDeCoの資産がすべて預貯金の積立で100万円あるとします。定期預金金利は年0.01%程度ですから。年間100円の利息が得られます。一方で、年間2400円〜7200円程度の口座管理料が運営管理機関(確定拠出年金を運営する金融機関)によって徴求されます。つまり、その手数料を差し引くと運用リターンがマイナス0.23%〜0.71%になるわけです。

政府は勤労者の資産形成のため様々な仕組みを用意していますが、あくまでも使い手である年金加入者がしっかりその仕組みと運用方法を決めないと絵に描いた餅になりかねません。

今回は少々堅苦しい話題となりましたが、みなさんの老後資金を左右するのは年金です。今一度、ご自身のねんきん定期便を確認したり、iDeCo加入を検討したりされてはいかがでしょう。

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太田 創(一般社団法人日本つみたて投資協会 代表理事)