4. 見落としがちな注意点が2つあります
1つ目は、支給停止の対象になるのはあくまで老齢厚生年金だけだという点です。老齢基礎年金は在職老齢年金の仕組みによる支給停止の対象にはならず、条件を満たしていれば全額受け取れます(日本年金機構「在職老齢年金制度が改正されました」)。
2つ目は、加給年金や繰下げ受給を選んでいる場合、在職老齢年金の仕組みとの関係が個々の事情によって変わってくる点です。ケースによって扱いが異なるため、該当する可能性がある方は、日本年金機構や最寄りの年金事務所に個別に確認することをおすすめします。
5. 年金以外にも。働くシニアを支える公的な仕組み
働きながら年金を受け取るシニアを支える制度は、在職老齢年金だけではありません。60歳以降に賃金が下がった人を対象にした雇用保険の「高年齢雇用継続給付」もその一つです。
この給付率は2025年4月から見直され、最大15%だった給付率が最大10%に縮小されたと報じられました。
ただし、高年齢雇用継続給付を受け取りながら特別支給の老齢厚生年金も受給している場合は、在職老齢年金による調整とは別に、標準報酬月額の最大4%にあたる金額が年金からさらに支給停止される「併給調整」という仕組みがあります(2025年4月以降の基準。日本年金機構「年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整」)。
あわせて利用を検討する場合は、この点も踏まえたうえで、勤務先やハローワークで最新の条件を確認することをおすすめします。
6. まとめにかえて|「対象かどうか」は雇用形態ではなく厚生年金加入で見極めを
65歳以上の就業者943万人のうち、在職老齢年金の対象になるのは、厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取っている一部の方です。
2026年4月からは基準額が月51万円から65万円に引き上げられており、これまで年金が減額されていた方でも、条件次第では全額受け取れるようになっている場合があります。
正社員か非正規かにかかわらず、自分の働き方が対象になるのかどうかを正確に把握したうえで、無理のない範囲で働き方を選んでいけるとよいのではないでしょうか。
制度の名前だけを聞くと難しく感じられるかもしれませんが、在職老齢年金の考え方はシンプルです。基準額を超えない範囲で働けば年金は全額受け取れますし、超えても年金がゼロになるわけではありません。
これから働き方を考える方は、まずご自身の年金見込額と、想定している給与の合計を確認してみてください。ねんきんネットや年金事務所を使えば、具体的な見込みの把握が可能です。
働く理由は生活費だけとは限りません。社会とのつながりや健康維持を目的に、収入の多寡にこだわらず働き続けたいという方もいます。基準額を気にするあまり、必要以上に勤務時間を切り詰めてしまうのはもったいないことです。年金の仕組みを正しく知ることは、そうした一人ひとりの選択を後押しする助けになると考えます。
年齢を重ねても、健康や社会とのつながりを保ちながら無理なく働き続けられる選択肢が広がっていくことを願ってやみません。
