5. 【社会保険の適用拡大】2026年10月に賃金要件が撤廃予定。遺族年金を受けながら働くと65歳からの受け取り方が変わる

ここからは、2026年10月に予定されている社会保険の適用拡大と、遺族年金を受けながら働く65歳未満の人との関係を見ていきます。

65歳になるまでの遺族厚生年金は働いても止まりませんが、厚生年金に加入して自分の年金が増えると、65歳からの遺族厚生年金の受け取り方が変わります。

5.1 短時間労働者の加入要件から「月額8.8万円以上」がなくなる予定

厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイトは、短時間で働く人が厚生年金と健康保険に加入する要件として次の4つを挙げています。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 所定内賃金が月額8.8万円以上
  • 2か月を超えて雇用される見込みがある
  • 学生ではない

このうち賃金要件は2026年10月に撤廃される予定です。すべての都道府県で令和7年度の地域別最低賃金が時給1016円を超え、週20時間以上働く人は自動的に加入要件を満たすようになったためです。

勤め先の規模の要件は残ります。2027年9月までは従業員数51人以上の企業が対象で、36人以上は2027年10月、21人以上は2029年10月、11人以上は2032年10月、10人以下は2035年10月からと段階的に広がります。

5.2 時給1100円・週20時間なら標準報酬月額は9万8000円

厚生年金に加入すると、給与を区分に当てはめた標準報酬月額をもとに保険料と年金額が決まります。標準報酬月額は1等級の8万8000円から32等級の65万円までの32等級です。

時給1100円で週20時間働くと、月の賃金はおよそ9万5000円です。日本年金機構の令和8年度の保険料額表では、報酬月額9万3000円以上10万1000円未満は2等級の9万8000円で、厚生年金保険料の本人負担は月8967円です。

これとは別に、勤め先の健康保険の保険料もかかります。

5.3 10年加入すると自分の老齢厚生年金は年6万4457円、65歳からの遺族厚生年金は年42万8833円

モデルケースの妻が55歳から65歳まで、この働き方で10年(120月)厚生年金に加入したとします。妻自身の厚生年金の加入はこの10年だけとし、金額はLIMO編集部の試算です。

妻の老齢厚生年金(報酬比例部分)は、9万8000円×5.481/1000×120月で年6万4457円です。

65歳からの遺族厚生年金の額は、報酬比例部分の4分の3にあたる49万3290円と、「65万7720円の2分の1+6万4457円の2分の1」にあたる約36万1088円を比べて、高い方の49万3290円です。

自分の老齢厚生年金6万4457円が全額支給され、遺族厚生年金は49万3290円から6万4457円を差し引いた年42万8833円になります。

妻が10年間厚生年金に加入したときの、65歳からの遺族厚生年金と自分の老齢厚生年金2/2

妻が厚生年金に加入しなかった場合は遺族厚生年金が年49万3290円、時給1100円・週20時間で10年加入した場合は自分の老齢厚生年金6万4457円と遺族厚生年金42万8833円で、合計はどちらも年49万3290円になることを示した図

出所:厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方 第13 遺族年金」を参考にLIMO編集部作成

遺族厚生年金は減りますが、自分の老齢厚生年金とあわせた額は、厚生年金に加入しなかった場合と同じ年49万3290円です。このケースでは、厚生年金に加入した分は65歳以降の遺族厚生年金に置き換わる形になります。

自分の老齢厚生年金が遺族厚生年金の額を上回るほど大きくなれば、自分の老齢厚生年金を受け取り、遺族厚生年金の支払いはなくなります。なお、この計算とは別に、自分の老齢基礎年金も65歳から支給されます。

5.4 健康保険の被扶養者だった人は、勤め先の健康保険の被保険者に切り替わる

子などの健康保険の被扶養者になるには、年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)であることなどが要件です。日本年金機構は、この年間収入に遺族年金などの非課税の収入も含むとしています。

モデルケースで子のない妻の遺族年金は年112万8790円なので、ほかに収入がなければ130万円未満です。

ただし日本年金機構は、年収が130万円未満であっても、要件を満たした場合は厚生年金保険・健康保険の被保険者になると説明しています。被扶養者のまま働いていた人が勤め先で加入すると、自分で保険料を負担する形に変わります。

6. まとめ

平均標準報酬額40万円・加入180月の夫が在職中に亡くなったモデルケースでは、300月とみなす計算により遺族厚生年金は年49万3290円でした。子のない40歳以上の妻は、中高齢寡婦加算とあわせて年112万8790円を65歳になるまで受け取ります。

65歳になるまでの遺族厚生年金は、2026年10月以降に働いて厚生年金に加入しても在職を理由には止まりません。一方で、自分の老齢厚生年金が増えると、65歳からの遺族厚生年金はその分だけ差し引かれます。

勤め先で加入するかどうかは、保険料の負担と65歳以降の受け取り方の両方に関わります。働き方を決める前に、年金事務所で遺族厚生年金と自分の年金の見込額をあわせて確かめておくと安心です。

参考資料

村岸 理美