4. つみたて投資枠における「ETF」の現在地
税制改正要望の2つ目の柱である「つみたて投資枠における要件の整備」についても見ていきましょう。これは主に、ETF(上場投資信託)をつみたて投資枠で扱えるようにするための要件整備を指しています。
ETFは、一般的な投資信託と似ていますが、株式と同じように証券取引所に上場しており、市場が開いている時間帯ならリアルタイムで価格を見ながら売買できるという特徴があります。
しかし現状では、つみたて投資枠で買えるETFは極めて限定的です。金融庁のデータ(2026年8月31日時点)によると、つみたて投資枠の対象商品367本のうち、ETFはわずか9本しかありません。
なぜこれほど少ないのでしょうか。それは、つみたて投資枠の対象となるETFの要件が非常に厳しいためです。国内の取引所に上場しているETFは「円滑な流通のための措置が講じられているとして取引所が指定するもの」、海外の取引所に上場しているETFは「資産残高1兆円以上」といった厳しい条件が課せられています。
つみたて投資枠の対象商品の内訳3/3
出所:金融庁「つみたて投資枠対象商品届出一覧(対象資産別)」(2026年8月31日時点)を基にイズミダイズム作成
仮に要件が整えられ、つみたて投資枠で買えるETFが増えた場合、投資家は一般的な投資信託とETFのどちらを選ぶべきでしょうか。
ETFは信託報酬(運用管理費用)が低い傾向にあり、特定の国やセクター(業種)に絞った多彩な商品が存在するという魅力があります。一方で、市場で売買するため「流動性」が重要になります。買いたい人や売りたい人が少ない銘柄だと、自分が希望する価格で取引が成立しないリスクがあります。
泉田氏は、ETFには投資の幅を広げる面白さがあるとしつつも、一般的な投資家に向けては次のような見解を示します。
「単純に長期的な資産形成で、投資信託をベースにやるだけでも全然いいですよという人であれば、値段を見て売ったり買ったりしなくていいので、そういう方は全然投資信託でいいと思います」
長期的な資産形成を目的とするのであれば、無理にETFに手を出さず、金額を指定して買い付けられる一般的な投資信託で十分だというのが泉田氏の見方です。
5. 今後の投資戦略にどう活かすか
今回の税制改正要望の議論を踏まえ、私たちはどのように投資戦略を考えればよいのでしょうか。
まず確認すべきは、自分がこの「1,800万円の壁」に直面する対象になるかどうかです。前述の通り、現在年間300万円超〜360万円以下のペースで投資をしている約164万口座の保有者は、数年後にこの問題に突き当たる可能性が高くなります。該当する場合は、利用している証券会社の画面で「自分の保有商品の簿価がいくらなのか」を確認できるか、今のうちから把握しておくことが重要です。
一方で、それ以外のペースで投資をしている多くの人にとっては、当面は枠の上限を気にする必要はないかもしれません。
また、仮に枠が当年中に復活するようになったとしても、「枠が空いたから何かを売却して入れ替えよう」と安易に動くことには注意が必要です。泉田氏は、投資商品を売却する際の根本的なルールについて、次のように語ります。
「何かを売却する時は、次にそれ以上に魅力的なものがあるという前提で売却するべきだと僕はいつも思っていて」
商品を売却して現金(キャッシュ)にした時点で、その資金の運用は一旦ストップしてしまいます。次に投資したい魅力的な商品が見つかっていない状態で、単に利益が出たから、あるいは枠を空けたいからという理由だけで売却してしまうと、複利(運用で得た利益を再び投資に回して雪だるま式に増やしていく仕組み)の恩恵を手放すことになりかねません。
NISA制度は、あくまで長期的な資産形成を支援するための器です。制度の変更点や議論の行方を注視しつつも、振り回されることなく、自分自身の投資目的とルールに沿って淡々と資産形成を続けていくことが求められます。
参考資料
- 金融庁「NISA口座の利用状況調査(2025年12月末時点)」(2026年7月3日)
- 金融庁「令和9(2027)年度 税制改正要望について」(2026年8月)
- 財務省「令和9年度税制改正要望事項一覧」【金融庁】
- 金融庁「つみたて投資枠対象商品届出一覧(対象資産別)」(2026年8月31日時点)
- 金融庁「NISA特設ウェブサイト」(非課税保有限度額の簿価残高方式と枠の再利用)
- iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)(スイッチングの仕組み)
- YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
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