4. 役職で決まる給与と最低賃金で決まる下限は決まり方が違う

同じ「賃金」の話でも、役職別の給与と地域別最低賃金は決まる仕組みがまったく別です。

4.1 地域別最低賃金は都道府県ごとに毎年決められる

地域別最低賃金は都道府県ごとに定められ、毎年見直されます。中央最低賃金審議会が引上げ額の目安を示し、各都道府県の審議を経て都道府県労働局長が決定する流れです。

令和8年度はランクAが54円、ランクBとランクCが56円の目安で、全国加重平均の目安額は1176円でした。実際に答申された全国加重平均は1177円です。

4.2 役職別の給与は勤務先の賃金制度で決まる

一方、課長級や部長級の給与は法律で下限が定められているものではなく、勤務先の賃金制度によって決まります。

賃金構造基本統計調査が示しているのは、その結果として支払われた額を集計した実態です。最低賃金の改定がそのまま役職別の給与を動かすという関係にはありません。

5. 課長級はどの年齢階級に何人いるか

同じ表には労働者数も載っているため、課長級がどの年齢帯に集まっているかを確かめられます。

5.1 50歳代前半の47万6390人が最も多い

課長級の労働者数は、40〜44歳が29万6550人、45〜49歳が41万5600人、50〜54歳が47万6390人、55〜59歳が34万2840人でした。

最も多いのは50〜54歳で、40歳代後半から50歳代後半までの3つの年齢階級に123万4830人が集まっています。

60〜64歳は6万6830人まで減ります。課長級として集計される方の多くが、60歳より前の年齢帯にいることになります。

5.2 課長級の人数は部長級の約1.9倍

企業規模計で見た課長級の労働者数は合計179万6950人、部長級は合計93万1330人でした。

課長級は部長級の約1.9倍の人数がいる計算になります。課長級で横ばいに入る額が長く続くのは、この人数の分布とあわせて見ておきたいところです。

6. 昇進を打診されたときに確かめておきたいこと

課長級への昇進で給与がどう変わるかは、所定内給与額だけを見ていると読み違えることがあります。

6.1 残業代として支払われる分は減ることがある

係長級の超過実労働時間数は月15時間で、課長級は月4時間でした。所定内給与額とは別に支払われる超過労働給与額は、係長級が月4万6200円、課長級が月1万4900円です。

所定内給与額は係長級の月39万9200円から課長級の月52万9200円へ増えますが、超過労働給与額は減っています。両方を含むきまって支給する現金給与額では、月44万5400円から月54万4100円への増加になります。

6.2 年間賞与の実績額を聞いておく

年間賞与その他特別給与額は、係長級が151万2100円、課長級が219万1900円でした。

所定内給与額の12か月分にこれを足した年収の目安は、係長級が630万2500円、課長級が854万2300円です。ただし所定内給与額は令和7年6月分、年間賞与その他特別給与額は令和6年1月から12月までの1年間の額なので、対象期間が違う概算として見ておきます。

6.3 次の役職までの期間を確かめてみる

課長級の所定内給与額は40歳代前半で横ばいに入るため、そこから先の増え方は部長級に上がるかどうかで変わってきます。

打診を受けた段階で、部長級への昇進の基準や、そこまでにかかる期間の目安を聞いておくと判断しやすくなります。

7. 【求人データ分析】市場データで見る「管理職のリアル」と昇給の壁

公的統計だけでなく、実際の転職・求人市場におけるデータからも管理職の待遇構造が浮き彫りになっています。

求人ビッグデータ分析を提供する株式会社フロッグの「2026年8月度 営業職・レイヤー別管理職の給与調査レポート」によると、求人比率や昇給率において、若手が抱く「割に合わない」という意識を裏付けるような実態が示されています。

7.1 営業系求人における管理職求人は全体の約11.5%

同レポートによると、営業系求人に占める管理職(リーダー以上)の割合は全体の約11.5%にとどまっており、求人市場のニーズは現場実務を担うメンバークラスに偏っています。

特に「部長以上」などの上位役職求人は全体の約1.7%と極めて少なく、企業による厳選採用が行われていると考えられます。

7.2 リーダーから課長への昇給率は+15.7%と伸びが緩やか

営業系求人における役職ごとの給料下限(平均額)を比較すると、メンバーからリーダーへの昇進時には約6.5万円アップ(+22.3%)、課長から部長以上への昇進時には約10.2万円アップ(+25.0%)と大きく上昇します。

一方で、リーダーから課長への昇進時の上昇額は約5.6万円アップ(+15.7%)にとどまります。課長クラスはチームマネジメントや組織責任が大きく増すポジションであるにもかかわらず、リーダーからの昇給率が比較的抑えられている実態があります。

7.3 「年収700万円」に届く求人は部長クラスで過半数、課長では少数派

なお、同レポート内で参照(二次引用)されているマイナビ転職の調査によると、管理職になって「良かった」と感じている層の年収中央値は700万円であるのに対し、そうでない層の年収中央値は550万円と明確な差が見られました。

この「年収700万円相当(月給50万円以上)」を基準としてフロッグ社が求人分布を分析したところ、月給50万円以上の求人割合はリーダークラスで9.6%、課長クラスで24.9%と少数派にとどまり、部長以上になって初めて52.9%と過半数を占めるようになります。

つまり、課長クラスでは業務負荷や責任が増す一方で年収700万円相当に届く求人が限られていることが、「管理職は割に合わない」と感じられる構造的な要因の一つになっていると言えます。

7.4 職種による昇給パターンの違い(ITエンジニアとの比較)

さらに同調査では、職種によって管理職の昇給カーブが大きく異なる点も指摘されています。

たとえばITエンジニア職では、リーダーや課長など中間管理職への昇進時の昇給率は約+8%前後と低い水準に抑えられている一方、課長から部長以上へ昇進すると+56.4%と急激に上昇する構造になっています。

中間管理職での手当が抑えられがちな職種ほど、管理職よりもスペシャリスト志向が強まりやすい背景がうかがえます。

8. まとめ

令和7年賃金構造基本統計調査で見た課長級の所定内給与額は、40〜44歳の月53万9900円から55〜59歳の月54万500円までほぼ横ばいでした。

部長級はこの年齢帯でも増え続けるため、部長級と課長級の差は40〜44歳の月7万2400円から45〜49歳の月12万5900円へ広がります。

一方、地域別最低賃金の全国加重平均額は令和8年度に1177円へ改定され、令和8年10月1日から12月2日までの間に順次発効する予定です。5年度分の引上げ額の合計は247円ですが、役職別の給与とは決まる仕組みが別なので、改定がそのまま課長級の給与を動かすものではありません。

参考資料