2019年4月1日から、年5日の「有給休暇の取得義務化」が始まりました。なんとなく聞いたことはあるけど、詳しいことを知らないという方も多いのではないでしょうか?
今回は、「有給休暇の取得義務化」について、最低限押さえておきたいポイントを紹介します。
日本は、有給取得率が3年連続最下位
エクスペディア・ジャパンが実施した、「世界19ヶ国 有給休暇・国際比較調査2018」によると、日本の有給休暇取得率は50%で、3年連続で最下位という結果でした。「有給休暇を取得することに罪悪感がある」と回答した日本人は59%にのぼり、これは世界で最も高い割合です。
また、この調査によると「日本人が有給休暇を取得しない理由」は以下の通りです。
1位:人手不足
2位:緊急時のために取っておく
3位:仕事をする気がないと思われたくない
1位の「人手不足」は、自分にしかできない仕事が多く、仕事を頼める人がいないという日本企業の課題が浮き彫りになっています。また、3位の「仕事をする気がないと思われたくない」というのは、上司や同僚の目を過度に気にする日本人の特徴が表れているといえるでしょう。
そこで、有給の取得率を向上させるため、2019年4月1日から「有給休暇の取得義務化」が始まりました。
「有給休暇の取得義務化」の基礎知識
「有給休暇の取得義務化」が始まり、社員に有給を取得させることが会社の義務になりました。
ポイントは、以下です。
・対象となる事業所:すべて
(「社長1人と従業員1人」といった小規模会社や、個人事業主も対象)
・対象者:年次有給休暇を10日付与される人
・対象となる日数:5日間
(有給が付与されてから1年以内に5日間取得)
・取得の方法:会社が取得日を指定
(会社が取得時季を指定 ※労働者の声を聞き、希望する時季に有給を取得させる努力義務あり)
有給を使ってもらえる給与の基礎知識
有給の給与は、以下の3パターンから選択するように労働基準法で定められています。
【1】所定労働時間働いたものとして支払われる通常の額
【2】平均賃金
【3】標準報酬日額(労使協定で定めた場合のみ)
「所定労働時間」とは1日の労働時間のことです。「平均賃金」は、直近3か月間の給与総額を、期間中の総日数(暦日数)で割った金額のことです。また、「標準報酬日額」は、社会保険料の計算に用いられる標準報酬月額を、30で割った金額を指します。
ちなみに「月給25万円/月の平均勤務日数が20日/1日の所定労働時間が8時間」というケースで【1】と【2】のパターンを計算すると、【2】の平均賃金は1日当たり約3割も取得金額が低くなります。計算方法によって、有給の取得金額が異なることは覚えておきましょう。
参考までに、計算式は以下です。
【1】所定労働時間のケース:12,500円/1日
・時給に換算・・・「25万円÷20日×8時間=1,562.5円」
・1日分の有給の給与・・・「1,562.5円×8時間=12,500円」
【2】平均賃金のケース:8,334円/1日
・「残業ゼロ/1~3月の平均を出す」と仮定
・平均賃金・・・「(25万円+25万円+25万円)÷(31日+28日+31日)=8,334円」
まとめ
有給取得は労働者の「権利」でしたが、いまは「義務」になっています。つまり、有給を取得しないと、労働者も罰せられる可能性があるということです。
この制度が始まったことを機に、自分の仕事を見直し、ほかの人に仕事が任せられないか考えましょう。また、「義務」ということを盾に、周囲を気にせずに有給を取得できると良いですね。
【参考】
「世界19ヶ国 有給休暇・国際比較調査2018」(エクスペディア・ジャパン)
「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」(厚生労働省)
「しっかりマスター 労働基準法 有給休暇編」(東京労働局)
LIMO編集部