5. 2027年3月期1Qの進捗は、会社計画の置き方を映している
会社が示した2027年3月期の計画は、強気とは言いにくい内容だった。
売上高2兆500億円で前期比▲11.4%、営業利益3,700億円で+2.7%、経常利益4,300億円で▲20.7%、純利益3,100億円で▲26.9%。年間配当も162円を予定しており、前期の219円から下がる。増収増益の翌期に、減収減益の計画を置いた形である。
ところが1Qの実績は、この計画に対して先行している。売上高5,178億円、営業利益1,425億円、経常利益2,061億円、純利益1,474億円。通期計画に対する進捗は、売上高で25%台と単純な4分の1ペースだが、営業利益では38%台、純利益に至っては47%台に達する。
四半期ごとの季節性があるため、この進捗をそのまま年間に伸ばすことはできない。とはいえ、利益側だけが大きく先行しているのは事実だ。会社計画が保守的に置かれている可能性は高い。
ここで思い出したいのが、前期の利益構造である。経常利益を押し上げたのは営業外の収益だった。1Qでも営業利益1,425億円に対して経常利益2,061億円と、600億円あまりの上乗せがある。営業外の厚みは1Qでも続いていることになる。
会社が経常利益の減少を見込む一方で、1Qの実績は逆を示している。為替や金利の前提をどう置いたかで、この乖離の大きさは変わってくるだろう。次の上期決算で、会社が計画を据え置くのか動かすのかは、注目したい点だ。
6. 1兆円を超える手元資金と、揺れ幅の大きい還元
資本の使い方にも触れておきたい。
2026年3月期末の現金及び預金は1兆3,166億円。総資産3兆8,053億円の3分の1を超える。営業キャッシュフローは2,897億円、投資キャッシュフローは▲2,100億円、財務キャッシュフローは▲2,497億円だった。稼いだ資金をおおむね投資と株主還元に振り向けた1年である。
還元の振れは大きい。1株当たり配当は2025年3月期の120円から2026年3月期は219円へ増え、配当性向は60.1%となった。自己株式は前期末の2,710億円から3,418億円へ増えており、自社株買いも実施している。そして2027年3月期の計画は162円である。
この揺れ方には理由がある。利益に連動する配当方針を採れば、利益が振れる会社の配当は必然的に振れる。連続増配を積み上げるタイプの銘柄とは、還元の性格がまるで違う。
研究開発費や設備投資の水準も見ておきたい。設備投資は492億円で、売上高2兆3,130億円に対して2%程度にとどまる。工場を抱えて自前で作る会社ではないため、投下資本は軽い。軽い資本で高い利益率を出せる一方、稼いだ現金の使い道が限られるという裏返しの論点も生まれる。
ROEが14.9%まで戻ったとはいえ、2022年3月期の24.2%には届かない。分子の利益が落ちたことに加え、分母の自己資本が積み上がり続けていることも効いている。
7. 筆者コメント
5期分の数字を並べ直すと、この会社の稼ぎ方には2つの層があることが分かる。
1つは製品を作って売る層で、ここは製品サイクルに沿って大きく波打つ。もう1つは、積み上げた資産から生まれる層で、こちらは波が緩やかだ。前者だけを見ていると業績の振れが恐ろしく見えるが、後者を重ねると印象は変わる。
そして市場は、この2つを別々に評価しているようには見えない。1年のあいだに株価が半値近くまで沈み、2か月あまりで3割近く戻ったのは、製品サイクルへの見方だけで値が動いていたからではないか。資産から生まれる層は、そのあいだほとんど変わっていない。
決算資料を開いたら、営業利益の下にある行まで目を通すことをおすすめしたい。営業外収益と特別損益に何が並んでいるかで、その会社の利益の性格は驚くほど違って見える。任天堂はその差が特に大きい銘柄の1つだ。
参考資料
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石津 大希