人手不足と高齢化が同時に進むいま、企業が従業員に期待する「働いてほしい年齢」は、じわじわと上がり続けています。帝国データバンクが2026年9月に公表した調査では、企業が従業員に活躍してほしいと考える年齢の平均は67.9歳、実際に在籍する従業員の最高齢は91歳という結果が出ました。

一方で、働く側のシニアにとって悩ましいのが、年金や社会保険料に関わる「年収の壁」です。2026年は、この壁の形が大きく変わる節目の年でもあります。企業の本音とあわせて、シニアが知っておきたい制度の変化を整理します。

村岸 理美
筆者自身もFPとして日々のご相談をお受けするなかで、60代以降の働き方について悩まれる方の多さを肌で感じています。多くの方が「健康なうちは社会とつながり、誰かの役に立ちたい」という前向きな思いを抱いておられます。

1. 企業が期待する「活躍年齢」は平均67.9歳、小規模企業ほど長く働いてほしい

帝国データバンクが全国1,289社を対象に実施したアンケートによると、自社の従業員に何歳ごろまで活躍してほしいかを尋ねたところ、全体の平均は67.9歳でした。中央値は70歳とさらに高くなっています。

規模別・業種別に見ると、次のような結果になりました。

  • 大企業:66.8歳
  • 中小企業:68.1歳
  • 小規模企業:68.3歳
  • 業種別の最高:農・林・水産 70.1歳(唯一70歳超)
  • 業種別で続く業種:運輸・倉庫 68.6歳、サービス 68.5歳
  • 業種別の最低:建設 67.4歳

企業規模が小さくなるほど期待する年齢が高くなる傾向があり、人材の採用が難しい小規模企業ほど、経験を積んだベテラン従業員に長く現場を支えてほしいという事情がうかがえます。逆に建設業が最も低かった背景には、夏場の高温下での作業や、大手ゼネコンでの高年齢者の現場入場制限など、体力面・安全面の制約があるとみられます。

さらに、現在在籍する従業員の最高齢を尋ねた設問では、次のような結果になりました。

  • 最高齢の平均:68.3歳
  • 個別企業でみた最高齢:91歳
  • 年齢分布の最多:65〜69歳(26.0%)
  • 年齢分布で続く層:70〜74歳(24.9%)

70歳を超えて働く人も珍しくない状況が浮かび上がります。企業からは「正社員は65歳からパート社員として契約でき、70歳まで働ける社内規則を整えている」といった声がある一方、「定年という制度は元からなく、本人の申告で退職となる」「年齢で区切らず、本人と話し合って働き方を決めている」など、定年そのものを設けていない企業の声も目立ちました。

2. 数字で見る「働くシニア」の広がりと家計の状況

総務省の労働力調査を見ても、シニアの就労は着実に拡大しています。

65歳以上の就業者数及び就業率の推移2/6

65歳以上の就業者数及び就業率の推移

出所:内閣府「令和8年版高齢社会白書(全体版)」

65歳以上の就業者数は令和7年(2025年)まで22年連続で前年を上回りました。就業率の推移は以下の通りです。

  • 65〜69歳の就業率:平成28年(2016年)42.8% → 令和7年(2025年)54.5%
  • 70〜74歳の就業率:平成28年(2016年)25.0% → 令和7年(2025年)36.2%
  • 75歳以上の就業率:平成28年(2016年)8.7% → 令和7年(2025年)12.6%

この10年弱で、シニアの就労はかなり一般的なものになったことが分かります。

ただし、働き方の中身を見ると課題も残ります。役員を除く雇用者のうち非正規の職員・従業員の比率は、次のように60歳を境に大きく変化します。

雇用形態別雇用者及び非正規雇用者率(役員を除く。)3/6

雇用形態別雇用者及び非正規雇用者率(役員を除く。)

出所:内閣府「令和8年版高齢社会白書(全体版)」

  • 男性 55〜59歳:10.5%
  • 男性 60〜64歳:39.8%
  • 男性 65〜69歳:64.9%
  • 女性 55〜59歳:57.3%
  • 女性 60〜64歳:71.7%
  • 女性 65〜69歳:83.7%

60歳を境に非正規雇用を選ぶ方が男女ともに増える傾向があります。とくに女性は非正規雇用の比率が高めですが、これは育児やご家族の介護など、ライフステージの変化に合わせて柔軟な働き方を選択してきた背景も影響しているでしょう。

2.1 高齢者世帯の平均所得「約300万円」

こうした働き方の変化は、家計にも表れています。厚生労働省の調査による所得の状況は以下の通りです。

高齢者世帯の所得階層別分布4/6

高齢者世帯の所得階層別分布

出所:内閣府「令和8年版高齢社会白書(全体版)」

  • 高齢者世帯の平均所得金額:314.8万円(その他世帯は671.0万円)
  • 高齢者世帯の平均等価可処分所得:226.0万円(その他世帯は336.1万円)

高齢者世帯とは、65歳以上のみ、または18歳未満の未婚者を含む世帯を指します。年金にプラスして就労収入を組み合わせることで、よりゆとりある生活を目指す方が多いことが見えてきます。