5. ラインの内側に入ると、何が変わるのか

住民税非課税世帯に該当すると、給付金の対象になるだけでなく、毎月の負担が軽くなる制度がいくつも使えます。

先に紹介した記事では、代表的な5つの制度が次のように整理されています。

◆国民健康保険料(応益割)の減額

  • 応益分保険料(均等割・平等割)の「7割・5割・2割」のいずれかを減額

◆介護保険料の減額

  • 第1号被保険者(65歳以上)が対象。減額される金額は自治体ごとに異なる

◆国民年金保険料の免除・納付猶予

  • 全額免除・一部免除・納付猶予のいずれか

◆保育料の無償化

  • 0歳から2歳までの保育料が無償化

◆高等教育の修学支援新制度

  • 授業料・入学金の免除または減額
  • 返還を要しない給付型奨学金

出所:【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度!制度の基本とファクトを網羅した完全ガイド

給付金のような一時的な支援だけでなく、社会保険料や教育費のように毎年続く負担が下がる点が大きな違いです。

年金に上乗せして受け取れる年金生活者支援給付金も、世帯全員が市町村民税非課税であることが支給要件のひとつになっています。制度の中身についてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
年金生活者支援給付金とは?2026年最新の対象者・いくらもらえるか・ハガキが届かない理由を徹底解説 【元厚労省担当記者監修】支給要件の3条件、給付基準額の計算、申請方法から支給日(振込スケジュール)まで、手続きの落とし穴を完全網羅

6. 非課税の判定で間違えやすい2つのこと

ラインの数字を知っていても、判定に何が使われるのかを取り違えると結論がずれます。よくある2つを挙げておきます。

6.1 所得控除を増やしても、非課税の判定には効かない

判定に使うのは合計所得金額であって、手元に残る金額ではありません。医療費控除や社会保険料控除のような所得控除は、課税される所得金額を下げる働きはありますが、合計所得金額そのものは下がりません。

つまり「控除を増やせば非課税になる」という組み立ては成り立ちません。

6.2 特定口座の利益を確定申告すると、判定に影響することがある

特定口座で保有している株式や投資信託を売って利益が出た年は、確定申告をするとその所得が合計所得金額に加わり、非課税の判定に影響することがあります。

申告不要制度を選べる場合もありますので、売却を予定している年は事前に税務署や市区町村へ確認しておくと安心です。

7. 退職して収入が下がっても、非課税になるのは翌々年

ラインの数字がわかっても、いつからその判定が反映されるのかを知らないと家計の見通しを誤ります。

住民税は前年の所得で決まる仕組みだからです。

7.1 判定に使うのは前年1月から12月の所得

住民税は、その年の1月1日から12月31日までの所得をもとに計算され、翌年6月から課税が始まります。1月1日時点で住所がある市区町村が課税する点も、前年ベースの仕組みとつながっています。

したがって、今の収入が年金だけになっていても、前年の所得が基準額を超えていれば今年度は課税されます。

7.2 年金からの天引きも前年の所得で決まる

冒頭で触れた年金からの天引き(特別徴収)も、前年の所得にもとづく住民税額を年金から差し引く仕組みです。

その年度に新しく特別徴収の対象になった人は、対象税額の半分を自分で2回に分けて納め、残りを10月・12月・翌年2月の年金支払時に差し引かれます。前年度から続いている人は、4月・6月・8月の仮徴収で前年度の税額をもとにした額を差し引き、10月・12月・翌年2月の本徴収でその年度に確定した税額との差を調整します。

10月支給分で天引き額が変わるのは、この本徴収への切り替わりによるものです。定年退職の翌年度など、前年の所得が高かった年は天引き額も大きくなります。

8. まとめ

65歳以上で年金収入だけの場合、住民税非課税のラインは単身で155万円以下、扶養する人が1人いれば211万円以下です。扶養する人が2人なら246万円以下、3人なら281万円以下と、人数に応じて上がっていきます。

2026年度の改正で動いたのは給与のラインだけで、給与収入だけの単身者の基準は100万円以下から110万円以下になりました。公的年金等控除には改正がなく、年金の155万円は変わっていません。

また、非課税限度額は均等割と所得割で別に定められています。所得割だけが非課税の世帯は住民税非課税世帯には当たらないため、給付金などの案内を読むときは均等割まで含めてゼロかどうかを確かめてください。

基準額は自治体の条例で決まります。ご自身の結論を確実に知りたいときは、お住まいの市区町村が発行する課税証明書や非課税証明書で確認するのが確実です。判断に迷うときは、市区町村の窓口やファイナンシャルアドバイザーに相談してみてください。

橋本 優理

非課税のラインを意識して年金の受け取り方を考えたい、という声もあります。繰下げ受給で年金額が増えると、線を越えて課税世帯になる可能性が出てきます。増えた年金額と、保険料軽減や給付金がなくなる分を並べて比べておくと判断しやすくなります。

もう1つ、退職直後の1年から2年は、収入が下がっているのに前年の所得で計算された住民税と国民健康保険料の納付が続きます。この時期に手元の現金が薄くなることは少なくありません。退職金を使う予定を立てるときは、この2年分の支払いを先に取り分けておくと安心です。

参考資料

橋本 優理