2. 年金収入だけで暮らす世帯は41.3%。残る約6割は別の収入もある
ここまでは受け取る金額の分布を見てきました。ただ、高齢者世帯が公的年金だけで家計を回しているとは限りません。
厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金・恩給が総所得の100%を占める世帯は41.3%でした。
裏を返せば、残る58.7%の世帯は、公的年金・恩給以外の収入も得ながら暮らしていることになります。
公的年金・恩給が総所得に占める割合の内訳を見ると、「80~100%未満」が17.1%、「60~80%未満」が14.1%、「40~60%未満」が13.6%、「20~40%未満」が9.7%、「20%未満」が4.2%となっています。
年金以外の収入として挙がるのは、働いて得る収入のほか、企業年金や個人年金、資産運用による収入などです。
公的年金を柱にしながらも、複数の収入源を組み合わせて暮らしている世帯は、決して少数派ではありません。
つまり、老後の家計を見立てるときに、年金の平均額だけを眺めていても足りないということです。年金以外にどれだけ入るのか、毎月いくら出ていくのか。この3つを並べてはじめて、過不足が数字として見えてきます。
では、その確認はどこから手をつければよいのでしょうか。次に、準備を始める前に踏んでおきたい順番を整理します。
3. 準備を始める前に踏んでおきたい3つのステップ
分布を見て「公的年金だけで乗り切るのは難しそうだ」と感じた方も多いでしょう。とはいえ、何から手をつければよいか分からないまま、なんとなく貯蓄を続けているという声もよく聞きます。ここでは、順番に踏んでいきたい3つのステップを整理します。
3.1 ステップ1:「ねんきん定期便」で加入記録と見込額を確認する
最初に取り組みたいのが「ねんきん定期便」の確認です。これまでの加入記録に加えて、将来受け取れる年金の見込額が記載されています。50歳以上の方であれば、現在の加入条件が60歳まで続いた場合の見込額が示されます。
年金額は毎年度改定され、制度自体も社会情勢に合わせて見直されます。まずは現時点での数字を実際に目で確かめることが第一歩です。
3.2 ステップ2:見込額と目標額のギャップを定期的に見直す
ねんきん定期便は毎年届きます。年に1度など時期を決めて、見込額を確認する習慣をつけておきましょう。
そのうえで、老後に必要と考える金額との差を確かめます。いまの準備のペースで足りるのか、それとも積立額を増やす必要があるのか。この判断は、差額が数字になってはじめてできるようになります。
3.3 ステップ3:働き方や制度の変化に合わせて準備の方法を調整する
転職や独立、勤務時間の変更などで加入する年金制度が変われば、見込額も変わります。ライフイベントのたびに確認し直し、NISAやiDeCoといった制度の使い方も合わせて見直しておくと、想定とのずれが小さく済みます。
公的年金の実態を知らないまま準備を進めることが、いちばん避けたいところです。まずはご自身の見込額を知ることから始めましょう。
4. まとめにかえて
今回は、厚生年金の受給額分布と高齢者世帯の収入構成、そして老後資金づくりの3つのステップを確認してきました。
月額20万円以上を受け取っているのは18.8%で、5人に1人に届きません。逆に月20万円未満は81.2%、月10万円に届かない人も19.0%います。
また、公的年金・恩給が総所得の100%を占める世帯は41.3%でした。残る58.7%は、就労収入や企業年金、資産運用による収入などを組み合わせて暮らしています。年金額だけで老後の家計を見立てると、実態からずれてしまうということです。
厚生年金は報酬比例で決まる制度ですから、分布が広がるのは当然です。平均額をご自身の金額として当てはめないことが出発点になります。
老後資金の準備には順序があります。
まずは「ねんきん定期便」で将来受け取れる年金見込額を確かめましょう。
次に、現在毎月支出している生活費と見比べて「毎月いくら不足するのか」という差額を算出します。
最後に、その差額に平均寿命などを基に想定される退職後の年数を掛ければ、準備すべき総額が分かります。
総額の大きさに一瞬気後れするかもしれませんが、目標が明確になれば、退職までの残年数から「毎月いくら積み立てれば届くのか」を逆算することができます。
早く現在地を知るほど、複利の力を味方に付けて月々の積立負担を小さく抑えられます。
不足を埋める手段としては、NISAやiDeCoといった税制優遇制度の活用、家計の見直し、就労期間を延ばして厚生年金の加入期間を延ばすことなどが挙げられます。
まずはご自身の見込額を確かめるところから始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
中島 卓哉
