単身世帯における老後の生活費の目安として、「月20万円」という金額がしばしば挙げられます。厚生年金の受給権者のうち、この水準に届いているのは18.8%です。

本記事では、厚生年金の受給額がどう分布しているのかを確認し、高齢者世帯が年金以外の収入をどれだけ得ているのかを見たうえで、準備を始める前に踏んでおきたい3つのステップを整理します。

中島 卓哉

「老後資金はいくらあれば安心か」という問いに対し、万人に共通する単一の正解はありません。

住居形態や家族構成、理想とする生活水準によって必要な金額は大きく異なるからです。

しかし、同年代の貯蓄額や年金受給額の「全体的な分布」を知っておくことには大きな価値があります。

平均値や中央値といった客観的なデータを知ることで、将来ご自身が受け取れる見込額を試算した際に、それが標準的なのか、それとも不足しやすい位置にあるのかを冷静に判断できる「ものさし」が手に入るからです。

闇雲に不安を抱えるのではなく、まずは全体の統計データを俯瞰し、ご自身の現在地を測る基準を持っておきましょう。

1. 厚生年金「月20万円以上」は5人に1人に届かない

厚生年金の平均年金月額は15万円台です。この数字だけを見ると、それなりの水準に思えるかもしれません。しかし、平均の周りにどう人が分布しているかまで見ると、印象は変わります。

※この記事で紹介するのは、会社員など民間の事業所で雇用されていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の、国民年金の月額部分を含む年金額です。

厚生年金・国民年金の平均年金月額(2024年度末現在)1/2

厚生年金・国民年金の平均年金月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

1.1 厚生年金(男女全体)の受給額分布

  • 月額10万円未満:19.0%(おおよそ5人に1人)
  • 月額20万円以上:18.8%(おおよそ5人に1人)
  • 月額20万円未満:81.2%

受給権者の81.2%、8割を超える人がひと月20万円未満に収まっています。ゆとりある老後の目安として語られることの多い「月20万円」に届いているのは、5人に1人に満たない計算です。

さらに、下側の分布も無視できません。月額10万円に届かない人が19.0%いて、月額20万円以上の18.8%をわずかに上回っています。差そのものは0.2ポイントとごく小さいものの、高い側より低い側のほうが人数が多いという事実は押さえておきたいところです。

しかも、ここに含まれているのは厚生年金の受給権者だけです。国民年金のみを受け取っている人まで対象を広げれば、低い側の割合はさらに増えます。

厚生年金は現役時代の報酬と加入期間で決まる報酬比例のしくみですから、金額のばらつきが大きくなるのは制度上の必然です。だからこそ、平均額を自分の見込み額として当てはめるのではなく、ご自身の数字を確かめることが出発点になります。