5. 2026年8月期3Q累計が示す、構造の続き
直近の決算はどうなっているか。2026年8月期3Q累計は、売上収益3兆651億円、営業利益6,143億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益4,260億円だった。前期通期の営業利益5,642億円を、9か月の累計ですでに上回っている。
会社は通期で売上収益3兆9,700億円、営業利益7,300億円、当期利益5,000億円を見込む。前期比では売上収益が16.7%増、営業利益が29.4%増、当期利益が15.5%増という計画だ。3Q累計の営業利益は、この通期計画の8割を超える進捗にある。
利益はなぜ伸びたのか。会社によれば、2026年8月期上期は売上収益2兆552億円で前年同期比14.8%増、売上収益から売上原価と販管費を差し引いた事業利益が3,869億円で同28.3%増となり、上期として過去最高を記録した。
要因として挙げているのは、旗艦店の出店を軸としたブランディング戦略によってグローバルにユニクロへの支持が広がったこと、そして冬物商品だけでなく、トレンドのシルエットや素材にアップデートした通年商品の販売も好調だったことだ。その結果、ユニクロ事業はすべての地域で増収増益となったとしている。
収益性も改善している。上期の売上総利益率は前年同期比0.8ポイント改善して54.1%、売上高販管費率は同1.2ポイント改善して35.3%だった。値引きに頼らずに売れ、かつ費用の伸びが売上の伸びを下回った期だと読み取れる。
ここで効いてくるのが、先に見た重心の話だ。「すべての地域で増収増益」という説明は、売上の過半を海外が占める会社にとって、国内が好調だったという以上の意味を持つ。2026年8月期通期決算の発表を前に、地域ごとの内訳がどう積み上がるかは見ておきたい論点だろう。
6. ROE20.2%という水準を、小売業の中央値と並べてみる
構造の話を、資本の効率という別の物差しに置き換えてみよう。
2025年8月期のROE(自己資本利益率。株主が出した資本に対してどれだけ利益を上げたかを示す指標)は20.2%だった。小売業の中央値は7.5%前後であり、その3倍近い水準にある。営業利益率も16.6%で、中央値の3.7%前後とは水準が異なる。
5期を並べても崩れていない。2021年8月期のROEは16.4%、2022年8月期は20.4%、2023年8月期は17.5%、2024年8月期は19.4%、そして2025年8月期が20.2%。同じ期間に売上収益は2兆1,329億円から3兆4,005億円へ、営業利益は2,490億円から5,642億円へ増えた。規模を伸ばしながら効率を落としていない。
もっとも、自己資本比率は58.9%と、中央値の48.3%前後を上回る。財務の厚みは十分だが、負債をほとんど使わない資本構成が効率の観点で最適かどうかは、また別の論点だ。これだけの利益を出している以上、資本コストと投下資本の生産性をどう設計するかは、今後の資本配分を見るうえでの着眼点になるだろう。
7. 筆者コメント
興味深いのは、この会社が「海外で伸びている日本企業」として語られながら、収益性ではむしろ国内が支えているという並びだ。
成長の話と効率の話は、同じ会社の中でも別々の場所で起きている。規模を作るのは海外で、率を保つのは国内。どちらか一方だけを見ていると、もう片方の変調を見落とす。
グループの陣容を眺めても、この会社はユニクロ以外の器をいくつも抱えている。ただし、それらが連結の利益に効いているかというと、現時点ではそうとは言い切れない。多角化は、選択肢を持つことと稼ぐことを、同時には保証しない。
株価が高い水準から切り下がった局面でも、こうした構造そのものは動いていない。値動きの理由を探すより、稼ぎの重心がどこにあり、それがどちらへ動いているかを追うほうが、この会社については実りが多いのではないだろうか。
参考資料
8.1 免責事項
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石津 大希