3. 「年金生活者支援給付金」と緑の封筒

今回の意向確認書のように、年金受給者向けの書類で「手続き漏れに注意したい事項」の一つが、「年金生活者支援給付金」の請求です。

公的年金等の収入が一定基準以下の方に年金へ上乗せして支給される恒久的な支援制度ですが、物価上昇を反映し、2026年4月分(実際の振込は6月から)から3.2%の増額改定となっています。

2026年度:年金生活者支援給付金の月額4/4

2026年度:年金生活者支援給付金の月額

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成

  • 老齢年金生活者支援給付金(基準額): 月額5450円から月額5620円(+170円)に増額
    ※この金額は基準額であり、実際の支給額は保険料の納付済期間や免除期間等に応じて個別に算出されるため、全員が一律でこの金額になるわけではありません。
  • 障害年金生活者支援給付金(2級): 月額5620円(1級は月額7025円)
  • 遺族年金生活者支援給付金: 月額5620円
    ※子が2人以上で受給する場合は人数で按分されます。

3.1 さかのぼり支給は原則なし。手続きの「後回し」は損をする

この給付金は、「自分から請求手続きをしないと1円も受け取れない(申請主義)」です。

新たに支給対象となる可能性のある方には、日本年金機構から毎年9月上旬から順次、はがき形式の請求書が入った「緑色の封筒」が届きます。

この手続きを「後でやろう」と放置し、申請が遅れてしまった場合、請求した月の翌月分からしか支給されず、受け取れるはずだった過去の期間分は原則としてさかのぼって支給されません。

シニアの親御さんがいらっしゃる方は、ご実家にこの「緑の封筒」が眠ったままになっていないか、ぜひ一度確認してみることをお勧めします。

4. 世帯分離の3つのデメリットと、年金手続きのデジタル化

老齢年金生活者支援給付金や各種優遇措置の対象となる「住民税非課税世帯」になるために、同居したまま住民票上の世帯を分ける「世帯分離」を検討するケースもあるでしょう。

しかし、世帯分離には以下のようなデメリットが存在します 。

4.1 国民健康保険料が世帯全体でかえって増えるリスク

国保料には「平等割」や「均等割」という世帯ごとに定額でかかる区分があるため、世帯を分離して世帯数が増えることで、世帯全体で支払う保険料の総額が高くなってしまう場合があります。

4.2 高額療養費や介護費用の「世帯合算」が不可能に

同一世帯であれば、家族全体の医療費や介護費用を合算して負担限度額を超えた分を払い戻し(高額療養費や高額介護サービス費など)できますが、世帯を分離すると別々に計算されるため、合算できなくなる不利益が生じます。

※なお、同居していても、加入している医療保険制度が異なる場合(例:子が会社の健康保険、親が後期高齢者医療制度や国民健康保険)は、もともと世帯合算はできません。

4.3 勤務先からの「家族手当(扶養手当)」の打ち切り

会社員である子が親を世帯分離することで、会社の規定にある扶養手当や健康保険の扶養家族から除外され、世帯全体での手取り収入が減少するケースもあります。

4.4 マイナポータルで変わる「年金手続きデジタル化」の進展

一方で、年金にまつわる公的な手続き自体は、デジタル化によって劇的な進化を遂げました。

現在、日本年金機構の手続きは「マイナポータル」を介した電子申請への移行が急速に進んでいます。

自営業者等の国民年金保険料の免除申請や産前産後免除の届出だけでなく、スマートフォンから24時間いつでも自宅で申請可能となり、窓口に並ぶ時間や郵送の手間は大幅に解消されました。

さらに、シニア世代やそのサポートを行う子供世代にとって最も大きな負担であった「老齢年金の請求手続き(老齢年金請求書)」についても、一定の要件を満たしていれば、マイナポータルから直接電子申請できるようになっています。

住民票を分けるなどの「世帯の最適化」を検討する際も、マイナポータルに蓄積された過去の医療費履歴や、ねんきんネットの試算データを活用し、世帯全体での本当の負担総額を冷静にシミュレーションすることが何より大切だと言えるでしょう。

5. まとめにかえて

今回は、年金受給者へ送付される公金受取口座登録の意向確認書について確認してきました。

対象となるのは2026年4月15日時点で65歳以上の年金受給者ですが、すでに公金受取口座を登録している方や国外に居住している方など、5つの除外要件のいずれかに当てはまる場合は送付されません。

手続きで注意したいのは、登録を希望しない場合だけ返送が必要という点です。受け取ってから45日以内に不同意申出書の返送がなければ、同意したものとみなされて自動的に登録されます。不同意申出書は再発行できませんので、紛失した際は専用フリーダイヤルへ相談してください。

神田 翔平

書類が届いたら、まず内容を読んで同意するかどうかを決めてください。同意するなら手続きは不要です。同意しない場合だけ、期限内に返送が必要になります。ここを取り違えると意図しない結果になりますので、届いた日付をメモしておくと安心です。なお、この件について市区町村や年金事務所の窓口では対応していません。不審な電話や訪問があった場合も、必ず専用ダイヤルで確認してください。手続きを装った詐欺には十分ご注意ください。

年金は老後生活を考えていくうえで重要なお金です。しっかりと制度や概要は確認していきましょう。

世帯分離を検討する場合は、国民健康保険料が世帯全体で増える可能性、高額療養費や介護費用の世帯合算ができなくなること、勤務先の家族手当が打ち切られる可能性まで含めて、世帯全体の負担総額で比べることが大切です。

まずはお手元に届いた書類を確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。

参考資料