物価の値上がりは、年金だけで暮らす世帯の家計にもそのまま重くのしかかります。

所得の低い年金受給者を支える「年金生活者支援給付金」は、そうした暮らしを下支えする仕組みのひとつです。

実はこの給付金を受け取れる世帯には、給付金そのもの以外にも、医療費や介護費、社会保険料の負担を軽くする制度が数多く用意されています。

ただし、そのほとんどは自分で手続きをしなければ適用されません。

1. 「年金生活者支援給付金」とは 9月から届く"みどり色の封筒"

2026年9月1日から、日本年金機構は新たに対象となる可能性のある人へ、令和8年度分の「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」を順次発送しています。

届く封筒はみどり色をしており、これまで縁がなかった人ほど、何の書類か戸惑うきっかけになっているかもしれません。

年金生活者支援給付金は、受け取っている年金の種類に応じて「老齢」「障害」「遺族」の3種類に分かれています。

年金生活者支援給付金3種類の比較表1/5

年金生活者支援給付金3種類の比較表

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」をもとにLIMO編集部作成

このなかでも老齢年金生活者支援給付金は、65歳を迎えた人、あるいはこれから65歳を迎える人にとって身近な存在です。

「思っていたより年金の額が少ない」と感じた経験がある人も、少なくないのではないでしょうか。

1.1 老齢年金生活者支援給付金の支給要件

老齢年金生活者支援給付金の対象になるのは、次の要件をすべて満たす人です。

  • 65歳以上の老齢基礎年金の受給者であること
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税であること
  • 前年の公的年金等の収入とその他の所得の合計額が基準額以下であること(令和8年10月分から82万6500円以下、昭和31年4月1日以前生まれの人は82万4100円以下)

所得の基準額をわずかに超えた人には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が用意されています。

1.2 給付額は保険料の納付状況によって一人ひとり異なる

老齢年金生活者支援給付金の給付基準額は月額5620円ですが、これはあくまで基準です。

実際の給付額は、保険料を納めた期間と免除を受けた期間の長さに応じて、「保険料納付済期間分」と「保険料免除期間分」を合計して計算されます。

令和8年度の計算式では、納付済期間分は5620円×納付月数÷480、免除期間分は1万1768円×免除月数÷480で求められ、免除期間のほうが1カ月あたりの単価が高く設定されています。

保険料の納付状況別 老齢年金生活者支援給付金の受給額目安2/5

保険料の納付状況別 老齢年金生活者支援給付金の受給額目安

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」をもとにLIMO編集部作成

40年間欠かさず保険料を納めた人であれば、給付金は基準額どおり月5620円です。

一方で免除期間が長い人ほど、給付金額そのものは基準額を上回ることがある半面、老齢基礎年金の額は少なくなる、という組み合わせになります。

自分の給付額がどのくらいになるかは、ねんきん定期便やねんきんネットで加入記録を確認したうえで、年金事務所等に相談すると確実です。

給付金は、要件を満たしていても請求の手続きをしなければ支払われません。

届いたみどり色の封筒に必要事項を記入し、返送することではじめて支給が始まります。

支給要件と給付額を確認したところで、この給付金を受け取れる世帯があわせて確認しておきたい、医療・介護・保険料の優遇制度を見ていきます。

2. 【優遇措置1】国民健康保険料・介護保険料などの「保険料減免」

年金生活者支援給付金の支給要件である「世帯全員が市町村民税非課税」に該当する世帯は、毎月の社会保険料そのものも軽くなる仕組みが用意されています。

2.1 介護保険料は所得段階に応じて設定される

65歳以上の介護保険料は、住んでいる市区町村ごとに、所得に応じた段階で保険料額が設定されています。

住民税非課税世帯は、この段階のなかでも低い区分に位置づけられるため、基準額に比べて保険料が軽減される仕組みです。

2.2 国民健康保険料・後期高齢者医療保険料は「均等割」が軽減される

国民健康保険料や後期高齢者医療保険料には、世帯の所得に応じて加入者全員にかかる「均等割額」を7割・5割・2割のいずれかで軽減する制度があります。

軽減の判定に使う所得基準は、世帯の被保険者数等に応じて毎年度見直されており、市区町村の税情報をもとに自動的に計算されるのが一般的です。

ただし前年より所得が大きく下がった場合など、個別の減免申請が必要になるケースもあるため、心当たりがあれば一度、窓口で確認しておくとよいでしょう。

3. 【優遇措置2】医療費の窓口負担を抑える「高額療養費制度」

70歳以上の人が病院や薬局の窓口で支払う医療費には、1カ月あたりの自己負担上限額が所得区分ごとに定められています。

住民税非課税世帯にあたる「低所得者Ⅱ」「低所得者Ⅰ」は、一般所得者よりも上限額が低く設定されています。

高額療養費制度 70歳以上の自己負担限度額3/5

高額療養費制度 70歳以上の自己負担限度額

出所:をもとにLIMO編集部作成

低所得者Ⅱは外来1万1000円・外来と入院をあわせた世帯単位で2万5700円、低所得者Ⅰは外来8000円・世帯単位で1万5700円が、1カ月あたりの上限です。

入院や高額な治療を受ける際は、あらかじめ加入している医療保険者から「限度額適用認定証」の交付を受けて病院に提示しておくと、窓口での支払いを最初から上限額までに抑えられます。

4. 【優遇措置3】施設利用時の食費・居住費が軽くなる「負担限度額認定」

特別養護老人ホームや老人保健施設への入所、あるいはショートステイを利用する際には、介護サービスの費用とは別に「食費」と「居住費」がかかります。

住民税非課税世帯であれば、申請により「介護保険負担限度額認定」を受けられ、食費・居住費の自己負担が段階に応じて軽くなります。

介護保険負担限度額認定 食費・居住費の目安4/5

介護保険負担限度額認定 食費・居住費の目安

出所:をもとにLIMO編集部作成

多床室であれば、居住費は段階に応じて1日0円から530円程度、食費も0円から880円程度に抑えられます。

この認定は申請しなければ適用されず、さかのぼっての適用も原則できません。

施設やショートステイの利用を検討し始めた段階で、早めに市区町村の介護保険窓口で手続きを済ませておくことが大切です。