4. 申し込む前に知っておきたい注意点が3つある
公営霊園の樹木葬・合葬式墓地は、費用を大幅に抑えられる点や自治体管理という安心感がある反面、民間霊園にはない厳格なルールや注意点が存在します。
後悔のない選択をするために、以下の3つのポイントを必ず押さえておきましょう。
4.1 1. 遺骨の返還・改葬が原則不可能になる
「樹林型」や「直接合葬」の施設では、遺骨を他の多くの遺骨と一緒に直接土に埋蔵したり、大きなカロート(納骨室)に共同で納めたりします。一度合葬された後は、特定の遺骨だけを取り出すことが物理的・構造的に不可能になります。
「後から別のお墓を建てて引っ越したい(改葬)」「やっぱり家族と同じお墓に移したい」と思っても聞き入れられませんので、親族間で十分な合意形成を行っておくことが不可欠です。
4.2 2. 申込条件(居住要件・生前要件)が厳格である
民間霊園であれば住んでいる地域に関係なく購入できることがほとんどですが、大多数の公営霊園では「都内に3年以上」「市内に6か月以上」といった住民登録期間が厳しくチェックされます。
また、生前申込みに関しても「65歳以上」といった年齢条件がつくケースが多いため、事前に自治体の最新要綱をしっかり確認する必要があります。
4.3 3. 募集時期が自治体・施設ごとに大きく異なる
東京都のように年1回の定期公募抽選を行う自治体もあれば、大阪市や名古屋市のように先着順で随時受け付ける自治体もあります。
また、横浜市(メモリアルグリーン)のように年度によっては新規募集を行わない(令和8年度募集なし)場合や、神戸市(樹林葬墓地)のように年度前半の短い期間で募集が終了する場合もあるため、掲載時期や検討タイミングごとの最新募集状況を各自治体の公式情報で確認することが強く求められます。
5. 公営霊園の合葬式施設は、なぜ全国に広がっているのか
総務省行政評価局が令和5年9月に公表した「墓地行政に関する調査-公営墓地における無縁墳墓を中心として- 結果報告書」によると、公営墓地・納骨堂を所有する765市町村のうち、合葬式施設を有している自治体は25.5%(195市町村)にのぼります。
特に人口規模が大きい都市部ほど整備が進んでおり、後継者不足や無縁墳墓対策、住民の多様な供養ニーズに応える公的インフラとして定着しつつあります
(※同報告書は「合葬式施設」の整備状況に関する調査であり、「樹木葬」単独の調査ではない点にご留意ください)。
お墓探しを始める際、多くの方は「樹木葬 東京」「樹木葬 費用」といった一般的なキーワードでインターネット検索を行います。
しかし、民間霊園のプラン情報ばかりが表示され、「公営霊園にこのような施設があるとは知らなかった」というケースもあるでしょう。
まずは「〇〇市 合葬式墓地」「〇〇県 樹林型墓地」など、お住まいの自治体名と行政用語を組み合わせて検索してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
6. まとめにかえて|公営霊園の樹木葬は「安さ」だけで選ばない
費用を抑えられるという理由だけで安易に選ぶのは禁物ですが、「子供に墓継承の負担をかけたくない」「死後は自然豊かな樹木の下で安らかに眠りたい」「自治体がしっかり管理してくれる公有地なら安心できる」という価値観を持っている方にとって、公営霊園の樹木葬・合葬施設は非常に力強い選択肢となります。
まずはお住まいの自治体の公式サイトで、費用・居住要件・募集時期の3点を確認することから始めてみてください。
ご家族に万が一のことが起きた際、残されたご遺族は深い悲しみの中で、数多くの手続きや対応に追われることになります。精神的にも体力的にも余裕がない状況で、お墓の形式や費用について一から冷静な判断を下すのは容易なことではありません。
だからこそ、費用や供養の形態(樹木葬や合葬墓、一般墓)については、ご本人が元気なうちに家族で話し合い、自治体の制度や条件をじっくり比較して決めておくことを強くおすすめします。
参考資料
- 株式会社鎌倉新書「第17回 お墓の消費者全国実態調査」
- 総務省行政評価局「墓地行政に関する調査-公営墓地における無縁墳墓を中心として- 結果報告書」
- 東京都「令和8年度 都立霊園の使用者を募集」
- 東京都公園協会「合葬埋蔵施設のご案内」
- 横浜市「メモリアルグリーンのご案内」
- 横浜市「市営墓地・納骨堂の使用者募集」
- 大阪市「令和8年度 大阪市設瓜破霊園内合葬式墓地の使用者を募集します」
- 大阪市「市設霊園のご案内」
- 名古屋市みどりが丘公園「合葬式墓地の募集」
- 名古屋市「八事霊園・愛宕霊園について」
- 名古屋市公式FAQ「名古屋おしえてダイヤル」
- 神戸市「合葬式墓地(鵯越合葬墓)」
- 神戸市「新しいお墓のかたち」
- 神戸市「鵯越合葬墓 合葬施設・個別安置施設 使用者募集」
