「死後は自然豊かな樹木の下で眠りたい」「子どもに墓の管理で負担をかけたくない」。
そんな思いから注目を集める樹木葬ですが、東京都立霊園なら9万5000円から、大阪市なら5万円から選べる施設があることは意外と知られていないかもしれません。
都道府県や市区町村が運営する公営霊園にも、樹木葬に近い「樹林型合葬埋蔵施設」や「合葬式墓地」が整備されており、費用を大きく抑えることができる可能性があります。
ただし名称や埋蔵の仕組みは自治体ごとにバラバラで、居住要件や募集時期も大きく異なるため、申し込む前の確認が欠かせません。
本記事では、東京都・横浜市・大阪市・名古屋市・神戸市の主要5都市を取り上げ、費用相場と申込条件、そして見落としがちな注意点を整理します。
※ご注意点※
費用面や管理面で魅力の多い公営霊園ですが、必ずしも「いつでもすぐに申し込める」わけではありません。本記事で紹介する自治体の中にも、年1回の抽選方式であったり、特定の年度は新規募集を停止していたりするケースが含まれています。申し込み時期には制限があるという前提で、各自治体のスケジュールを早めに確認しておくことが大切です。
1. そもそも「樹木葬」を公営霊園で選べるとは、どういうことか
9月は秋彼岸に加え、15日から老人週間(21日は敬老の日)が続き、家族で親世代の「これから」を話しやすい時期です。「死後は自然豊かな樹木の下で眠りたい」「子供に墓継承の負担をかけたくない」というニーズの高まりとともに、樹木葬や永代供養墓の注目度は年々高まっています。
株式会社鎌倉新書が公表した「第17回 お墓の消費者全国実態調査(2026年3月時点)」によると、購入したお墓の種類のうち「樹木葬」が47.4%を占め、一般墓(152.0万円)や納骨堂(81.5万円)と並ぶ選択肢として高い人気を集めています(平均購入金額は71.7万円。※同調査は同社運営サイト「いいお墓」経由の購入者1267件を対象としたサンプル調査)。
しかし、「費用を抑えつつ、自然志向の永代供養を選びたい」と考える方にとって、民間霊園や寺院墓地だけが選択肢ではありません。実は、都道府県や市区町村が運営する「公営霊園」でも、樹木葬やそれに極めて近い形態の施設が提供されています。公営霊園の大きな特徴は、自治体が管理・運営を行っているため管理体制が非常に安定しており、使用料や管理料がリーズナブルに設定されている点です。
ここで注意したいのが、自治体サイトでの「検索キーワード」です。公営霊園では、民間霊園のように「〇〇樹木葬コース」といった親しみやすい名称ではなく、「樹林型合葬埋蔵施設」「合葬式墓地」「樹林葬墓地」といった行政用語・条例上の名称で呼ばれることが一般的です。そのため、自治体のホームページで「樹木葬」と検索しても希望の情報がヒットしないことがあります。
2. 5都市の公営霊園、樹木葬に近い施設はいくらかかる?
各都市の霊園募集要項やパンフレットを見比べていくと、同じ「公営の合葬墓」「自然志向のお墓」という括りであっても、必要な費用や申込要件、納骨の形態が自治体ごとに大きく異なっていることが分かります。
主要5都市(東京都立・横浜市営・大阪市設・名古屋市営・神戸市立)の具体的な実例を見ていきましょう。
2.1 東京都立霊園(多磨霊園・雑司ケ谷霊園)
都庁の案内コーナーで「都立霊園使用者の募集 申込みのしおり」を受け取りページをめくると、大きなシンボルツリーの写真とともに「樹林型合葬埋蔵施設」の案内が目に飛び込んできます。
樹木(シンボルツリー)の根元周辺に多数の遺骨を直接土に触れる形で共同埋蔵する施設です。
- 多磨霊園2号基:遺骨1体あたり9万5000円(粉状遺骨は3万1000円)
- 雑司ケ谷霊園:遺骨1体あたり11万2000円(粉状遺骨は3万7000円)
- ※年間管理料はかかりません。
申込み時点で東京都内に3年以上継続して居住していること、および対象遺骨の祭祀の主宰者であることなどが求められます(生前申込区分もあります)。
年1回の公募抽選方式で実施されており、令和8年度の申込期間は6月12日〜7月3日、抽選日は8月14日でした。
2.2 横浜市営メモリアルグリーンは今年度申し込める?
横浜市戸塚区の広大な敷地案内図を見ると、公園のような景観の中に「樹木型」と「芝生型」という対照的な納骨施設が整然と配置されています。
- 樹木型納骨施設(シンボルツリーの周囲に骨壺を直接納めるタイプ・承継不要):使用料14万円(別途維持管理費6万2850円)
- 芝生型納骨施設(代々承継が前提):30年型45万円、永年型90万円(年間管理料8370円)
ただし横浜市公式「市営墓地・納骨堂の使用者募集」ページには「令和8年度は、使用者募集は実施いたしません」と明記されており、メモリアルグリーンについては令和8年度(2026年度)は新規の使用者募集が行われません。
掲載時点の秋彼岸・老人週間(2026年9月)でも新規申込はできない点にご注意ください。次年度以降の募集再開は横浜市等の公式発表で確認する必要があります。
2.3 大阪市設瓜破霊園はどんな人が申し込める?
瓜破霊園の公募要領に目をとおすと、納骨後の「保管期間」や「生前予約の条件」が細かく分類されています。大阪市設霊園で合葬式墓地があるのは瓜破霊園のみです。
- 直接合葬:市内居住者5万円(市外居住者7万5000円)
- 10年保管後合葬:市内居住者10万円(市外居住者15万円)
- 20年保管後合葬:市内居住者15万円(市外居住者22万5000円)
- ※記名板への刻印を希望する場合は別途5万円
たとえば市内居住者が10年保管後合葬を選び、記名板への刻印も希望する場合、使用料10万円に記名料5万円を合わせて15万円になります。
申込時点で大阪市内に3か月以上住民登録があることが基本条件で、生前申込(予約)は65歳以上の市内居住者に限定されています。令和8年度は先着順の随時募集(令和8年4月1日〜令和9年3月7日)で実施されています。
2.4 名古屋市営みどりが丘公園は居住地を問わない?
豊かな自然が広がるみどりが丘公園墓地の案内板を確認すると、「居住地を問わず申し込める」という公営霊園としては珍しく開かれた応募要件になっています。合葬式墓地内に共同埋蔵墓と個別埋蔵墓が設置されています。
- 共同埋蔵墓:市内居住者12万円(市外居住者14万4000円)
- 個別埋蔵墓:市内居住者20万円(市外居住者24万円、20年間個別安置後に共同埋蔵へ移行)
名古屋市が運営する市営墓地は八事霊園・愛宕霊園・みどりが丘公園の3施設のみで、合葬式墓地が整備されているのはみどりが丘公園のみです。
すでに手元に焼骨がある方だけでなく、生前申込(2人まで)も居住地を問わず申込みが可能で、通年での随時募集(令和8年5月10日〜令和9年3月6日等)が行われています。
2.5 神戸市立墓園、樹林葬墓地は今すぐ申し込める?
神戸市の案内資料を見ると、従来のビル型・壁型合葬墓とは別に、緑豊かな森林公園の中に本格的な「樹林葬墓地」が整備されていることが分かります。
粉状にした焼骨を土と混ぜて埋蔵する形式を採用しており、5都市の中で最も本格的な樹木葬スタイルです。
- 樹林葬墓地(ひよどりごえ森林公園内・使用期間約50年):1体あたり15万円
- 鵯越合葬墓(合葬施設):1体あたり5万円
- 鵯越合葬墓(個別安置施設):1体あたり10万円(10年保管後に合葬)
ただし通年で随時募集を行っているのは鵯越合葬墓の合葬施設(5万円)のみで、樹林葬墓地(15万円)の2026年度募集(3月16日〜6月5日)および鵯越合葬墓の個別安置施設(10万円)の2026年度募集(4月27日〜6月5日)は、いずれも今年度の受付を終了しています。
神戸市に6か月以上住民登録があることなどが条件です(生前申込は65歳以上・6か月以上居住が対象)。
2.6 【比較まとめ】主要5都市の公営霊園 樹木葬・合葬式施設
本記事でご紹介した各自治体の施設について、費用や募集条件の違いが一目でわかるよう比較表にまとめました。
東京都(都立多磨霊園・雑司ケ谷霊園/樹林型合葬埋蔵施設)
使用料9万5000円〜11万2000円、都内3年以上継続居住、年1回の公募抽選(令和8年度は申込受付終了)
横浜市(市営メモリアルグリーン/樹木型納骨施設)
使用料14万円(別途維持管理費6万2850円)、市内に一定期間居住、令和8年度は使用者募集なし
大阪市(市設瓜破霊園/合葬式墓地)
使用料5万円〜15万円、市内3か月以上居住(生前は65歳以上)、先着順の随時募集(令和8年度:4月1日〜翌年3月7日)
名古屋市(市営みどりが丘公園/合葬式墓地)
使用料12万円〜20万円、居住地制限なし、期間内の随時募集(令和8年度:5月10日〜翌年3月6日)
神戸市(ひよどりごえ森林公園/樹林葬墓地・鵯越合葬墓)
使用料5万円〜15万円、市内6か月以上居住(生前は65歳以上)、通年募集中なのは合葬施設(5万円)のみで、樹林葬墓地・個別安置施設の令和8年度募集は受付終了
3. 筆者からのコメント
「樹木葬なら承継の心配がなく、安く済む」と思われがちですが、実際にはいくつか注意が必要です。
たとえば東京都立霊園や大阪市の合葬式墓地のように、10年・20年の個別安置期間を経てから共同埋蔵に移る施設もあります。承継のような物理的・金銭的な負担がなくなる一方、施設によっては個別安置期間中であっても一度納骨すると遺骨の返還(改葬)が認められないケースがあるため、事前に規約を確認しておく必要があります。逆に言えば、合葬されるまでの期間は特定の場所に手を合わせに行けるという安心感にもつながります。
また「公営だから通年でいつでも申し込める」と思い込んでいると、横浜市のように令和8年度は募集自体がない、神戸市の樹林葬墓地のように年度の限られた期間しか受け付けていない、というケースもあります。
費用の安さだけで飛びつかず、埋蔵の仕組みと募集時期の両方を、お住まいの自治体の最新情報で必ず確認してから検討することをおすすめします。
