1. 8月末から2週間で15%近く削られた株価の足取り

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

9月11日の終値は15,500円だった。前営業日の15,850円からは2%強の下落である。

もっとも、この1日だけを見ても話は終わらない。直近1カ月をたどると、8月14日の16,455円からいったん水準を下げ、8月19日には15,740円まで沈んでいる。

そこから切り返して8月26日に17,155円、8月28日に17,800円、そして8月31日の終値は18,215円まで切り上がった。直近1カ月の終値では、ここが最も高い水準になる。

ところが9月に入ってからの動きは速い。9月1日に17,495円、9月2日には16,355円へ落ち、9月9日には15,305円まで下げた。8月31日の水準と比べると16%ほど低い。

9月10日は15,850円まで戻したが、翌11日は再び15,500円である。1カ月前の16,455円と比べれば6%弱の下落で、株価の居場所そのものが9月に入って一段低いところへ移った。

直近時点のPER(株価収益率)は28.59倍、PBR(株価純資産倍率)は12.16倍だ。会社が示す2027年3月期の1株当たり当期利益予想は543円で、足元のPERはこの会社予想の利益を前提に置いた水準とおおむね重なる。

では、なぜこの2週間で水準が切り下がったのか。株価が動いた真の理由は誰にも断定できない。ただ8月末までの上昇で倍率がそれなりのところまで伸びていたこと、そこに相場全体の地合いが重なったことが同時に効いた可能性は高い。

2. 通期営業利益予想が7,870億円から9,450億円へ動いた意味

株価が水準を下げた一方で、決算の側はむしろ強い。

2027年3月期1Qの売上収益(IFRS)は1兆453億円、営業利益は2,554億円、当期利益は2,026億円だった。通期の営業利益予想9,450億円に対する進捗率は27.0%で、単純な4分割の目安である25%を上回る。

見逃せないのは、その通期予想そのものが動いていることだ。2026年3月期の本決算時点で会社が示していた2027年3月期の計画は、売上収益4兆300億円、営業利益7,870億円、当期利益6,230億円だった。

それが1Qを終えた時点で、売上収益4兆2,300億円、営業利益9,450億円、当期利益7,550億円へ引き上げられている。営業利益で1,580億円、率にして2割の上積みだ。1株当たり当期利益の予想も447円から543円へ切り上がった。

期初に置いた前提が、3か月で組み替わったと言っていい。

その土台になった2026年3月期通期はどうだったのか。売上収益は3.9%増の3兆6,973億円、営業利益は28.5%増の6,305億円、税引前当期利益は22.3%増の6,446億円、当期利益は21.6%増の4,969億円で着地している。

会社の説明によると、HRテクノロジー事業、人材派遣事業、マーケティング・マッチング・テクノロジー事業のすべてが増収となった。3つの事業が同じ方向を向いた期だったことになる。

では利益はなぜ売上以上に伸びたのか。売上総利益が2兆856億円から2兆1,881億円へ増え、同時に販売費及び一般管理費が1兆5,586億円から1兆5,276億円へ減っている。増えた粗利と減った販管費の両方が、1,400億円の営業増益に効いた形だ。

売上を積み増して利益を取るのではなく、同じ売上から抜き取る取り分を厚くして利益を取る。2026年3月期はその色が濃く出た期だったと読み取れる。

3. 売上収益の伸びは緩やか、それでも営業利益が8割増えた理由

過去5期を並べ直すと、この会社の変わり方がはっきりする。

売上収益は2022年3月期の2兆8,717億円から2026年3月期の3兆6,973億円へ増えた。ただし2023年3月期の3兆4,295億円を起点に取ると、直近3期の伸びは7.8%にとどまる。年率に直せば、サービス業の売上成長率中央値6.1%と大差ない緩やかさだ。

一方で営業利益は、2023年3月期の3,443億円から2026年3月期の6,305億円へ8割超増えた。営業利益率は10.0%、11.8%、13.8%、17.1%と4期続けて切り上がっている。

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出所:株式会社リクルートホールディングス 有価証券報告書をもとに筆者作成

出所:株式会社リクルートホールディングス 有価証券報告書をもとに筆者作成

成長企業という言葉から連想されるのは、売上が毎期大きく膨らんでいく姿だろう。だが実際にこの会社で起きているのは、売上をほぼ同じ速さで回しながら、そこから抜き取れる利益の割合を上げていく作業に近い。

売上の伸びと利益の伸びは、同じ「成長」という言葉の中で別々に動いている。ここを分けて見ないと、決算の印象を取り違えることになる。

水準で見ると、2026年3月期の営業利益率17.1%はサービス業の中央値6.6%の2.5倍以上にあたる。ROE(自己資本利益率)31.0%も、中央値8.7%と並べればまるで違う数字だ。

もっともサービス業という区分には345社が同居しており、事業モデルの幅はかなり広い。中央値はあくまで目安として置いておきたい。

売上総利益率も59.2%で、中央値の38.0%を大きく上回る。人と仕事、人と情報を突き合わせるマッチング型の収益は、追加の1件を乗せるときの原価が薄い。その性質が、利益率という数字の形になって出ていると考えられる。

4. 筆者コメント

株価の足取りと通期計画の書き換えを同じ画面に並べると、居心地の悪い絵になる。

会社は3か月で営業利益の計画を2割積み増した。にもかかわらず株価は8月末の水準から二桁のマイナスまで沈んでいる。

普通なら、計画の引き上げは株価の追い風になるはずだ。ここで起きたのはその逆に見える。ただ順番を入れ替えて考えると筋は通る。引き上げが意識されて8月末まで水準が上がり、上がりきったあとで倍率の重さが意識された、という順番だ。

PERを倍率としてではなく投資回収の年数として読むと、この違和感は少し整理できる。会社予想の利益をそのまま積み上げて元が取れるまでの年数が、いまは30年弱のところにある。予想が上がれば年数は縮むが、株価が先に上がってしまえば縮まない。

だからこそ見ておきたいのは、株価が動いた幅ではなく、会社が置いた前提が動いた幅のほうだ。四半期1回で通期計画を2割書き換えるのは、情報としてかなり重い。次の四半期にこの前提がどちらへ動くのか、そこに着眼して観察していきたい。