1. 8月末の6,000円台から一転、9月11日に1カ月の最安値
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出所:各種資料をもとに筆者作成
直近1カ月の日次終値を並べると、株価の重心は8月下旬から9月にかけて明確に下へ移っている。起点の8月14日は5,170円、8月28日には6,058円まで切り上がった。この6,058円が、直近1カ月の日次終値では最も高い水準にあたる。
そこからの下げは速い。9月1日は5,926円だったが、翌2日には5,345円まで沈んだ。1営業日で1割近い下押しである。9月2日から10日にかけては5,100円台から5,300円台のレンジで上下し、戻りの鈍い展開が続いた。
そして9月11日の終値は5,022円。前日の5,255円から▲4.4%で、直近1カ月の日次終値では最も低い。8月28日の高い水準からは▲17.1%にあたる。1カ月の起点である8月14日と比べれば▲2.9%にとどまるが、この数字だけを見て「ほぼ横ばい」と受け取ると実態を取り違える。
当日の急落は、決算などの個別材料からは説明がつかない。直近の開示である2027年3月期1Qからは、すでに時間が経っている。相場全体の地合いや、非鉄セクターに対する需給の傾きが意識された可能性が高い。銅や金の価格観が短期で振れれば、製錬を主力とする銘柄の株価もそれに沿って動きやすい。
2. PER4.69倍・PBR0.85倍という水準は何が作っているのか
9月11日時点のPER(株価収益率)は4.69倍、PBR(株価純資産倍率)は0.85倍だった。PERは、いま払う株価を1年分の利益で何年かけて回収できるかを示す指標である。4.69倍なら5年弱という計算になり、上場企業としては相当に低い側に位置する。
ただ、この低さを株価の下落だけで説明すると読み違える。PERの分母には会社の予想EPS(1株当たり利益)1,070.8円が置かれている。前期実績のEPSは310.56円だから、分母は実績の3.4倍に膨らんでいる。倍率の低さは、株価が下げたことと、会社が強気の予想を置いたことの両方で作られている。
PBRのほうは、9月1日の時点では1.00倍だった。それが10営業日ほどで0.85倍まで下がり、1倍を下回っている。会計上の純資産に対して株式市場が付けている値段が、簿価を下回る状態だ。
背景の一つに資本の厚みがある。2026年3月期末の自己資本比率は24.5%で、非鉄金属27社の中央値53.3%とは大きく開いている。下位4分の1の境界にあたる41.2%も下回る。純資産が薄い分だけ、その1単位に対する市場の値付けは振れやすくなる。
3. 2027年3月期1Qの純利益512億円と、通期予想に対する進捗の偏り
2027年3月期1Qは、売上高5,970億円、営業利益329億円、経常利益519億円、純利益512億円だった。EPSは392.35円。営業利益より経常利益が190億円ほど大きく、純利益は経常利益とほぼ同じ水準で並んでいる。
通期予想は、売上高2兆4,000億円(+30.1%)、営業利益1,300億円(+114.9%)、経常利益1,800億円(+84.5%)、純利益1,400億円(+245.0%)。年間配当は116円を見込み、前期の100円から積み増す計画だ。
進捗を見ると偏りがある。営業利益は25.4%で、1年を4等分した線上にほぼ乗っている。だが純利益は36.6%まで進んでいる。営業段階の稼ぎ以外の要素が、利益を前倒しで押し上げていることになる。
この形は前期からの続きでもある。2026年3月期3Q累計は売上高1兆2,844億円(▲13.4%)、営業利益273億円(▲15.2%)の減収減益だった。会社の説明によると、銅や金などの価格は前年同期比で上昇していた。それでも米ドルの円高基調と、買鉱条件(TC/RC=鉱石を製錬・精錬する対価)の悪化が影響した。その結果、主に金属事業で売上高と営業利益が減っている。半導体関連の需要はAI関連を除いて低調、自動車関連は緩やかな回復だったという。
それでも経常利益は611億円(+7.6%)と増えている。鉱山からの受取配当金が増加したことが効いた。一方で純利益は363億円(▲26.0%)と落ちた。前年同期に計上した持分変動利益の剥落と、減損損失の計上が重なったためだ。製錬という本業の外側にある資源権益からの収益が、利益の形を大きく左右している姿が読み取れる。
4. 筆者コメント
株価を測る物差しが、実績から予想へ移り変わろうとしているのが直近の姿だ。
前期の実績で計った収益倍率と、会社予想で計った倍率は、まるで別の会社の数字のように離れている。読者が目にする低い倍率を作っているのは後者の側だ。つまり倍率の低さは、株価が下げた結果であると同時に、会社が置いた予想の高さが分母を押し上げた結果でもある。
この構図には、予想が動けば倍率も一気に変わるという性質が付いてくる。計画の前提が崩れれば、株価が1円も動かなくても倍率は跳ね上がる。逆もまた同じだ。
私がこの局面で先に確かめたいのは、日々の値動きではなく、四半期ごとに会社予想がどう扱われるかという点である。据え置くのか、積み増すのか、削るのか。低い倍率を支えているのはその判断のほうだ。決算資料を開いたら、実績欄より予想欄を先に見る癖をつけることをおすすめしたい。