5. 営業利益3.7倍を、会社は何で説明しているか

2026年3月期の連結業績は、売上収益4,533億円で前期比+13.7%。営業利益は1,073億円で+272.6%、当期利益は1,069億円で+352.2%となった。営業利益率は23.7%に達する。

では、なぜここまで伸びたのか。会社の説明をたどると要因はかなり具体的だ。

2026年3月期3Q累計の短信によると、日本とアジアは減収だった一方、北米で進行性前立腺がん治療剤「オルゴビクス」と過活動膀胱治療剤「ジェムテサ」の売上が拡大し、さらに「オルゴビクス」の販売マイルストン収入を計上したことなどで増収になった。

利益面については、増収に加えて事業構造改善効果の発現と再生・細胞医薬事業の再編により販売費及び一般管理費と研究開発費が減少し、アジア事業の一部持分譲渡に伴う関係会社持分譲渡益をその他の収益に計上したと説明している。

費用の縮小は決算の数字にもはっきり出ている。研究開発費は2024年3月期の1,126億円から2025年3月期に499億円、2026年3月期は440億円へ。販売費及び一般管理費も4,295億円から1,806億円、1,626億円と2期続けて下がった。

通期の短信では、2025年5月に2027年度までの活動計画「Reboot 2027 ~力強い住友ファーマへの再始動~」を策定し、規律あるコストマネジメントのもとで注力領域へ経営資源を集中させる方針も示している。アジア事業の再編は、その方針に沿った動きだ。

5.1 2027年3月期1Qの進み方

足元の数字も見ておきたい。2027年3月期1Qは売上収益1,295億円、営業利益182億円、当期利益170億円だった。

通期予想に対する進捗率は売上収益が24.0%、営業利益が20.2%、当期利益が22.1%。売上はほぼ直線ペースだが、利益の進み方はそれより緩い。減益予想の通期計画に対して、1Q時点では計画に沿った入り方をしていると読める。

6. 5期で二度折れた売上と、絞り込みで作り直した利益

視野を5期に広げると、この会社の振幅の大きさがはっきりする。

2022年3月期の売上収益は5,600億円、営業利益602億円、当期利益564億円。ROEは9.5%、自己資本比率は46.5%。ごく標準的な製薬会社の姿に見える。

そこから2023年3月期は売上収益5,555億円で営業損失▲770億円、当期損失▲745億円。2024年3月期は売上収益が3,146億円まで縮み、営業損失は▲3,549億円、当期損失は▲3,150億円に達した。自己資本比率も17.2%まで落ちている。

この底で何が起きていたかは、地域別の開示に残っている。2024年3月期の北米セグメントは営業損失▲802億円。同期の日本は134億円の営業利益を出していたので、連結の落ち込みはほぼ北米で説明がつく。

そこから2025年3月期に営業利益288億円で黒字へ戻し、2026年3月期は1,073億円まで積み上げた。2期での立て直しだ。ただし手段は規模の拡大より絞り込みに寄っている。従業員数は2022年3月期の6,987人から2026年3月期は3,123人へ減っている。

財務にはまだ重さが残る。2026年3月期末のれんは2,111億円で、総資産8,046億円の4分の1超を占める。有利子負債は流動・非流動を合わせて2,172億円あり、現金443億円を大きく上回る。配当は2026年3月期も0円だ。

もっとも、資本の側には動きがあった。2027年3月期1Q末の純資産は4,086億円で、前期末の2,925億円から増えている。発行済株式数も3億9,790万株から4億4,920万株へ増加した。総資産8,449億円に対する純資産の比率は48%台まで戻っている。

7. 筆者コメント

この会社の姿は、いま作り直しの途中にある。5期を並べるとそう見えてくる。

直近の底は、単年の不振ではなかった。売上の規模そのものが一段落ち、自己資本の厚みも大きく削られた。そこから2期かけて利益水準を立て直している。

立て直しの中身は、増やす側より減らす側に寄っている。研究開発費と販管費を切り、アジアの持分を外へ出し、人員も絞った。どれも足元の利益には効く。一方で、次の製品を生む力を削る方向にも働きうる。

だから私は、この会社を見るときに「利益がいくら出たか」より「何を残して何を手放したか」を先に置きたい。地域別の開示は、その選択の跡がいちばん素直に出る場所だ。

北米に資源を寄せたのは結果ではなく選択だろう。選択の当否は、これから数期かけて数字に出てくる。決算を見るときは増減率だけを追わず、地域構成比の動きにも目を向けることをおすすめしたい。

参考資料

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石津 大希