1. 社名と親会社は国内、収益の重心は北米にある

まず開示の形そのものに目が留まる。この会社の報告セグメントは、領域別でも製品別でもなく「日本」「北米」「アジア」の地域別に切られている。

有価証券報告書によれば、2026年3月31日時点のグループは同社と親会社、子会社10社、関連会社4社で構成される。親会社は住友化学だ。

日本では同社が医療用医薬品の製造・仕入・販売を担い、再生・細胞医薬の製法開発や研究開発は住友化学との合弁会社が受け持つ。北米はSumitomo Pharma America, Inc.ほか1社が医療用医薬品の製造と販売を行う。アジアは丸紅グローバルファーマとの合弁である丸紅ファーマシューティカルズが担い手だ。

ここまでは資本関係の話で、社名の印象どおり国内グループの色が濃い。ところが売上と利益の内訳に進むと、絵はかなり違って見えてくる。

2. 売上の4分の3と営業利益の8割近くが北米から出ている

2026年3月期の連結売上収益(IFRS)は4,533億円。うち北米が3,379億円で、構成比は74.6%に達する。

日本は924億円で20.4%、アジアは230億円で5.1%にとどまる。国内の医療用医薬品事業は、連結の売上でいえば5分の1の位置だ。

利益の偏りはさらに強い。3地域の営業利益を足すと975億円で、そのうち757億円が北米から出ている。8割近くが1地域に集まっている計算になる。日本は124億円、アジアは95億円だ。

利益率で並べると別の性格も見える。北米は22.4%、日本は13.4%、そしてアジアは41.1%と最も高い。規模の小さいアジアが、利益率では3地域で頭一つ抜けている。

もっともアジアは前期比で売上収益が▲51.2%、営業利益が▲60.5%と大きく縮んだ。有価証券報告書には、2025年度に中国・アジアの複数の子会社を吸収分割で丸紅ファーマシューティカルズへ承継させ、同社持分の一部を譲渡して連結の範囲から外したと記されている。縮小は事業の失速ではなく、資本関係の組み替えによるものだ。

北米は売上収益が+34.2%、営業利益が+77.8%。日本は売上収益が▲7.5%ながら営業利益は+8.2%で、規模を縮めつつ利益は保った形だ。

そして構成比の動き方が速い。北米の売上構成比は2024年3月期に50.6%、2025年3月期に63.1%、2026年3月期に74.6%。2期で半分から4分の3へ移った。

アジアの持分譲渡と国内の縮小が同時に進み、北米が伸びた結果として比重が動いている。地域別の開示は「どこで稼いでいるか」の地図であり、同時に「どこへ資源を寄せたか」の記録でもあると読み取れる。

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出所:住友ファーマ株式会社 有価証券報告書をもとに筆者作成

出所:住友ファーマ株式会社 有価証券報告書をもとに筆者作成

3. 1カ月で1割強上昇した株価、PER8倍台とROE46%の併存

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

株価に目を移す。2026年9月11日の終値は1,527円だった。前営業日の1,536円からはほぼ横ばいだ。

1カ月前の8月中旬は1,372円の水準で、8月19日には終値で1,351円まで下押ししていた。そこから9月3日には1,674円まで切り上がり、直近はそこから9%弱下げている。1カ月では1割強の上昇、直近1週間あまりでは下落という二層の動きだ。

この振れ方の理由を一つに絞ることはできない。相場全体の地合いも需給も絡む。ただ、会社が示した2027年3月期の見通しが売上収益5,400億円(+19.1%)に対し営業利益900億円(▲16.2%)、当期利益770億円(▲27.9%)の増収減益であることは、水準を見るうえで無視できない材料だろう。

バリュエーションを見ると、9月11日時点のPER(株価収益率)は8.64倍、PBR(株価純資産倍率)は1.68倍。医薬品という業種のなかでは、PERは低い位置にある。

ここで一般的な見方とのズレが出てくる。2026年3月期のROE(自己資本利益率)は46.3%で、医薬品業種の中央値4.4%、上位25%の線である8.0%を大きく上回る。数字だけ見れば資本効率のきわめて高い会社だ。

だがROEは自己資本が薄いほど高く出る。同期末の自己資本比率は36.4%で、業種の中央値68.4%はもちろん、下位25%の線である48.8%も下回っている。分母の薄さが指標を押し上げている面は否定できない。

医薬品は安定したディフェンシブな業種として語られることが多い。しかし1次情報が示すこの会社の姿は、利益率も資本構成も業種の真ん中から大きく外れたところにある。ROEの高さとPERの低さが同時に成り立っているのは、その表れではないだろうか。

4. 筆者コメント

地域の偏りと、会社が置いた2027年3月期の見通し。この二つを同時に並べると、単体では見えないものが出てくる。

偏りは加速している局面にある。にもかかわらず、通期計画は利益を落とす前提で組まれている。集中が進んだところで稼ぎのピークをいったん越える、という絵だ。

依存が強まるほど、その地域で起きた一つの出来事が連結の数字をそのまま揺らす。上に振れるときも下に振れるときも幅は広がる。裏を返せば、地域構成比は収益源の地図であると同時に、リスクの集中図でもある。

バリュエーションが低い位置にとどまっているのを、市場がこの振幅を織り込んだ結果と読むこともできるだろう。もっとも、株価がどの要素をどれだけ織り込んでいるかは外から確かめようがない。そこは慎重に構えたい。

私が持っておきたいのは、構成比の変化と利益の振れ幅を必ずセットで眺める癖だ。片方だけを追うと、伸びている地域の数字に引っ張られて全体の揺れを見落とす。伸びの速さと集中の危うさは、同じ数字の表と裏にある。