10月に振り込まれる年金から、天引きされる保険料や税金の額が変わる人がいます。

8月分までと比べて手取り額が増えたり減ったりするため、驚く人もいるかもしれません。

これは「仮徴収」から「本徴収」へ切り替わるタイミングにあたるためで、変わるのは天引きされる保険料・税金の額であり、年金の支給額(額面)そのものではありません。

しかも天引きの対象になっているのは、介護保険料だけではありません。

本記事では、国民年金・厚生年金の平均月額データも確認しながら、10月に天引き額が変わる仕組みと、対象になりやすい人の特徴を解説します。

※本記事は一般的な制度の仕組みを解説するものです。実際の金額や時期は個々の年金受給状況や市区町村の運用によって異なるため、詳細はお住まいの市区町村や日本年金機構にご確認ください。

1. 10月から年金の「手取り額」が変わる人がいる理由

年金は偶数月(2月・4月・6月・8月・10月・12月)の年6回に分けて支払われますが、その一部の月で天引き額の計算方法が切り替わります。

1.1 年金からは保険料や税金があらかじめ差し引かれている

65歳以上で一定額以上の年金を受給している人は、介護保険料や国民健康保険料などを自分で納付する代わりに、年金の支払いのたびにあらかじめ差し引かれる「特別徴収」という仕組みが使われています。

特別徴収の対象になるのは、老齢・退職・障害・死亡を支給事由とする年金を受給しており、その年金の年額が18万円以上(月額に換算するとおよそ1万5000円以上)の人です。

年金の振込通知書を見て「額面は変わっていないのに、振り込まれた金額が違う」と感じたときは、この特別徴収額が変わっている可能性があります。

1.2 4月・6月・8月は「仮徴収」、10月・12月・2月は「本徴収」

年6回の年金支払いのうち、前半の4月・6月・8月分を「仮徴収」、後半の10月・12月・2月分を「本徴収」と呼びます。

仮徴収の時点では、その年度の保険料額がまだ確定していないため、前年度の確定額をもとにした「仮の額」が3回に分けて天引きされます。

その後、その年度の保険料・税額が正式に確定すると、年間の確定額から仮徴収分を差し引いた残りが、本徴収として10月・12月・2月の3回に分けて天引きされます。

つまり、仮徴収額と確定額に差があるほど、本徴収に切り替わるタイミングで天引き額の増減が大きくなりやすいということです。

和田直子
「天引き額が変わった」と聞くと保険料そのものが値上がりしたように感じるかもしれませんが、多くの場合は「仮の額」から「確定額」への調整にすぎません。

前年より天引き額が増えていた場合でも、その分だけ保険料の総額が増えたとは限らず、逆に仮徴収の間に多く引かれすぎていた分が本徴収で少なく調整されることもあります。まずは何が原因で変わったのかを、通知書で確認する習慣を持っておくと安心です。

2. 天引きされているのは介護保険料だけではない

「年金からの天引き」というと介護保険料を思い浮かべる人が多いですが、実際には年齢や加入している制度によって、複数の保険料・税金が天引きの対象になります。

2.1 65歳以上なら原則対象になる「介護保険料」

介護保険の第1号被保険者にあたる65歳以上の人は、老齢・退職・障害・死亡を支給事由とする年金を受給していれば、原則として介護保険料が特別徴収の対象になります。

2.2 65歳〜75歳未満の国保加入者が対象の「国民健康保険料」

65歳以上75歳未満で、後期高齢者医療制度の対象になる前の国民健康保険の加入世帯主も、特別徴収の対象になり得ます。

ただし、国民健康保険料と介護保険料の合計額が、その支払期の年金額の2分の1を超える場合は、特別徴収の対象から外れます。

2.3 75歳以上が対象の「後期高齢者医療保険料」

75歳以上(一定の障害があると認定された場合は65歳以上)になると、国民健康保険から後期高齢者医療制度に移行し、後期高齢者医療保険料が特別徴収の対象になります。

こちらも、後期高齢者医療保険料と介護保険料の合計額が年金額の2分の1を超える場合は対象外です。

さらに、老齢または退職を支給事由とする年金の受給者で、公的年金等にかかる所得割・均等割が生じる場合は、住民税および森林環境税も同じ仕組みで天引きされます(障害年金・遺族年金の受給者は対象外)。

年金から天引きされるのは介護保険料だけではない1/4

年金から天引きされるのは介護保険料だけではない

LIMO編集部作成

このように、天引きされる保険料・税金は1種類とは限らず、年齢や加入する制度によって組み合わせが変わります。

65歳になったばかりの人は介護保険料だけが対象になり、75歳の誕生日を迎えると後期高齢者医療保険料に切り替わるなど、年齢の節目ごとに天引きされる項目自体が変化する点も押さえておきたいポイントです。

3. 【年金グラフ】国民年金・厚生年金の平均月額はどれくらいか

天引きされる保険料は年金額をもとに計算されるため、まずは国民年金・厚生年金の受給額の分布を年金月額の階級別に確認します。

3.1 国民年金は平均5万9310円、6万円台の受給者が最も多い

国民年金の老齢年金受給権者(令和6年度末現在、合計3345万4617人)の平均年金月額は5万9310円で、男子が6万1595円、女子が5万7582円です。

年金月額階級別に見ると、男女とも「6万円〜7万円」の階級が最も多く、男子966万1504人、女子749万3555人がこの階級に含まれています。

国民年金 年金月額階級別老齢年金受給権者数(男女別)2/4

国民年金 年金月額階級別老齢年金受給権者数(男女別)

出所:「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

3.2 厚生年金は平均15万289円、男女差が大きい

厚生年金保険(第1号)の老齢年金受給権者(令和6年度末現在、合計1608万5696人)の平均年金月額は15万289円で、男子が16万9967円、女子が11万1413円です(年金月額には基礎年金月額を含みます)。

階級別の分布を見ると、男子は「19万円〜20万円」を中心に17万円台から21万円台まで幅広く分布しているのに対し、女子は「10万円〜11万円」の階級に最も多く集まっており、男女で受給額の分布そのものが大きく異なっています。

厚生年金保険(第1号) 年金月額階級別老齢年金受給権者数(男女別)3/4

厚生年金保険(第1号) 年金月額階級別老齢年金受給権者数(男女別)

出所:「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成