「児童扶養手当を満額もらうには、パート収入や年収がいくらまでなら大丈夫なのだろう」——所得制限限度額は「所得」の金額で公表されているため、自分の給与収入(年収)に置き換えようとして、住民税の非課税基準などと同じ感覚で計算し、実際とズレてしまう人は少なくありません。
この記事では、こども家庭庁・自治体の公式情報にもとづき、児童扶養手当を全部支給・一部支給で受け取れる年収の目安を、扶養する児童の人数別に、編集部が試算します。
1. 児童扶養手当の「所得」は、住民税などとは違う特別な計算式で決まる
児童扶養手当の所得制限限度額は「所得」の金額で決まっています。この所得は、給与収入から給与所得控除を差し引いた「給与所得」から、さらに社会保険料相当額として一律8万円、給与所得等に係る控除として一律10万円を差し引いた金額です。
住民税や所得税の非課税基準を計算するときは、給与所得控除だけを差し引けば済みますが、児童扶養手当の場合はそこからさらに18万円(8万円+10万円)を差し引く、という特有のルールがあります。この違いを知らずに「給与所得控除を引いた金額」をそのまま所得制限限度額と比べてしまうと、実際より厳しく(または緩く)見積もってしまうことになります。
2. 扶養児童1人なら、給与収入190万円までが「全部支給」の目安
こども家庭庁・自治体の公式資料によると、扶養する児童(扶養親族等)が1人の場合、請求者本人の所得制限限度額は、全部支給が所得107万円、一部支給が所得246万円です(令和6年11月分から適用)。
令和7年分以降の給与所得控除の最低額は65万円です(令和7年度税制改正により55万円から引き上げ)。児童扶養手当特有の18万円控除(社会保険料相当額8万円+給与所得等控除10万円)を踏まえて逆算すると、扶養児童1人の場合、給与収入が190万円以下であれば全部支給、385万円程度であれば一部支給の対象になる計算です。
2.1 【児童扶養手当・扶養児童の人数別「全部支給・一部支給」の年収目安】
- 扶養児童0人(所得限度額69万円・208万円):全部支給は年収152万円以下、一部支給は年収約334万円以下が目安です
- 扶養児童1人(所得限度額107万円・246万円):全部支給は年収190万円以下、一部支給は年収約385万円以下が目安です
- 扶養児童2人(所得限度額145万円・284万円):全部支給は年収約244万円以下、一部支給は年収約432万円以下が目安です
扶養する児童が1人増えるごとに、全部支給・一部支給どちらの年収目安も大きく上がります。自分の世帯の扶養人数にあてはめて、目安を確認しておくとよいでしょう。
3. 【編集者の視点】
「所得制限限度額」という所得ベースの表だけを見ても、自分の年収がどこに当てはまるのかは直感的にわかりません。
児童扶養手当特有の18万円控除を踏まえた年収換算まで押さえておくことで、はじめて実感を持って判断できるようになります。
※本記事は、編集部が横浜市・京田辺市が公表する公式の最新情報を直接確認の上、執筆・検証しています。
4. この年収目安は、給与収入のみの場合に限られる
ここで示した年収の目安は、収入が給与収入のみの場合の試算です。給与収入以外に事業所得や養育費(受け取っている場合はその8割相当額が所得に加算されます)などがある場合、この年収目安はそのまま当てはまりません。
また、給与所得控除は収入額によって計算式が変わります(190万円以下は一律65万円、190万円超360万円以下は収入×30%+8万円、360万円超660万円以下は収入×20%+44万円の控除)。一部支給の年収目安が385万円・432万円のように360万円を超える水準になる場合は、190万円超360万円以下の計算式ではなく、さらに一段階上の360万円超の計算式が使われている点に注意が必要です。
5. 「年収160万円未満」という情報は、令和6年11月分より前の旧基準
児童扶養手当については、「年収160万円未満なら全部支給」という情報が今も広く残っています。これは令和6年11月分より前の旧基準にもとづくもので、現在は扶養児童1人の場合、全部支給の年収目安は190万円まで引き上げられています。
古い基準のまま「自分は対象外だろう」と思い込んでいると、実際には全部支給の対象になっているのに、収入超過だと勘違いしてしまう可能性があります。特に、以前一部支給や対象外と判定された経験がある人ほど、現在の基準であらためて確認する価値があります。
6. 扶養児童が増えると、手当の月額そのものも加算される
年収の目安だけでなく、実際にもらえる手当の月額も、扶養児童の人数によって変わります。こども家庭庁・自治体の公式資料によると、令和8年4月分からの全部支給額は、児童1人目が月額4万8050円、2人目以降は1人につき月額1万1350円が加算されます。
6.1 【児童扶養手当の月額(全部支給・令和8年4月分〜)】
- 扶養児童1人:月額4万8050円です
- 扶養児童2人:月額5万9400円(4万8050円+1万1350円)です
- 扶養児童3人:月額7万0750円(4万8050円+1万1350円×2)です
手当の月額と、全部支給を維持できる年収の目安は、どちらも扶養児童の人数によって変わります。両方をあわせて確認しておくと、より具体的な見通しが立てやすくなります。
7. 【編集者の視点】
年収の目安と、手当の月額。どちらも扶養児童の人数によって変わることは、意外と一緒に整理されていません。
自分の世帯の扶養人数にあてはめて、両方の数字を確認しておくと、家計の見通しが立てやすくなります。
児童扶養手当と児童手当の違いについては、児童手当の支給額を整理した別記事もあわせて確認してみてください。
8. まとめ
- 児童扶養手当の所得制限は「所得」ベースで、給与収入への換算には給与所得控除に加えて18万円(社会保険料相当額8万円+給与所得等控除10万円)の特有の控除が必要です
- 扶養児童1人の場合、年収190万円以下なら全部支給、約385万円以下なら一部支給の目安になります
- 扶養児童0人・2人の場合の年収目安は、それぞれ152万円/約244万円(全部支給)、約334万円/約432万円(一部支給)です
- この年収目安は、収入が給与収入のみの場合に限られます
- 「年収160万円未満」は令和6年11月分より前の旧基準で、現在は扶養児童1人の場合190万円まで引き上げられています
児童扶養手当の所得制限は「所得」の数字だけを見ていると、自分の年収に置き換えたときの判断を誤りやすい制度です。児童扶養手当特有の控除の仕組みを理解したうえで、自分の世帯の扶養人数にあてはめた目安を押さえておくことが大切です。
正確な判定が必要な場合は、お住まいの市区町村の児童扶養手当担当窓口に確認することをおすすめします。
9. よくある質問
9.1 Q. 児童扶養手当の「所得」は、給与所得控除を引いた金額と同じですか。
A. いいえ。給与所得控除を引いた「給与所得」から、さらに社会保険料相当額8万円と給与所得等控除10万円を差し引いた金額が、所得制限判定に使う所得です。
9.2 Q. 「年収160万円未満」という情報は間違いですか。
A. 令和6年11月分より前の旧基準です。現在は扶養児童1人の場合、全部支給の年収目安は190万円まで引き上げられています。
9.3 Q. 養育費を受け取っている場合、年収目安はどう変わりますか。
A. 受け取っている養育費の8割相当額が所得に加算されるため、この記事で示した給与収入のみの年収目安より厳しい基準になります。
9.4 Q. 扶養児童が3人以上いる場合はどうなりますか。
A. 扶養親族が1人増えるごとに、所得制限限度額が一定額ずつ加算されます。正確な金額は、お住まいの市区町村の窓口で確認するのが確実です。
9.5 Q. 正確な判定はどこに確認すればよいですか。
A. お住まいの市区町村の児童扶養手当担当窓口に確認するのが確実です。自治体によって案内の詳しさが異なる場合があります。
参考資料
齊藤 慧
