4. 年金収入と「空き家の維持費」のリアルな収支インパクト
日本年金機構によると、2026年度(令和8年度、2026年4月分から)の老齢基礎年金は満額で月額7万608円(年額約84.7万円)、厚生年金(夫婦2人分の標準的な年金額)は月額23万7279円です。
限られた年金収入の中から、自分たちの生活費に加えて、誰も住んでいない実家の固定資産税や都市計画税、庭木の剪定費、帰省のたびにかかる交通費・修繕費を払い続けることは簡単ではありません。
管理不全空き家として行政勧告を受け、土地の固定資産税負担が数倍に増えれば、老後家計への影響はより大きくなります。
5. 今すぐできる実家の空き家対策・活用法
こうしたリスクを避けるためには、早めの行動が欠かせません。まず、名義変更(相続登記)が済んでいるか、固定資産税の課税明細書で評価額や土地面積を確認しておきましょう。
売却を検討する場合に知っておきたいのが「空き家の3000万円特別控除」(被相続人の居住用財産を売ったときの特例)です。
国税庁によると、対象になるのは2016年(平成28年)4月1日から2027年(令和9年)12月31日までの譲渡で、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であることなどが要件です。
なお2024年(令和6年)1月1日以後の譲渡で、対象となる相続人が3人以上いる場合は控除額が2000万円までとなります。
解体や活用を考える場合は、実家のある自治体に相談するのも有効です。多くの自治体では、危険な空き家の解体・撤去や改修費用に対する独自の補助金制度を設けており、条件や上限額は市区町村ごとに異なります。
また、国土交通省が運営に関わる「空き家・空き地バンク」(LIFULL・アットホームがそれぞれ運営)は、利用者登録なしでオンラインから全国の物件を検索できます。改正空家法では、市区町村が「空家等活用促進区域」を指定し、空き家の再利用を促す仕組みも整いつつあります。
6. まとめにかえて|「まだ大丈夫」の先送りが、家計を圧迫する前に
実家を空き家のまま放置するリスクは、老朽化による倒壊や近隣トラブルだけではありません。「管理不全空き家」という区分ができたことで、これまでより早い段階で固定資産税の負担増につながる可能性があります。
「様子を見る」のではなく、実家のある市区町村の窓口へ早めに一度相談してみることが、選べる選択肢を広げる一歩になります。解体費用の補助や税の特例など、制度の詳細は自治体や税務署・専門家に直接確認することをおすすめします。
7. 【筆者コメント】
ご相談の中でも見落とされがちなのが、相続登記の義務化です。法務省によると、2024年(令和6年)4月1日から、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務になりました。
それより前に発生していた相続についても対象で、経過措置により2027年(令和9年)3月31日までに登記する必要があります。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料が科される場合があります。
「相続人同士でまだ話し合いがまとまっていない」という場合のために、法定相続分の確定を待たずに義務を果たせる「相続人申告登記」という簡易な仕組みも用意されています(ただし、売却などの際には改めて正式な相続登記が必要です)。
実家の名義がまだ亡くなった親のままになっていないか、この機会に一度確認しておくことをおすすめします。
参考資料
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」
- 国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について」
- 国土交通省「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する指針」
- 国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」
- 国税庁タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
- 法務省「相続人申告登記について」
- 国土交通省「空き家・空き地バンク総合情報ページ」
