9月は敬老の日があり、離れて暮らす家族が集まり、将来の備えや万が一の際のお手続きについて話し合う機会も増える時期です。
私はファイナンシャルプランナーとして、ご家族を亡くされた方から相続やお手続きに関するご相談をお受けうることもありました。大切な方を亡くされた直後は、深い悲しみの中で複雑なお手続きに向き合うことが難しく、どうしても書類の準備などが後回しになってしまう方が少なくありません。これはごく自然なことです。
しかし、遺族年金などの給付は、ご自身で請求のお手続きをしないと支給が始まりません。さらに、これらの年金を受け取る権利には「時効(一定期間を過ぎると権利が失われる制度)」があり、お手続きの時期によっては過去の分を受け取れない期間が生じてしまうことがあります。
この記事では、遺族年金の受給額の目安となる「2つの基本」をおさえたうえで、時効の期間や起算日(期間を計算し始める日)の違い、そしていざという時に慌てないための「3つの対策」について、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
1. まず知っておきたい。遺族年金で受け取れる金額の「2つの基本」
時効の話に入る前に、受け取れる額がどれくらいなのかを見ておきます。
1.1 遺族基礎年金は年84万7300円に子の加算がつく
遺族基礎年金の額は、令和8年度で年84万7300円です。
ここに子の加算額が上乗せされ、1人目と2人目の子は各24万3800円、3人目以降の子は各8万1300円になります。
子が1人なら年109万1100円、子が2人なら年133万4900円です。
1.2 遺族厚生年金は報酬比例部分の4分の3で計算する
遺族厚生年金の額は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3にあたる額です。
平成15年3月以前の加入期間は1000分の7.125、平成15年4月以後の加入期間は1000分の5.481という給付乗率で計算します。
遺族基礎年金とあわせて受け取る場合は、これが上乗せされます。
2. 遺族年金の時効は「5年」。知っておくべき起算日とは
受け取れる額がわかったところで、いつまでに請求すればよいのかを確認します。
2.1 権利が発生してから5年
日本年金機構は、年金を受ける権利は権利が発生してから5年を経過したときに時効によって消滅すると説明しています。
この5年という期間は、支給事由が生じた日の翌日から数えます。遺族年金の場合は、亡くなった日の翌日が起算日です。
逆にいえば、5年以内に請求すれば、支給事由が生じた月の翌月分までさかのぼって受け取れます。手続きが数か月遅れたからといって、その分が消えるわけではありません。
2.2 やむを得ない事情があるときは書面で申し立てられる
やむを得ない事情で期限内に請求できなかった場合は、その理由を書面で申し立てることによって、時効による消滅を避けられるとされています。
5年を過ぎているからと諦める前に、まず年金事務所に事情を伝えてみるのが先です。
あわせて、記録の訂正があった場合などに5年を超える分が支払われる時効特例という仕組みもあります。
3. 注意したい「3つの給付」。手続きごとに違う時効の期間
時効は年金の種類によって一律ではありません。遺族に関係する給付だけでも3通りに分かれます。
3.1 遺族年金は5年、死亡一時金は2年
老齢年金、障害年金、遺族年金の時効は5年で、起算日は支給事由が生じた日の翌日です。
未支給年金も5年ですが、起算日は支払日の翌月初日になります。
死亡一時金だけは2年と短く、起算日は死亡日の翌日です。国民年金の第1号被保険者だった方が亡くなったときの給付なので、遺族年金と混同しないよう気をつけたいところです。
3.2 5年を過ぎた分は受け取れなくなる
請求が5年を過ぎると、超えた分は時効によって受け取れなくなります。
遺族基礎年金でいえば、子が1人いる配偶者なら年109万1100円、子が2人なら年133万4900円が1年あたりの額です。
遺族厚生年金を受け取る場合はここにさらに上乗せされるので、失う額はもっと大きくなります。
時効と聞くと一律に5年だと思いがちですが、起算日は給付ごとに違います。とくに死亡一時金は2年しかないので、手続きの順番を決めるときに先に確かめておきたいところです。
