国民健康保険料は、給与から天引きされる社会保険料と違い、自分で金額の根拠を確認する機会が少なく、「結局いくらになるのか」が分かりにくい保険料です。

この記事では、代表的な自治体の公式情報にもとづき、国民健康保険料の計算方法と、実際の金額の目安を、編集部が試算します。国民健康保険の制度そのものの仕組みについては、国民健康保険の基礎知識を整理した別記事もあわせて確認してみてください。

1. 国民健康保険料は4つの区分の合計で決まる

国民健康保険料は、「医療分」「後期高齢者支援金分」「介護分(40〜64歳のみ)」に加えて、令和8年度から新設された「子ども・子育て支援金分」を合わせた、4つの区分の合計で決まります。それぞれの区分ごとに、所得割・均等割・平等割(自治体により有無が異なる)という要素を組み合わせて金額が算出されます。

「国民健康保険料は一律の金額」と思われがちですが、実際には住んでいる自治体によって料率も計算方式も異なります。同じ年収でも、住む場所によって保険料の金額は変わってきます。

齊藤 慧
引っ越しをきっかけに保険料が変わって驚く人を見かけますが、これは自治体ごとに料率が異なる仕組みだからです。自分の住む自治体の料率を確認する習慣を持っておくと、想定外の負担増に慌てずに済み、家計の見通しも立てやすくなります。

2. 東京23区の場合:所得割率と均等割額

東京都豊島区の公式情報によると、令和8年度の保険料率は次の通りです。医療分は所得割率7.51%・均等割額4万7600円・賦課限度額67万円です。後期高齢者支援金分は所得割率2.80%・均等割額1万7600円・賦課限度額26万円、介護分(40〜64歳)は所得割率2.43%・均等割額1万7800円・賦課限度額17万円です。

令和8年度に新設された子ども・子育て支援金分は、所得割率0.27%・均等割額1873円(18歳以上)・賦課限度額3万円です。東京23区は「平等割」がなく、所得割と均等割の2方式で計算されます。

2.1 【東京23区(令和8年度)の国民健康保険料の内訳】

前提:東京都豊島区公表の資料に基づく編集部整理(23区は原則統一料率)1/2

前提:東京都豊島区公表の資料に基づく編集部整理(23区は原則統一料率)

出典:東京都豊島区『国民健康保険料』

  • 医療分:所得割率7.51%・均等割額4万7600円・賦課限度額67万円です
  • 後期高齢者支援金分:所得割率2.80%・均等割額1万7600円・賦課限度額26万円です
  • 介護分(40〜64歳):所得割率2.43%・均等割額1万7800円・賦課限度額17万円です
  • 子ども・子育て支援金分:所得割率0.27%・均等割額1873円(18歳以上)・賦課限度額3万円です

3. 大阪市の場合:所得割・均等割・平等割の3方式

大阪市の公式情報によると、令和8年度は医療分が所得割率9.50%・均等割3万4990円・平等割3万3908円・賦課限度額66万円です。後期高齢者支援金分が所得割率3.06%・均等割1万1191円・平等割1万845円・賦課限度額26万円、介護分が所得割率2.60%・均等割1万8682円・賦課限度額17万円です。

令和8年度に新設された子ども・子育て支援金分は、所得割率0.28%・均等割1745円(被保険者1人あたり)+96円(18歳以上の被保険者1人あたり)・賦課限度額3万円です。

大阪市は世帯ごとに定額でかかる「平等割」があり、所得割・均等割・平等割の3方式で計算されます。

「東京と大阪で同じ年収でも、保険料の計算方式そのものが違う」ということは意外と知られていません。平等割の有無だけでも、世帯人数によって負担感が変わってきます。

齊藤 慧
平等割は世帯単位でかかるため、単身世帯より複数人世帯の方が、平等割の割合分だけ相対的に負担が増えます。自治体を比較する際は、料率だけでなく、この平等割の有無も確認しておくとよいでしょう。引っ越し先を検討する際の材料の一つにもなります。

4. 【編集者の視点】

実務上、所得割の計算基礎は「前年の総所得金額から基礎控除43万円を引いた金額」が共通のルールになっています。この基礎控除額は全国共通のため、自治体間で違うのは料率と均等割・平等割の金額だけです。

※本記事は、編集部が各自治体が公表する公式の最新情報を直接確認の上、執筆・検証しています。

5. 編集部試算:年収200万円の単身世帯はいくらになるか

給与収入200万円の場合、給与所得控除(収入×30%+8万円)を適用すると給与所得は132万円になります。そこから基礎控除43万円を引いた所得割の算定基礎額は89万円です。この金額をもとに、大阪市の料率で試算してみます。

医療分は89万円×9.50%=8万4550円に均等割3万4990円と平等割3万3908円を足して15万3448円、支援金分は89万円×3.06%=2万7234円に均等割1万1191円と平等割1万845円を足して4万9270円となります。

子ども・子育て支援金分は89万円×0.28%=2492円に均等割1841円(18歳以上の被保険者1人あたり分)を足して4333円です。あわせると年額約20万7051円(月額換算で約1万7255円)になります。

5.1 【編集部試算:年収200万円・単身世帯(40歳未満・大阪市モデル)】

前提:給与所得控除・基礎控除43万円を適用した算定基礎額89万円をもとに、大阪市の令和8年度料率で編集部が試算2/2

前提:給与所得控除・基礎控除43万円を適用した算定基礎額89万円をもとに、大阪市の令和8年度料率で編集部が試算

出典:大阪市『国民健康保険料』大阪市『子ども・子育て支援金制度が創設されます』を基に編集部試算

  • 医療分:89万円×9.50%+均等割3万4990円+平等割3万3908円=15万3448円です
  • 支援金分:89万円×3.06%+均等割1万1191円+平等割1万845円=4万9270円です
  • 子ども・子育て支援金分:89万円×0.28%+均等割1841円=4333円です
  • 合計(年額):医療分・支援金分・子ども・子育て支援金分をあわせて約20万7051円です

この試算はあくまで大阪市の料率にもとづく一例です。東京23区など平等割のない自治体では、世帯人数によってはこれより低くなる場合もあります。実際の金額は、お住まいの自治体の料率で確認してください。

齊藤 慧
「年収200万円ならこれくらい」という目安を知っておくだけで、自治体からの通知書が届いたときに、金額が妥当かどうかを自分でも確認しやすくなります。通知書の内訳と照らし合わせてみてください。思わぬ計算ミスに気づけることもあります。

6. 【編集者の視点】

実務上、賞与(ボーナス)がある場合は、社会保険と違って国民健康保険料には賞与分の追加徴収という仕組みがありません。年間の所得をもとに保険料が決まるため、賞与の有無は所得割の金額に反映される形で影響します。

7. 保険料には上限がある(賦課限度額)

東京都豊島区の公式情報によると、令和8年度の賦課限度額は、医療分67万円・支援金分26万円・介護分17万円・子ども・子育て支援金分3万円で、合計113万円が上限です。所得がどれだけ高くても、この金額を超えて保険料が課されることはありません。

「高所得者ほど保険料が青天井に増える」と思われがちですが、実際には賦課限度額という上限が設けられており、一定の所得を超えると保険料の増加は頭打ちになります。

8. まとめ

  • 国民健康保険料は医療分・支援金分・介護分・子ども子育て支援金分の合計で決まり、自治体ごとに料率や計算方式が異なります。
  • 所得割の算定基礎は前年の総所得金額から基礎控除43万円を引いた金額で、これは全国共通です。
  • 令和8年度から新設された「子ども・子育て支援金分」も、既存の3区分に加えて保険料に含まれます。
  • 保険料には賦課限度額という上限があり、所得が高くても際限なく増え続けるわけではありません。

国民健康保険料の金額は、住んでいる自治体の料率次第で変わります。まずはお住まいの自治体の公式サイトで料率を確認し、この記事の計算の流れに当てはめてみると、おおよその金額感がつかめます。

引っ越しや転職のタイミングで保険料が変わる場合も、この記事の計算の仕組みを知っておけば、通知された金額が妥当かどうかを自分で確認する手がかりになります。

9. よくある質問

9.1 Q. 国民健康保険料はどうやって決まりますか。

A. 医療分・後期高齢者支援金分・介護分(40〜64歳のみ)に加え、令和8年度から新設された子ども・子育て支援金分の合計で決まり、それぞれ所得割・均等割・平等割(自治体により有無が異なる)を組み合わせて算出されます。

9.2 Q. 年収200万円の場合、保険料はいくらくらいになりますか。

A. 大阪市の令和8年度料率で試算すると、単身世帯(40歳未満)で年額約20万7051円です。自治体によって料率が異なるため、あくまで目安としてご覧ください。

9.3 Q. 「子ども・子育て支援金分」とは何ですか。

A. 令和8年度から新設された区分で、子育て支援施策の財源として、全世代・全経済主体が所得に応じて負担する仕組みです。18歳未満の被保険者は均等割が10割軽減されます。

9.4 Q. 国民健康保険料に上限はありますか。

A. あります。賦課限度額という上限が設けられており、東京23区の令和8年度は医療分・支援金分・介護分・子ども子育て支援金分をあわせて113万円が上限です。

9.5 Q. 東京と大阪では、保険料の計算方式は同じですか。

A. 異なります。東京23区は所得割・均等割の2方式、大阪市は所得割・均等割・平等割の3方式で計算されます。

9.6 Q. 所得割の計算基礎はどう決まりますか。

A. 前年の総所得金額から基礎控除43万円を引いた金額が算定基礎額になり、これに各自治体の所得割率を掛けて計算します。

参考資料

齊藤 慧