9月から10月にかけては、次の年金の定期支払日を控えて、入ってくる額と出ていく額を突き合わせやすい時期にあたります。年金の一覧表を開くと、まず目に入るのは受け取れる金額のほうです。ただ、実務でご相談を受けていて感じるのは、そこで確認が止まってしまい、その額で暮らしたときに毎月どれだけ足りないのか、手元のお金がその不足を何年ぶん埋められるのかまで数えている方は多くない、ということです。ここでは、公的年金の平均受給額と、65歳以上の無職世帯の家計収支を並べ、両者の差から手元のお金の寿命を出す道すじをみていきます。

橋本 優理
受け取れる額と、暮らしにかかる額は、別々の紙に書かれていることがほとんどです。片方だけを眺めている間は、足りるのか足りないのかという問いに答えが出ません。まずは、この2つを同じ紙の上に並べて、差がいくらになるのかを出すところから始めてみてください。

なお、公的年金の平均受給額と高齢者世帯の家計収支に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説

1. 公的年金が「2階建て」と呼ばれる形は、受け取る額のどこに効いてくるのか

手元のお金が何年もつのかを数えるには、まず毎月いくら入ってくるのかを固める必要があります。その入ってくる額は、現役時代にどちらの制度に、どれだけの期間加入していたかで決まります。公的年金が2階建てにたとえられるのは、全員が入る土台の部分と、働き方によって上に乗る部分の2つでできているためです。

制度の全体像から手取りの目減りまでを通して押さえたいときは、【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説でくわしく解説しています。

厚生年金と国民年金の仕組み1/7

厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

1.1 1階にあたる国民年金は、誰が加入していくら納める仕組みなのか

土台となる1階部分が国民年金(基礎年金)です。加入する人の範囲と、納める保険料、受け取れる額は次のように定められています。

  • 加入対象:原則として日本国内に居住する20歳以上60歳未満のすべての人
  • 保険料:国民年金保険料は所得にかかわらず一律ですが、年度ごとに見直されます(2026年度は月額1万7920円)
  • 受給額:保険料を40年間(480カ月)すべて納付すると、満額を受け取ることができます(2026年度は月額7万608円)

加入者は第1号から第3号までの区分に分かれ、このうち第2号にあたる人が、次にみる厚生年金にも加入する形になります。会社員として厚生年金の保険料を納めている間は、国民年金の保険料を別に払う必要はありません。会社員に扶養されている配偶者などの第3号についても、個人として保険料を納める義務は生じない仕組みです。

1.2 2階にあたる厚生年金は、どんな働き方の人が上乗せで加入するのか

1階の上に乗るのが厚生年金です。こちらは加入する人の範囲も、納める額も、働き方によって変わります。

  • 加入対象:会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所(※1)に勤務し、一定の要件を満たす人が国民年金に上乗せして加入
  • 保険料:収入に応じて厚生年金保険料が変動します。ただし、保険料計算の基となる収入には上限が設けられています(※2)
  • 受給額:加入していた期間や納付した保険料額によって個人差が生じます

※1 特定事業所:1年のうち6カ月以上、適用事業所における厚生年金保険の被保険者(短時間労働者を除く、共済組合員を含む)の総数が51人以上となる見込みの企業などを指します。

※2 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)と標準賞与額(上限150万円)に保険料率を乗じて算出されます。

2階部分の額に個人差が出るのは、納めた保険料と加入していた期間がそのまま計算に入るためです。あとでみる平均額の幅が広いのも、ここが理由になっています。

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1階と2階のどちらが自分の年金の中心になっているのかは、これまでの働き方をたどれば見当がつきます。勤めていた期間が長い方は2階が厚く、自営やパートの期間が長い方は1階が中心です。ここが分かると、次にみる平均額のうち、どの数字を自分の物差しにすればよいのかが決まります。

2. 2026年度の年金は、いつ、何カ月分がまとめて振り込まれるのか

入ってくる額を月あたりに直すときにつまずきやすいのが、振り込みの回数です。公的年金は原則として偶数月の15日に支払われ、その日が土日や祝日にあたる場合は直前の金融機関の営業日に前倒しされます。しかも、支払われるのは前月と前々月の2カ月ぶんをまとめた額です。

2026年度の年金支給日カレンダー2/7

2026年度の年金支給日カレンダー

出所:日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」を参考にLIMO編集部作成

2.1 2026年度の支給日は、それぞれどの月の分にあたるのか

  • 2026年4月15日:2026年2月・3月分
  • 2026年6月15日:2026年4月・5月分
  • 2026年8月14日:2026年6月・7月分
  • 2026年10月15日:2026年8月・9月分
  • 2026年12月15日:2026年10月・11月分
  • 2027年2月15日:2026年12月・2027年1月分

たとえば10月15日に振り込まれるのは、8月と9月の2カ月ぶんです。毎月決まった日に給与が入っていた頃と比べると、お金の入り方の周期が変わります。通帳に入った額をそのまま1カ月の収入として数えてしまうと、暮らしにかけられる額を2倍に見積もることになりかねません。月あたりに直す一手間が、あとの計算の土台になります。

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2カ月ごとの入金は、生活費の残り方の見え方も変えます。振り込みの翌月は残高に余裕があるように見え、その次の月に足りなくなる、という波が出やすいためです。数える単位を「1回の振込額」ではなく「2で割った月あたりの額」に揃えておくと、あとの差額の計算がぶれません。

3. 厚生年金と国民年金の平均受給額には、どれだけの開きがあるのか

ここからは、実際に支払われている金額をみていきます。年金の額は加入していた記録によって決まるため、同じ制度に入っていた人の間でも差が出ます。平均という1つの数字だけを見て自分に当てはめると、見込みが上にも下にもずれることがあるため、あわせて分布も確かめます。

3.1 厚生年金の平均年金月額は、全体と男女でどこまで違うのか

厚生年金の平均額(全年齢)3/7

厚生年金の平均額(全年齢)

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 〈全体〉平均年金月額:15万289円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

※国民年金の金額を含みます。

男性と女性では、平均で約6万円の開きがあります。この金額は1階の国民年金を含んだ合計であり、上乗せ分だけの数字ではありません。

3.2 厚生年金の受給額は、1万円ごとに区切るとどこに人が集まっているのか

  • ~1万円:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

人数がいちばん多いのは10万円以上11万円未満の帯で、そこから20万円手前までゆるやかに人が並んでいます。1万円に届かない人から30万円を超える人までが同じ表のなかにいるわけで、平均の15万289円はあくまで真ん中あたりを示す目印にすぎません。手元のお金の寿命を数えるときに使うべき数字は、この平均ではなく、自分の記録から出た見込み額のほうです。

3.3 国民年金の平均年金月額は、男女でどれだけ差が出ているのか

国民年金の平均額(全年齢)4/7

国民年金の平均額(全年齢)

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

1階部分だけでみると、全体も男女別もそろって5万円台に収まっています。厚生年金でみられたような大きな男女差は、ここでは出ていません。

3.4 国民年金の受給額は、1万円ごとに区切るとどの帯に集まっているのか

  • 1万円未満:5万1828人
  • 1万円以上~2万円未満:21万3583人
  • 2万円以上~3万円未満:68万4559人
  • 3万円以上~4万円未満:206万1539人
  • 4万円以上~5万円未満:388万83人
  • 5万円以上~6万円未満:641万228人
  • 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
  • 7万円以上~:299万7738人

分布の幅は1万円未満から7万円以上までで、厚生年金と比べるとかなり狭い範囲に収まります。納めた期間が同じであれば同じ額になり、満額という上限も決まっているためです。人数がいちばん集まっているのは6万円以上7万円未満の帯で、満額に近いところまで納めた人が多いことがうかがえます。裏を返せば、1階だけが収入という場合、毎月入ってくる額はおおむね6万円台に収まるということでもあります。

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ご相談で最初にうかがうのは、平均と比べて多いか少ないかではなく、その額で毎月いくら足りなくなるのか、という順番です。平均より多くても足りない方はいますし、平均より少なくても収まっている方もいます。比べる相手は他の人ではなく、ご自身の生活費のほうだと考えてみてください。

4. 平均年収と加入年数から、65歳からの受給額はどのあたりに来るのか

自分の見込み額をまだ確かめていない段階では、現役時代の平均年収から大まかな見当をつける方法があります。年収と加入年数が分かれば、2階部分の目安がおおよそ計算できるためです。

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毎年の誕生月に届く「ねんきん定期便」を、将来受け取れる額そのものだと受け取っている方にお会いします。50歳未満の方に届くものに載っているのは、その時点までの加入実績に応じた金額です。加えて、定期便にも早見表にも載っているのは額面で、そこから税や社会保険料が引かれます。手元のお金の寿命を数えるときは、この目減りぶんも見込んでおいてください。

4.1 平均年収200万円から700万円までで、受け取れる月額はどう変わるのか

下の表は、20歳から60歳までの40年間ずっと厚生年金に加入し、国民年金も満額を受け取る前提で、記載の平均年収で働き続けた場合の月額(額面)を並べたものです。

平均年収 厚生年金(月額換算) 国民年金(満額) 合計受給額(月額・額面)
200万円 約3.7万円 約7.1万円 約10.8万円
300万円 約5.5万円 約7.1万円 約12.6万円
400万円 約7.3万円 約7.1万円 約14.4万円
500万円 約9.1万円 約7.1万円 約16.2万円
600万円 約11.0万円 約7.1万円 約18.1万円
700万円 約12.8万円 約7.1万円 約19.9万円

※あくまで概算であり、実際の受給額は加入時期やボーナスの有無、今後の制度改正によって変動します。

年収が100万円上がるごとに、月額でおおむね1.8万円ずつ増えていく形です。ただし、これは40年間ずっと同じ年収だった場合の並びなので、転職や休業で年収が動いた方の実際の額とはずれます。

4.2 自分の見込み額を確かめるには、どの仕組みを使えばよいのか

年収が変わってきた方の見込み額は、日本年金機構の「ねんきんネット」で確かめられます。マイナポータルからログインすると、これまでの加入記録をもとに、これから先の働き方の条件を細かく置いたうえで試算できる仕組みです。60歳まで今の給与で働き続けた場合といった条件も自分で設定できるため、早見表の目安より一段精度の高い数字が出てきます。ここで出た額が、後半の計算で使う「毎月入ってくる額」になります。

5. 65歳以上・夫婦のみの無職世帯では、収入と支出がどれだけ離れているのか

入ってくる額の見当がついたら、次は出ていく額です。ここからは、総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」から、65歳以上の無職世帯の1カ月あたりの収支をみていきます。まずは夫婦のみの世帯です。

5.1 夫婦のみの無職世帯には、毎月いくら入ってきているのか

  • 実収入:25万4395円
  • うち社会保障給付:22万8614円 ※主に年金

入ってくるお金の大半が年金で占められていることが分かります。

5.2 夫婦のみの無職世帯からは、毎月いくら出ていっているのか

  • 実支出:29万6829円
  • うち消費支出:26万3979円

このうち消費支出が、いわゆる生活費にあたる部分です。内訳は次のとおりです。

  • 食料:7万8964円
  • 住居:1万7739円
  • 光熱・水道:2万3540円
  • 家具・家事用品:1万1237円
  • 被服及び履物:5354円
  • 保健医療:1万7941円
  • 交通・通信:3万1325円
  • 教育:0円
  • 教養娯楽:2万6538円
  • その他の消費支出:5万1341円
    • うち諸雑費:2万2047円
    • うち交際費:2万3257円
    • うち仕送り金:1135円

残りは税金と社会保険料にあたる非消費支出で、その額は3万2850円です。内訳は次のように分かれています。

  • 直接税:1万2547円
  • 社会保険料:2万296円

入ってくる25万4395円に対して、出ていくのが29万6829円です。差し引くと、毎月4万2434円が足りない計算になります。この4万2434円が、後半の計算で使う「毎月埋める額」です。なお、住居費が1万7739円にとどまっているのは、持ち家で住宅ローンを終えた世帯が平均を押し下げているためと考えられます。家賃やローンの返済が続いている場合、不足はこの数字より大きくなります。

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保険代理店で約300組のライフプランニングに携わってきた立場から申し上げると、この不足額をご自身の数字で出すときは、平均の内訳をそのまま写さないでください。住まいの形と保健医療の額は、世帯ごとの差がいちばん大きいところです。直近1年ぶんの支出を12で割った額を使うと、平均より現実に近い数字になります。

6. 65歳以上・単身の無職世帯では、不足額はどこまで小さくなるのか

ひとり暮らしの場合はどうなるかも、同じ調査で確かめておきます。

6.1 単身の無職世帯には、毎月いくら入ってきているのか

  • 実収入:13万1456円
  • うち社会保障給付:12万212円 ※主に年金

6.2 単身の無職世帯からは、毎月いくら出ていっているのか

  • 支出:16万1435円
  • うち消費支出:14万8445円

生活費にあたる消費支出の内訳は次のとおりです。

  • 食料:4万2545円
  • 住居:1万1416円
  • 光熱・水道:1万5565円
  • 家具・家事用品:6069円
  • 被服及び履物:3049円
  • 保健医療:8388円
  • 交通・通信:1万3601円
  • 教育:0円
  • 教養娯楽:1万6132円
  • その他の消費支出:3万1681円
    • うち諸雑費:1万4052円
    • うち交際費:1万6956円
    • うち仕送り金:591円

非消費支出の平均額は1万2990円で、内訳は次のようになっています。

  • 直接税:7072円
  • 社会保険料:5912円

入ってくる13万1456円に対して出ていくのが16万1435円ですから、毎月2万9980円の不足です。夫婦世帯の4万2434円より小さい額ですが、収入そのものも半分程度なので、埋めなければならない割合でみると軽いとは言い切れません。世帯の形が変わると、埋める額も変わります。

7. 収入のすべてを年金で賄っている高齢者世帯は、どれくらいあるのか

不足が出たときに何で埋めているのかを考える前に、そもそも年金だけで暮らしている世帯がどのくらいあるのかを確かめます。厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、高齢者世帯(※)の平均所得のうち「公的年金・恩給」が占める割合は63.5%でした。これに続くのが働いて得た「稼働所得」で25.3%、「財産所得」が4.6%です。さらに「公的年金・恩給を受給している世帯」に絞ると、収入のすべてが公的年金・恩給という世帯は43.4%にのぼります。

※高齢者世帯:65歳以上の人のみで構成されるか、またはこれに18歳未満の未婚の人が加わった世帯を指します。

7.1 総所得に占める公的年金・恩給の割合で、世帯はどのように分かれているのか

高齢者世帯の総所得に占める「公的年金・恩給」の割合別世帯構成7/7

高齢者世帯の総所得に占める「公的年金・恩給」の割合別世帯構成

出所:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況

  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:41.3%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:17.1%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:14.1%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:13.6%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:9.7%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.2%

割合が100%の世帯は41.3%ですから、逆にみれば半数以上の世帯が、年金以外の何かで家計を補っていることになります。補っているものの中身は、働いて得る収入か、手元の資産の取り崩しか、そのどちらかであることがほとんどです。ここで手元の資産が何年ぶんにあたるのかという問いが出てきます。

8. 年金から天引きされるお金には、どんな種類があるのか

差額を計算するときに見落としやすいのが、入ってくる額そのものが額面より少なくなる点です。年金額が一定以上(65歳以上で年額18万円以上など)になると、次のものが年金から直接引かれる形になり、手元に残るのは額面の約80%〜85%にとどまります。

  1. 介護保険料: 65歳以上の全員が対象。市区町村によって金額が異なります。
  2. 国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料): 75歳未満は国保、75歳以上は後期高齢者医療制度の保険料が引かれます。
  3. 所得税および復興特別所得税: 一定の控除額を超えた場合に課税されます。
  4. 個人住民税および森林環境税: 前年の所得に応じて課税されます。

たとえば額面が平均の15万289円だとすると、80%から85%を当てはめた手取りは12万円台にとどまる計算になります。額面のまま差額を出していると、埋めるべき額を2万円から3万円ほど小さく見積もることになり、手元の資産が何年もつのかという答えも長めに出てしまいます。介護保険料の額は市区町村ごとに違うため、正確な数字は住まいの窓口で確かめていただくのが確実です。

橋本 優理
差額を出すときは、額面ではなく引かれたあとの額を使ってください。額面のまま計算すると、不足が実際より小さく出てしまい、手元のお金がもつ年数を長めに見積もることになります。すでに受け取っている方であれば、通帳に振り込まれた額を2で割るのが早道です。

9. 投資以外に、公的年金そのものを増やす手立てにはどんなものがあるのか

不足を小さくする方向として、値動きのある商品を使わずに、公的な制度のなかで受け取る額そのものを増やす選択肢もあります。ここでは3つを取り上げます。

9.1 70歳まで厚生年金に加入し続けると、受け取る額はどこまで動くのか

65歳以降も会社員として働き、厚生年金に加入し続ける方法があります。厚生年金は原則70歳まで加入でき、保険料を納めた期間が延びたぶん、老齢厚生年金の報酬比例部分が増えていきます(上限あり)。働く期間を延ばすと、不足を埋め始める時期そのものも後ろにずれるため、手元の資産が何年もつかという計算では二重に効いてきます。

9.2 受け取り始める時期を後ろにずらす「繰り下げ受給」では、どこまで増えるのか

受給開始年齢は原則65歳ですが、66歳から75歳までの間に遅らせることもできます。1ヶ月遅らせるごとに0.7%増額され、70歳まで遅らせれば42%、75歳まで遅らせれば最大84%の増額です。増えた額は一生涯続きます。ただし、額面が増えれば税や社会保険料の負担も動きますし、待っている間に受け取れなくなるものもあるため、手取りへの影響とあわせて判断する必要があります。

9.3 60歳から65歳までの任意加入で、基礎年金はどこまで満額に近づくのか

20歳から60歳までの間に未納や免除の期間があり、国民年金が満額に届いていない場合には、60歳から65歳になるまでの間に「任意加入制度」で保険料を追加して納めることができます。納めた月数のぶんだけ基礎年金の額が上がるため、1階部分を満額に近づけていく方法の1つです。自分に未納の期間があるかどうかは、加入記録を見れば分かります。

10. 年金と家計についての疑問のうち、迷いやすい3つを確かめる

10.1 Q1. 60歳で定年退職して失業手当を受け取る間、特別支給の老齢厚生年金はどうなるのか

A. 両方を同時に受け取ることはできません。65歳未満の方がハローワークで失業手当(基本手当)の求職の申し込みをすると、その翌月から失業手当の受給が終わるまでの間、特別支給の老齢厚生年金は全額が支給停止になります。これを併給調整といいます。どちらを選ぶほうが手元に残る額が多くなるかは金額しだいなので、申し込みの前に両方の額を出して見比べておきたいところです。

10.2 Q2. 夫が受け取っている加給年金は、妻が65歳になると、その後どう扱われるのか

A. 妻が65歳になって自身の老齢基礎年金を受け取り始めると、夫に支給されていた加給年金は止まります。代わりに、妻の生年月日に応じて、妻自身の老齢基礎年金に「振替加算」として一定額が一生涯上乗せされる仕組みが用意されています。

10.3 Q3. 年金にも税金はかかるのか、確定申告は必要になるのか

A. 公的年金は雑所得として、所得税や住民税の対象になります。ただし、65歳以上で公的年金等の収入が年間205万円未満(65歳未満は年間155万円未満)であれば所得税はかかりません。また、公的年金等の収入が400万円以下で、かつその年金に係る雑所得以外の所得が20万円以下であれば申告が要らなくなる「確定申告不要制度」もあります。源泉徴収された税の還付を受けたい場合などは、申告を行うこともできます。

自分の見込み額が同世代のなかでどのあたりに位置するのかを確かめたいときは、「ふつう」のシニアは年金を月いくらもらってる?60歳代以上の平均額と、無職世帯のリアルな家計収支を公開が参考になります。

11. 【独自試算】貯蓄1000万円と2000万円では、毎月4万2434円の不足を何年埋められるのか

ここまでで、入ってくる額と出ていく額の差が出ました。この差を手元の資産で割ると、資産が何年ぶんにあたるのかという数字が出ます。65歳以上・夫婦のみの無職世帯の不足額4万2434円を、貯蓄1000万円の場合と2000万円の場合で埋めたときに何年もつのかを並べてみます。

前提は次のとおりです。

  • 毎月の不足額は4万2434円で、この先も変わらないものとします。総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」の65歳以上・夫婦のみの無職世帯の実収入25万4395円と実支出29万6829円の差です
  • 取り崩しは65歳から始め、資産は預貯金のまま置いておくものとします。運用による増減は考えません
  • 物価の変動、医療や介護でまとまった出費が出る場合、住まいの修繕費、公的年金の額の改定は織り込みません
  • 年金は毎月同じ額が入ってくるものとして月あたりに直しています
  • 金額と年数はいずれも約・目安であり、保証ではありません

毎月4万2434円を12カ月ぶん積み上げると、1年で50万9208円になります。この額が、資産から毎年減っていくぶんです。

貯蓄1000万円の場合、1000万円を4万2434円で割ると約235カ月です。年に直すと19年7カ月ほどで、65歳から取り崩し始めたとすると84歳を過ぎたあたりで底をつく計算になります。

貯蓄2000万円の場合は、2000万円を4万2434円で割って約471カ月、39年3カ月ほどです。65歳から始めれば104歳ごろまで届く計算です。貯蓄が2倍になると、もつ年数もほぼ2倍の約19年8カ月ぶん伸びる形になります。

同じ資産でも、埋める額が変われば年数は動きます。単身の無職世帯の不足額2万9980円をあてはめると、1000万円では約333カ月で27年9カ月ほど、2000万円では約667カ月で55年7カ月ほどになります。夫婦世帯の場合と比べると、1000万円で8年あまりの差です。毎月の差額が1万円あまり小さくなるだけで、もつ年数はここまで動きます。

ここで見ていただきたいのは、19年や39年という年数そのものではなく、不足額と資産額の2つが決まれば年数が1つに定まる、という関係のほうです。年数が短いと分かった場合でも、打つ手は資産を増やすことだけではありません。毎月の差額を小さくする、働く期間を延ばす、受け取り始める時期を後ろにずらすといった方向も、同じ年数に効いてきます。

なお、この試算は取り崩す資産を預貯金のまま置いた前提で、運用は考えていません。取り崩しながら運用を続ける場合は、値動きによって元本割れが起こることもあり、価格が下がっている時期に引き出すと、同じ金額を得るのに手放す量が増えます。実際の受給額も生活費の内訳も世帯ごとに違いますので、ご自身の見込み額は年金事務所やねんきんネットで、生活費は直近の家計の記録で確かめてから当てはめてください。

12. 平均額と平均的な生活費は、どちらも「そのまま自分に当てはまる数字」ではない

村岸 理美

今回のデータで最も注目していただきたいのは、厚生年金の平均年金月額15万289円に対して、人数がいちばん集まっているのが10万円以上11万円未満の帯だという点です。平均を押し上げているのは15万円から20万円の層の厚みで、平均額と、いちばん人数の多い帯とは別の位置にあります。ご自身がどちらに近いのかで、埋めることになる差額は変わってきます。

数字の適用条件を3つ補っておきます。1つめは、厚生年金の平均年金月額15万289円が令和6年度の実績であり、しかも国民年金の金額を含んだ合計だということです。2階部分だけの金額ではありません。2つめは、この額が額面で、記事にあるとおり介護保険料や医療保険料、税が引かれた後の手取りはこれより少なくなる点です。3つめは、家計調査の実支出29万6829円が全国の平均であり、住居費が1万7739円と、住宅ローンを終えた持ち家の世帯が多く含まれた水準になっている点です。賃貸にお住まいの方や返済が残っている方は、不足額をご自身の数字で置き直す必要があります。

記事中の試算のように、不足額と資産額が決まれば年数は1つに定まります。ただ、その年数は前提の置き方でいくらでも動きます。試算では運用も物価の変動も織り込んでいませんし、医療や介護でまとまった支出が出る場面も入っていません。年数が長く出たからといって、そのまま安心できる数字とは限らないということです。繰り下げ受給についても、増額率だけでなく、待っている間に加給年金(特別加算込みで年間約41万円)が支給されないことなど、あわせて確かめておきたい条件があります。

CFPとして家計相談を受けるなかでも、平均額をご自身の見込み額だと思い込んだまま計画を進めてしまうケースを見てきました。ファイナンシャル・プランナーとしてお伝えしたいのは、比べる相手を他人の平均ではなく、ご自身の記録に置き換えることが大切だということです。ねんきん定期便やねんきんネットで見込み額を確かめ、直近1年間の支出を12で割った額を並べる。この2つの数字がそろったところから始めてみましょう。