2026年9月現在、政府による秋の経済対策に向けた議論が本格化しており、長引く物価高への支援策として、新たな給付金や「給付付き税額控除(税金を引き下げ、引ききれない分は現金で給付する仕組み)」の導入検討が進められています。今回は、意外と知られていない非課税のボーダーラインの目安と、特定口座の損失申告が判定に与える影響について、3つのポイントで分かりやすく解説します。

橋本 優理
戻ってくる税額と、判定が動いたときに手放すものは、どちらも同じ年に起こります。片方だけを見て決めてしまうと、あとから順序を入れ替えられません。まずはご自身の世帯の線がどこにあるのかを、収入の種類ごとに確かめておくところから始めてみてください。

なお、住民税非課税世帯の収入基準と優遇制度に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度!制度の基本とファクトを網羅した完全ガイド
【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度!制度の基本とファクトを網羅した完全ガイド

1. 住民税非課税世帯が受けられる「5つの優遇」と自治体の独自支援

所得の水準が一定の線を下回る世帯は、住民税が課されない世帯として扱われ、公的な支援の対象になることがあります。物価の上昇や感染症への対応をきっかけに現金が配られた場面が知られていますが、軽くなるのは一時的な給付だけではありません。保険料の負担を下げる仕組みや、学費に関わる制度のように、年単位で続いて効いてくるものも用意されています。

収入基準の一覧と、優遇制度それぞれの中身は、【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度!制度の基本とファクトを網羅した完全ガイドにまとめています。

住民税非課税世帯を対象にした優遇措置の一覧1/7

住民税非課税世帯を対象にした優遇措置を一覧にした表

LIMO編集部作成

1.1 国民健康保険料の「応益割」は、どの割合まで下がるのか

国民健康保険料のうち、所得の大小によらず頭数と世帯数でかかる部分が応益割です。この部分について、次の減額が用意されています。

応益分保険料(均等割・平等割)の「7割・5割・2割」のいずれかを減額

7割なのか2割なのかは、世帯の所得の水準によって分かれます。同じ非課税世帯という言葉でくくられていても、下がり方はひと通りではありません。

1.2 介護保険料の減額は、誰が対象で、どこが自治体に委ねられているのか

  • 第1号被保険者(65歳以上)が対象。減額される金額は自治体ごとに異なる

対象になる年齢は全国で共通ですが、いくら下がるかは住んでいる市区町村の設定によります。金額の見当をつけたいときは、居住地の介護保険の担当窓口で段階の一覧を見せてもらうのが早道です。

1.3 国民年金保険料については、どういう扱いを選べるのか

  • 全額免除・一部免除・納付猶予のいずれか

納めない期間をそのままにするのと、免除や猶予の手続きを踏んでおくのとでは、あとから受け取る年金額の計算が変わってきます。手続きの要否は年金事務所で確かめておきたいところです。

1.4 保育料の負担は、どの年齢まで無償の扱いになるのか

  • 0歳から2歳までの保育料が無償化
  • これにより、0~5歳までの保育料が無料になる

1.5 高等教育の修学支援新制度では、何が免除され、何が給付されるのか

  • 授業料・入学金の免除または減額
  • 返還を要しない給付型奨学金
  • 上記により大学、短期大学、高等専門学校、専門学校を無償化

ここに並べた5つは全国で共通する仕組みですが、市区町村が独自に足している支援もあります。まずは、どういう状態を「住民税が課されない」と呼んでいるのかを整理します。

2. 「住民税非課税」と呼ばれる状態は、税のどの部分が消えていることなのか

住民税は都道府県と市区町村に納める地方税で、地域の行政サービスを支える財源にあてられています。個人にかかる部分は、次の2つの層に分かれています。

2.1 住民税が「均等割」と「所得割」の2つでできている理由を確認

個人住民税の「均等割」と「所得割」の2層構造2/7

個人住民税が均等割と所得割の2層で構成されていることを示した図

出所:総務省「個人住民税」

  • 均等割:所得に関係なく一律に課税される部分
  • 所得割:所得に応じて税額が決まる部分

この2つのどちらも発生していない状態が「住民税非課税」です。そして、世帯にいる人の全員がその状態であるときに、その世帯は住民税非課税世帯として扱われます。ひとりだけが該当していても世帯としては届かない、という点が、名義や口座の分け方を考えるときに効いてきます。

なお、所得割だけが非課税になる場合もあります。どちらの状態で支援の対象になるかは市区町村ごとに違うため、詳しいところは居住地の窓口で確かめる必要があります。

ここで押さえておきたいのは、受け取っているお金のすべてが判定の計算に入るわけではないという点です。遺族年金や障害年金は非課税所得と定められているため、判定に使う所得の計算からは外れます。逆に、株式などの利益は、申告するかどうかによって計算に入るかどうかが変わります。金額そのものは同じでも、手続きの選び方で判定の側の数字が動くわけです。

橋本 優理
「年金が出ているから自分は対象外だ」と受け取って、確認そのものをやめてしまう方にお会いします。受け取っているお金の種類ごとに、判定に入るものと入らないものが分かれています。まずは通知書と源泉徴収票を並べて、どれが計算に入る側なのかを分けてみてください。

3. 住民税非課税世帯となる主な条件とは

住民税がかからない主な条件は、次のいずれかに当てはまる場合とされています。

  1. 生活保護を受給している
  2. 障害者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親で、前年所得が135万円以下
  3. 前年所得が自治体の定める基準額を下回る

1と2は全国で同じ扱いですが、3の基準額は市区町村ごとに決められています。つまり、同じ所得であっても、住んでいる場所によって内側か外側かが分かれます。株式の損益を申告するかどうかで悩む場面では、この3番目の線がどこにあるのかを先に押さえておく必要があります。

3.1 給与だけの人と年金だけの人で、非課税の基準はどこまで違うのか

ここからは、兵庫県神戸市の設定を例にとって、基準の形を確かめます。

神戸市における住民税(市県民税)がかからない人の基準3/7

神戸市で住民税がかからない人の所得基準を示した表

出所:神戸市「住民税(市県民税)がかからない人」

35万円×(本人+同一生計配偶者(※)+扶養親族数)+10万円+21万円

この式の21万円は、同一生計配偶者または扶養親族がいる場合にだけ加算されます。また、同一生計配偶者とは、生計を一にし、前年の合計所得金額が58万円以下の配偶者を指します。式で求めた額を前年の所得が超えていなければ、住民税(市県民税)は課税されません。

ここでいう所得は、受け取った金額そのものではなく、そこから各種の所得控除を差し引いたあとの数字です。同じ200万円でも、給与として受け取ったのか年金として受け取ったのかで、差し引ける額が違うため、判定に使う所得は別の数字になります。次の章では、この式を実際の年収に置き換えます。

4. 神戸市の基準を実際の年収に置き換えると、いくらまでが基準の範囲内なのか

非課税の線は、世帯にいる人数だけでなく、収入の種類によっても位置が変わります。神戸市の基準を収入の額に読み替えると、次のようになります。

神戸市の基準による住民税非課税世帯の収入目安4/7

神戸市の基準で住民税非課税世帯に該当する収入の目安を示した表

出所:神戸市「住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?」

ひとり暮らしの場合、給与と年金でどこまでが基準の範囲内なのか

合計所得金額が45万円以下になる方が対象です。

  • 給与収入のみで収入金額が110万円以下
  • 年金収入のみで収入金額が155万円以下(65歳以上)
  • 年金収入のみで収入金額が105万円以下(65歳未満)

配偶者や扶養親族が1人いる場合

合計所得金額が101万円以下になる方が対象です。

  • 給与収入のみで収入金額が166万円以下の方
  • 年金収入のみで収入金額が211万円以下の方(65歳以上)
  • 年金収入のみで収入金額が171万3334円以下の方(65歳未満)

ひとり暮らしであれば、給与だけの場合は年収100万円以下、65歳以上で年金だけの場合は155万円以下が一つの目安になります。配偶者や扶養親族がいれば線は上がり、65歳以上の夫婦で年金だけなら年収211万円程度までが視野に入ります。

後半で組む試算では、この155万円と合計所得45万円という組み合わせを土台に置きます。年金収入155万円がちょうど合計所得45万円にあたるので、そこに株式の利益が1万円でも乗れば線を越えるという、上限ぎりぎりの位置になるからです。

5. 基準を1万円超えたときに、手取りが減って見えるのはなぜなのか

この制度で意識しておきたいのが、収入が境界をまたいだときに起こる実質的な負担増です。仕組みを知らないまま線を越えると、増えた収入よりも手放したものが大きい、という感覚だけが残ります。

5.1 働く時間を増やしたことが、かえって重く出る場面を確認

勤務時間を増やし、年収を少し押し上げた結果、非課税の対象から外れて優遇や給付が届かなくなる、という順序で起こります。増えた収入の額よりも、外れたことで失った軽減の合計が大きくなると、働いた時間に対する手取りの伸びが鈍く感じられます。年金の繰下げによって受け取る額が増えた場合も、境界をまたぐという点では同じ形になります。

5.2 額面ではなく手取りで見たときの分岐点はどこにあるのか

額面の収入ではなく、税と社会保険料を引いたあとに残る額で組み立てることです。配偶者の扶養の範囲に収めるか、社会保険料の負担増(約20万〜30万円)を上回って手取りが実質的に増える水準(目安として年収150万〜153万円以上)まで進めるか、という二択になります。

社会保険の壁(106万円や130万円)を少しだけ越える働き方は、手取りが目減りしたり伸び悩んだりする原因になります。時給と勤務時間、勤め先の規模を踏まえて、自分の分岐点がどこにあるのかを先に押さえておきたいところです。

橋本 優理
境界をまたぐ動きは、働き方だけで起こるものではありません。株式の損益を申告するという手続きも、同じ向きに効きます。国民健康保険料や介護保険料の均等割の軽減が縮んだり、高額療養費の自己負担の上限が上がったり、低所得の世帯に向けた臨時の給付から外れたりと、跳ね返る先はいくつもあります。ご相談では、戻る税額と、外れることで動く負担を、同じ1枚の紙に並べていただくようにしています。

6. 退職した年に非課税へ切り替わらないのは、どの時点の所得を見ているからなのか

もう一つ注意しておきたいのが、いつから非課税世帯として扱われるのかという時期の問題です。

6.1 住民税の計算に使われるのは、いつからいつまでの所得なのか

住民税は、その年の1月1日から12月31日までの所得をもとに計算され、翌年の6月から課税が始まる形です。したがって、今の収入がゼロであっても、前年の収入が線を越えていれば、今年は課税されている世帯として扱われます。株式の利益を申告した年についても、影響が出るのはその翌年の判定からになります。

6.2 退職1年目に現役並みの負担が残るのは、どういう仕組みなのか

たとえば3月に定年退職し、4月から年金だけの生活に入ったとします。4月以降の収入は大きく下がりますが、退職した年の6月ごろから納める住民税は、会社員だった前年の給与をもとに計算された額です。

そのため、年金だけの生活になってその年の所得が線を下回ったとしても、住民税が非課税に切り替わるのは、退職した年の翌々年の6月以降になります。退職して最初の数カ月から1年ほどは、前年の所得をもとにした住民税と国民健康保険料の納付が続くため、手元の現金をあらかじめ確保しておく必要があります。

6.3 配偶者と死別して単身になったとき、判定はどう変わるのか

この時差は、夫婦のどちらかが亡くなった場合にも効いてきます。世帯主が課税されていて配偶者が非課税だった場合、世帯としては課税されている扱いです。世帯主が亡くなり、残った方が単身の世帯になれば、その方自身の前年所得が線の内側であれば非課税世帯になります。

ただし、世帯の状況が変わったときの国民健康保険料の計算のやり直しや、給付金がどの時点の世帯と所得で判定されるのかという扱いは複雑です。大きな出来事があったときは、自分の世帯がいつから対象になるのかを、市区町村のホームページで確かめたうえで窓口に相談しておきたいところです。

橋本 優理
前年の所得で決まるという点は、損の申告を考えるときに使える面もあります。申告した年の影響が出るのは翌年の判定からなので、どの年に何を申告するかを組み立てる余地があるということです。ご自身の年金の額と、その年に確定した損益を年ごとに書き出して、どの年が線に近いのかを見ておいてください。

7. 年齢が上がるほど課税されている世帯の割合が下がるのはなぜなのか

厚生労働省「令和6年 国民生活基礎調査」から、年代ごとに住民税が課税されている世帯の割合をみていきます。

住民税課税世帯の年代別割合5/7

住民税が課税されている世帯の割合を年代別に示した表

出所:厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」(第131表)をもとにLIMO編集部作成

  • 29歳以下:63.0%
  • 30〜39歳:87.5%
  • 40~49歳:88.2%
  • 50~59歳:87.3%
  • 60~69歳:79.8%
  • 70~79歳:61.3%
  • 80歳以上:52.4%
  • 65歳以上(再掲):61.1%
  • 75歳以上(再掲):54.4%

※ 全世帯数には、非課税世帯及び課税の有無不詳の世帯を含む
※ 総数には、年齢不詳の世帯を含む
※ 住民税課税世帯には、住民税額不詳の世帯を含む

30代から50代では9割近くが課税されている世帯ですが、65歳以上では61.1%、75歳以上では54.4%まで下がります。年齢が上がるにつれて課税されている世帯の割合が減っていく形です。

高齢期になると収入の中心が給与から年金へ移り、水準そのものが下がる傾向があります。加えて、65歳以上には公的年金等控除が設けられており、遺族年金は非課税所得として扱われます。こうした仕組みが重なるため、高齢の世帯は非課税世帯に該当しやすい構造になっています。

言い換えると、この年代では線の近くにいる世帯が多いということです。株式の損益をどう申告するかという判断が判定に届きやすいのも、この位置関係によります。

8. 収入のすべてを年金で賄っている世帯は43.4%、この数字は何を示しているのか

厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金を受け取っている世帯のうち、収入のすべてを年金で賄っている世帯は43.4%でした。裏を返せば、半数を超える世帯は年金以外の収入も組み合わせて暮らしていることになります。

高齢者世帯の総所得に占める公的年金・恩給の割合6/7

高齢者世帯の総所得に占める公的年金・恩給の割合を世帯構成別に示したグラフ

出所:厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査の概況(所得の状況)」図11をもとにLIMO編集部作成

  • 20%未満:4.2%
  • 20〜40%未満:9.7%
  • 40〜60%未満:13.6%
  • 60〜80%未満:14.1%
  • 80〜100%未満:17.1%
  • 100%(すべてが公的年金・恩給):41.3%

この分布から読み取れるのは、公的年金・恩給を受け取っている高齢者世帯のうち、総所得の80%以上を年金に頼っている世帯が58.4%、すべてを年金で賄っている世帯が41.3%を占めているという点です。

年金以外の収入がある世帯が半数を超えるということは、その収入の中身によって判定の側の数字が動く世帯も同じだけあるということです。株式の売却で得た利益や、それを申告するかどうかの選択が、そのまま判定に関わってきます。

9. 自治体が独自に用意している支援には、どれくらいの幅があるのか

国の制度として整えられているものに加えて、市区町村が独自に設けている優遇もあります。同じ非課税世帯であっても、住んでいる場所によって受け取れるものが違うため、国の給付や減税だけを見て判断すると取りこぼしが出ます。

9.1 水道料金や下水道使用料を減額している自治体を確認

非課税世帯や低所得の世帯を対象に、水道料金や下水道使用料を下げる制度を設けている自治体があります。たとえばさいたま市では、市民税・県民税が非課税の世帯を対象に、水道料金と下水道使用料の減額制度が用意されています。(出所:さいたまこそだてWEB

水道光熱費は毎月出ていく固定費なので、この種の減額は年単位で効き続けます。

9.2 ごみ袋の配布や移動にかかる費用の助成もあるのか

独自の支援は公共料金だけにとどまりません。地域によっては、次のような形がとられています。

  • 指定ごみ袋の無料配布
  • 高齢者向けバス乗車券の助成
  • タクシー利用券の交付
  • 外出支援の交通費補助

高齢の世帯では通院や買い物にかかる移動費が家計に効きやすいため、交通の支援が暮らしを支える場面があります。

9.3 災害時の見舞金や独自の給付金につながる場合を確認

物価の上昇への対応として、自治体が独自に給付を行う例も増えています。水道の基本料金の減免や生活支援の給付など、中身は地域によって大きく変わります。向日市では物価高騰対策として水道基本料金の減免が実施されました。自然災害が起きたときには、非課税世帯や低所得の世帯を対象に見舞金や生活再建の支援を上乗せする自治体もあります。

9.4 国の制度だけで判断すると、何を取りこぼすのか

非課税世帯向けの支援というと、国の給付金や保険料の軽減に目が向きます。ところが実際には、自治体独自の支援のほうが長い期間にわたって家計を支えている場合もあります。同じ収入であっても受け取れるものが地域で違うので、非課税と判定されたら、市区町村のホームページや福祉の窓口で使える制度を一度洗い出しておく必要があります。

10. 直近の経済対策のなかで、非課税世帯はどう位置づけられてきたのか

ここ数年の経済対策を並べると、対象の広さと手法が動いてきたことが分かります。以前は非課税世帯への現金給付が中心でしたが、いまは減税や子育て支援を組み合わせた形へ広がりつつあります。

10.1 2024年の定額減税では、1人あたりいくらが軽減されたのか

2024年の経済対策では、物価の上昇による負担をやわらげる目的で定額減税が実施されました。所得税3万円と住民税1万円を合わせた1人あたり4万円が減税の対象となり、夫婦と子ども2人の4人世帯であれば合計16万円分の軽減を受けられる形でした。給与所得者については、2024年6月以降の給与から順に反映されました。

定額減税そのものは一度限りの措置でしたが、税の負担を直接下げる手法は今後の対策でも選択肢に挙げられるとみられています。

10.2 子育て世帯に向けた支援は、どこまで広がってきたのか

近年は、低所得の世帯だけでなく、子育て世帯全体を対象にした支援も進められています。こども家庭庁による「物価高対応子育て応援手当」では、18歳以下の子どもを養育する世帯への給付が行われました。

物価高対応子育て応援手当の制度概要7/7

物価高対応子育て応援手当の制度概要を示した表

出所:こども家庭庁「物価高対応子育て応援手当」

非課税世帯だけを対象にするのではなく、子育て世帯へ幅広く届ける点が、この給付の特徴でした。

10.3 2026年以降に議論されている「給付付き税額控除」はどういう仕組みなのか

今後の制度として挙がっているのが「給付付き税額控除」です。まず税額控除で負担を下げ、それでも控除しきれない分は現金給付で補うという組み立てで、低所得の世帯や非課税世帯を含む幅広い層への支援を目的に検討が進められています。一時的な給付だけに頼らず、税制を使った継続的な支援へ重心を移していく可能性が指摘されています。

この仕組みがいつから始まり、いくら受け取れる想定なのかという整理は、【2026年8月最新】給付付き税額控除とは?いつから・いくらもらえる?「給付一本化」への転換と今後のスケジュールでくわしく解説しています。

11. 「世帯分離」で非課税にできるのかという問いに、どこまで答えられるのか

世帯分離は、同じ家に住みながら住民票の上で世帯を分ける行政手続きです。収入のある子と年金暮らしの親が同居している場合に、親を独立した世帯にすることで、親の所得が少なければ親の世帯が非課税世帯となり、介護保険料や高額療養費の自己負担の上限が下がることがあります。

ただし、これには生計が別であるという実態が必要です。分離によって国民健康保険料の均等割などが世帯ごとに計算されるようになり、親が家族の健康保険の被扶養者から外れることになれば、家族側の社会保険料や扶養控除の適用にも影響が出ることがあります。所得や資産の要件、自治体の基準によって軽減が受けられない場合もあるため、市区町村の窓口で事前に見積もっておく必要があります。

口座の名義を家族に分けることと、住民票の世帯を分けることは別の話です。名義をどう分けても、住民票の世帯が同じであれば、判定は世帯にいる人全員の前年所得で行われます。

11.1 世帯が2つになると「平等割」がどう効いてくるのか

世帯分離で見落とされやすいのが、国民健康保険料の上がり方です。国民健康保険料には、世帯ごとに一定額がかかる「平等割」という部分があります。世帯が2つに分かれると、この平等割がそれぞれの世帯にかかります。親の介護保険料が下がっても、世帯全体でみれば国民健康保険料の増加が上回り、合計では負担が増えるという結果になる場合があります。

12. 「非課税世帯だけが得をしている」という受け止めは、どこから来ているのか

厚生労働省の調査では、住民税非課税世帯に占める「世帯主が65歳以上の高齢者世帯」の割合が75%以上とされています。現役を引退して収入が年金だけになれば所得は下がるため、線を下回る人が増えるという構造です。

12.1 所得は少なくても資産はある世帯が生まれる理由を確認

いまの判定は、世帯にいる人全員の前年の所得だけを見ており、預貯金や不動産といった資産の状況は反映されません。そのため、まとまった退職金や自宅を持っているシニア層でも、年金収入などが少なく所得が基準を下回れば非課税世帯になります。一方で、働きながら子育てをする現役世代は、わずかな所得の差で課税される側にまわり、支援が届かないという逆転が起こりやすくなります。資産と所得の開きをどう扱うかについて、公平性の議論が続いています。

12.2 給付の判定に資産を反映させるかどうかは、どう議論されているのか

資産はあるが所得が低い層への支援のあり方については、公平性の観点から見直しを求める声があります。今後の経済対策や給付付き税額控除の検討においては、所得の要件に加えて世帯の資産をどう反映させるかが長期的な課題に挙げられています。現時点では住民税の非課税といった所得の基準が中心ですが、制度をどう持続させるかという議論の行き先には注意が必要です。

橋本 優理
2026年の時点では、マイナンバーの公金受取口座の登録は給付を受け取るための口座情報を届けておく仕組みで、行政が預貯金の残高を自動で把握できるものではありません。とはいえ、資産をどう反映させるかという議論は続いています。ご相談では、いまの判定が所得だけを見ているという前提のうえで、どの年に何を申告するかを組み立てていただくようにしています。

13. 住民税非課税世帯の判定について、よく寄せられる質問を確認

13.1 Q1. インターネットの試算ツールだけで、自分の世帯が非課税かどうか判断できるのか

A. 試算ツールの結果は目安にとどまります。配偶者控除や医療費控除、社会保険料控除の適用状況によって所得の計算結果は大きく変わり、自治体によって基準の位置も違います。最終的な判定は、お住まいの役所が発行する課税証明書や非課税証明書で確かめる必要があります。

13.2 Q2. 年度の途中で世帯主が亡くなったとき、非課税世帯の判定はどう扱われるのか

A. 住民税は毎年1月1日時点の状況と前年の所得で判定されます。年度の途中で世帯主が亡くなっても、1月1日時点で課税されたその年度の住民税の納税義務は消えず、相続人が引き継ぎます。世帯の状況が変わったことによる非課税世帯の該当の有無や、各種給付金の判定については、自治体や時期によって基準が異なるため、お住まいの市区町村の窓口で確かめてください。

14. 【独自試算】株式の損失を申告して利益と差し引くと、還付される額と判定が動く分岐点はどこにあるのか

損が出た年に確定申告をして同じ年の利益と差し引くと、源泉されていた税の一部が戻ってきます。その一方で、申告をすると差し引いたあとに残る利益が合計所得金額に加わるため、住民税が課されない世帯の線を越えることがあります。戻る額と、越えるかどうかの分かれ目を、同じ前提のうえに並べてみます。

前提は次のとおりです。

  • 65歳以上のひとり暮らしで、収入は公的年金だけ。年金収入は155万円とします。神戸市の基準では、この収入は合計所得金額45万円にあたり、ひとり暮らしの非課税の上限とちょうど同じ位置です
  • 株式などを2つの口座で運用しており、その年にA口座で利益60万円、B口座で損失が出たものとします
  • 利益にかかる税は、所得税と住民税を合わせて20%と仮定します。実際の税率や計算の方法は制度で細かく定められているため、ここでは計算を見やすくするための仮定として置きます
  • 株式などの譲渡による損益のほかに、判定に入る所得はないものとします。所得控除や自治体ごとの上乗せは考えません
  • 金額はいずれも約・目安であり、保証ではありません

申告をしない場合、A口座の利益60万円は源泉された税で完結し、判定に使う合計所得金額は45万円のままです。戻る税は0円で、線の内側にとどまります。

B口座の損失が40万円で、両方を申告して差し引いた場合はどうなるか。損失40万円に対応する税が戻るので、還付は40万円の20%で約8万円です。ただし差し引いたあとに残る利益20万円が判定に加わるため、合計所得金額は45万円と20万円を足した65万円となり、上限の45万円を20万円上回ります。

B口座の損失が60万円で、利益と同額だった場合は、差し引いたあとに残る利益が0円になります。還付は60万円の20%で約12万円、判定に使う合計所得金額は45万円のままです。

つまり分かれ目は、損失がその年の利益60万円に届くかどうかにあります。損失が59万円なら還付は約11万8000円まで増えますが、差額の1万円が判定に乗るため、上限とちょうど同じ位置にいる世帯では線を越えます。還付が増える向きと、判定が動く向きが、同じ手続きから同時に出てくるわけです。

年金収入に余裕がある場合は、分かれ目の位置も変わります。155万円が合計所得45万円にあたるという神戸市の対応関係をそのまま使うと、年金収入150万円は合計所得40万円にあたり、上限まで5万円の余地があります。この場合、損失が55万円あれば差し引いたあとに残る利益は5万円で、合計所得金額は45万円にとどまり、線を越えません。還付は55万円の20%で約11万円です。年金収入が5万円低いだけで、判定を動かさずに申告できる損失の下限が60万円から55万円へ下がる、という関係になります。

ここで見ていただきたいのは還付される額の大きさではなく、損失がその年の利益に届くかどうかで判定の側が動くという関係のほうです。実際の運用では値動きによって元本割れが起こることもあり、損失の額を自分で選べるわけではありません。税率の仮定や控除の扱い、自治体ごとの基準額は実際とは異なります。申告するかどうかを決める前に、税務署や税理士、お住まいの市区町村の窓口で、ご自身の状況にあてはめて確かめてください。

15. 【監修者コメント・村岸理美】合計所得金額45万円という上限は、ひとり暮らしで神戸市の基準に限った数字

村岸 理美

今回のデータで最も注目していただきたいのは、ひとり暮らしの上限が合計所得金額45万円で、配偶者や扶養親族が1人いる場合は101万円になるという、2倍を超える開きです。年金収入に置き換えれば155万円と211万円の差になります。同じ「住民税非課税世帯」という言葉で語られていても、線の位置は世帯の人数と収入の種類で動きます。

記事中の試算のように、株式の損失を申告して利益と差し引くと、差し引いたあとに残る利益が合計所得金額に入ってきます。ここで補っておきたいのは、45万円という数字が、ひとり暮らしで、神戸市の基準を使った場合に限った上限だということです。同じ所得でも自治体によって基準額の設定が違いますし、世帯にお子さんや配偶者がいれば線は上に動きます。ご自身の線がどこにあるのかは、記事の45万円ではなく、お住まいの市区町村が示している式で確かめていただきたいところです。

また、判定は世帯にいる人の全員が非課税であることを求めています。ご自身の所得だけが線の内側にあっても、同じ世帯に課税されている方がいれば、世帯としては対象になりません。試算では税率を20%と仮定していますが、実際の税額や申告できる範囲は制度で細かく定められています。CFPとして家計相談を受けるなかでも、還付される額だけを見て申告を決めてしまい、翌年度の保険料や給付の判定で驚かれるケースを見てきました。ファイナンシャル・プランナーとしてお伝えしたいのは、申告するかどうかは税額だけの問題ではなく、翌年の判定まで含めて比べる問題だということです。まずは課税証明書で今の区分を確かめ、そのうえで税務署や市区町村の窓口に、ご自身の年の数字を持って相談してみることをお勧めします。