令和8年度の年金額は前年度から引き上げられました。ただ、上がった実感が薄いという声も聞きます。
引上げ率は基礎年金が1.9%、厚生年金の報酬比例部分が2.0%です。一方で物価変動率はプラス3.2%でした。
この記事では、その差がどこから生まれているのかを分解したうえで、いま受け取っている方の年代別の平均月額を確認していきます。
1. 令和8年度の年金改定は「基礎年金1.9パーセント」の引き上げ
まず、改定の内容から見ていきます。
1.1 満額は月7万608円になった
厚生労働省の発表によると、令和8年4月分からの年金額は、令和7年度から基礎年金が1.9%、報酬比例部分が2.0%の引上げです。
国民年金の満額は月6万9308円から7万608円へ、1300円増えました。厚生年金の標準的な夫婦2人分は月23万2784円から23万7279円へ、4495円増えています。
1.2 昭和31年4月1日以前生まれは7万408円
国民年金の満額には2つの額があります。昭和31年4月2日以後生まれの方が7万608円、昭和31年4月1日以前生まれの方が7万408円です。
いずれも前年度から1300円の増額です。生年月日で200円の差がつきます。
1.3 物価変動率はプラス3.2%だった
同じ年度の物価変動率はプラス3.2%です。年金の引上げ率1.9%とは1.3ポイントの開きがあります。
物価が上がった分をそのまま反映する仕組みではない、ということになります。
2. 年金額が上がっても「生活は楽にならない?」物価上昇率との「1.3ポイント差」
年金が上がった実感が薄い最大の理由は、実際の物価の上がり方に対して、年金の引き上げ幅が追いついていないことにあります。
今回の年金改定の基準となった同じ年度の物価変動率は、プラス3.2パーセントでした。これに対して、基礎年金の引き上げ率はプラス1.9パーセントです。つまり、物価の上がり方と年金の上がり方の間に「1.3ポイント」もの大きな差が生じているのです。
この「1.3ポイントの差」は、主に2つの理由から生まれています。
2.1 賃金が物価を下回った分が1.1ポイント
改定に使われたのは名目手取り賃金変動率のプラス2.1%です。物価変動率の3.2%との差1.1ポイントは、賃金の伸びが物価に届かなかった分になります。
年金額の改定では、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回るとき、賃金のほうを使って改定する決まりになっています。
2.2 マクロ経済スライドの分が0.2ポイント
残りはマクロ経済スライドによる調整です。令和8年度の調整率は基礎年金がマイナス0.2%、報酬比例部分がマイナス0.1%でした。
2.1%から0.2%を引くと1.9%、0.1%を引くと2.0%になります。発表されている改定率と一致します。
2.3 スライドだけで1.3ポイント下がったのではない
1.3ポイントの内訳は、賃金要因の1.1ポイントとマクロ経済スライドの0.2ポイントです。足すと1.3ポイントになります。
マクロ経済スライドの影響は0.2ポイントで、差の大半は賃金の伸びが物価に届かなかったことによるものでした。ここを分けて見ておくと、報道の数字が読みやすくなります。
「上がったのに苦しい」という感覚は数字のうえでも説明がつきます。上がり方が物価に追いついていない、という読み方をしておくと納得しやすいです。
