9月は敬老の日を控え、老後の暮らしとお金について家族のあいだで話が出やすい時期です。
そこで話題に上がりやすいのが、いま積み立てているお金を何歳まで続けるのかという点です。毎月いくら入れているかはすぐに答えられても、いつまで持ち続けるつもりなのかまで決めている方は、それほど多くありません。
証券会社で個人のお客様の資産運用のご相談に応じてきた立場から申し上げると、積立の設定を終えた時点で計画は完成したと受け取ってしまう方が少なくありません。ただ、最後の金額に効いてくるのは、入金が終わったあとに何年残っているかというところです。
毎月10万円を15年入れたあと、手を触れずに15年置いた場合の試算をたどりながら、積立を止めたあとの期間が最終の金額にどう効くのかを、この記事では順に見ていきます。
なお、新NISAを使った長期の積立シミュレーションと、築いた資産の使い方に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 毎月10万円の積立が終わった時点から、その後の15年で金額はどこまで伸びるのか
投資には元本割れのリスクが伴いますが、長い年月をかけて積立を続けることが、資産形成につながる場合もあります。まずは、入金の終わったあとに何が起きるのかを、金額で確かめておきます。
毎月10万円を入れる形と毎月3万円を長く続ける形で、資産の育ち方がどう分かれるのかは、【新NISAシミュレーション】月10万円×15年積立+放置で資産はどう化ける?月3万円の少額戦略も公開でくわしく解説しています。
ここでは、つみたて投資枠を活用し、金融庁「NISAの活用事例」を参考にした条件で計算した結果を見ていきます。
1.1 15年の積立を終えたあと、15年そのまま保有した場合の資産額「一律年利3%」
- 約3525万円(元本1800万円)
つみたて投資枠の年間上限額は120万円と定められています。毎月10万円という金額は、この上限を12カ月で割り切った水準にあたります。同じペースを15年続けたところで、非課税保有限度額1800万円に届きます。
ここで一度、手が止まります。枠が埋まってしまうため、同じ非課税の口座に新しく資金を足すことはできなくなるからです。それでも運用は終わりません。年利3%で運用が続いたと仮定すると、そこから15年後の資産額は約3525万円という計算になります。
入れたお金は15年目までの1800万円で打ち止めです。積立を終えた時点の残高と、約3525万円との開きは、その後の15年が作ったことになります。積立を止めることと、資産形成を止めることは、同じではないという見方ができます。
2. 毎月3万円を40年かけて積み立てる形とは、時間の使い方がどこで分かれるのか
もっとも、毎月10万円という金額を続けるのは重いと受け止める方も多いでしょう。
そこで、毎月3万円を40年間続けた場合も並べて確かめます。
2.1 40年かけて毎月3万円を積み立てた場合の資産額「一律年利3%」
- 約2752万円(元本1440万円)
毎月3万円という水準なら、家計を見直せば手が届くと考える方もいるかもしれません。
こちらも年利3%で運用が続いたと置いた計算です。40年をかけて元本1440万円を積み上げると、最終的な資産額は約2752万円という見込みになります。
二つを並べると、時間の使われ方が違うことに気づきます。前者は入金する15年と、入金しない15年に分かれています。後者は40年のあいだずっと入金が続きます。前者では、後半の15年に入ってくるお金がないぶん、残高が伸びる理由は運用の側だけになります。
毎月に回せる金額が小さくても、長い年月を味方につければ資産を育てられる可能性はあります。投資にはリスクが伴いますが、制度の仕組みを踏まえて使えば、老後資金づくりの選択肢の1つになり得ます。
3. 「新NISA」2024年の制度改正で、非課税で持てる期間はどう扱われることになったのか
「新NISA」は2024年の制度改正で姿を変え、投資で得た利益を非課税のまま持てる範囲が大きく広がりました。
従来のNISAと並べると、1年間に入れられる枠が拡大し、非課税で持てる期間の区切りも無くなっています。長い年月をかけた資産形成に取り組みやすくなったところが、大きな特徴です。
保有を続ける期間という観点では、後者の変更がそのまま効いてきます。非課税で持てる期間に区切りがあった頃は、積立を終えたあとも期限が近づくたびに、売るのか、課税される口座へ移すのかを決める必要がありました。区切りが無くなったことで、積立を止めたあとの年数を、家計の都合ではなく使う時期から決められるようになっています。
4. 老後資金づくりで並ぶ「iDeCo」との違いは、資金を引き出せる時期にどう表れるのか
老後資金づくりの話でしばしば引き合いに出されるのが「iDeCo(個人型確定拠出年金)」です。二つの違いは、積み立てたお金にいつ手が届くのかというところに表れます。
iDeCoは原則として60歳になるまで資金を引き出せません。一方の新NISAは、積立額を途中で下げたり上げたり、急な出費が生じたときに資産の一部を現金にしたりすることができます。
この違いは、積立を止めたあとの期間に二通りの形で表れます。iDeCoは引き出せない代わりに、60歳までは持ち続けることが仕組みとして決まっています。新NISAはいつでも引き出せる代わりに、何年持ち続けるのかを自分で決めることになります。自由に動かせるということは、動かさないという判断も自分で選び取る必要がある、ということでもあります。
続けられるだろうかという迷いが、最初の一歩をためらわせることもあります。暮らしの移り変わりや家計の波に合わせて金額を動かせるところは、はじめての方にとって扱いやすい性質だといえます。
5. 保有を続けられるかどうかを左右する「リスク許容度」は、どの要素から組み立てるのか
新NISAなどで積立投資を始めるときに、頭の片隅に置いておきたいのが、どの程度の値動きまで受け入れられるかを表す「リスク許容度」という考え方です。
これは、持っている資産が一時的に値下がりしたときに、家計の面と気持ちの面でどこまで受け止められるかを表す目安を指します。「10%下がっても長期の投資だから気にならない」という方もいれば、「5%下がった時点で落ち着かなくなる」という方もいます。
この目安を左右するのは、主に三つの要素です。一つ目は年齢と運用できる期間で、長い期間の運用ができるほど、一時的な下落から回復する時間を確保しやすくなります。二つ目は収入と余裕資金の有無で、日々の生活費やいざという時の予備資金が手元にあるほど、リスクに耐えやすくなります。三つ目は投資経験と性格で、値動きに対する精神的な耐性は人それぞれ異なります。
手がかりになるのは、値下がりの場面を具体的に思い浮かべてみることです。持っている資産が20%下がったとしたら、暮らしや気持ちにどんな影響が出るのか。その状態で落ち着いて持ち続けられるのか、生活費に支障は出ないのか。ここを言葉にしてみるほか、金融機関が用意しているリスク許容度の診断ツールで自分の傾向を客観的に見ておく方法もあります。
この目安を先に持っておけば、相場が下がった場面で慌てて売ってしまう、自分に合わない商品を選んでしまう、といった行き違いを避けやすくなります。積立を止めたあとの期間は、毎月の引き落としという手ごたえがなくなるぶん、この目安が判断の支えになります。
6. 「何歳から始めるか」は、積み立てる年数と持ち続ける年数のどちらに効いてくるのか
新NISAでの資産形成というと、毎月いくら入れるかという話に関心が集まりがちです。ただ、長い期間の投資では、入れる金額と同じくらい、何歳から始めるかが将来の資産額を左右します。
背景にあるのは、運用で得た利益がさらに利益を生む「複利効果」です。積み立てる金額が同じでも、運用にあてられる期間が長いほど、資産が育つ時間を確保しやすくなります。
以下では、年代ごとに運用期間がどれだけ違うのかを見ながら、時間の数え方を整理していきます。
6.1 運用期間が10年の場合と30年の場合で、複利の効き方はどこが変わるのか
運用で生まれた利益を、そのまま投資へ回していくと、その利益がまた利益を生みます。これが「複利」と呼ばれる働きです。
毎月入れる金額が同じでも、運用にあてた期間が10年の場合と30年の場合では、資産の増え方に大きな開きが出ます。長い期間にわたって運用益が重なり続けるからです。
利回りや毎月の金額と並んで、どれだけ長く運用の中に置いておけるかが、結果を左右する要素になるということです。ここでいう運用期間には、入金している年数だけでなく、入金を終えてから持ち続けている年数も含まれます。
6.2 65歳までと考えると、20歳・30歳・40歳・50歳では運用期間がどれだけ違うのか
65歳まで積立投資を続けると置いてみると、始める年齢によって運用期間には次の差が出てきます。
- 20歳から始める場合:45年間
- 30歳から始める場合:35年間
- 40歳から始める場合:25年間
- 50歳から始める場合:15年間
毎月3万円という同じ積立でも、20代と50代のあいだには30年の開きが生まれます。
この年数の差は、将来の資産額に効いてくる可能性があります。早く始めるほど、毎月の金額を無理に引き上げなくても資産形成を進めやすくなります。あわせて見ておきたいのが、65歳のあとにも年数が残るという点です。使い切るまでの年数まで数えると、時間の見積もりは変わってきます。
6.3 40歳代後半や50歳代から始める場合、これから使える年数をどう数えるのか
とはいえ、資産運用は若い世代に限った話ではありません。
住宅ローンや教育費の負担が一段落した40代後半から50代で、老後資金づくりに着手する人も実際に多くいます。定年の延長や再雇用の広がりを受けて、60代以降も働き続ける人が増え、運用にあてられる期間も以前より長く取れるようになりました。
新NISAでは非課税保有期間が無期限となりました。退職を迎えた後も、運用を続けながら資産を使っていけます。積立を続けられる年数が短くても、持ち続けられる年数はその先に伸ばせるということです。
早く始めるほど時間の面で有利なのは確かです。ただ、いま手を付けられるのは「もっと早く始めればよかった」という振り返りではなく、これから始めるかどうかという一点です。自分に合った速さで動き出すことが、将来の選択肢を増やすことにつながります。
7. 保有を終えたあとの取り崩しは、「4%ルール」からどう見積もることになるのか
新NISAなどを使った資産形成では「どのように増やすか」に関心が向きやすいものですが、老後に入ってからは「どのように使うか」も同じだけ向き合うテーマになります。積み上げたところで終わりではありません。
現役を退いた後は、公的年金でまかないきれない生活費を、築いてきた資産から補っていく「取り崩し期」に入ります。
総務省の家計調査では、世帯主が75歳以上の無職世帯(二人以上の世帯)について、年金の収入だけでは生活費に届かず、毎月平均で約2万7000円を貯蓄の取り崩しで埋めている姿が示されています。
この取り崩し期の目安としてよく引き合いに出されるのが、「4%ルール」と呼ばれる考え方です。
7.1 「4%ルール」とは、資産残高の何%を毎年取り崩す考え方なのか
米国で示された考え方で、資産残高の4%にあたる額を毎年の取り崩しの上限に置いておけば、長い期間にわたって資産が底をつきにくい、というものです。
たとえば、
- 2000万円 → 年80万円(月約6万6000円)
- 3000万円 → 年120万円(月10万円)
といった水準を取り崩す形になります。
老後の家計では公的年金が中心の収入になりますが、そこへ毎月数万円を資産から足していく形に置き換えて考えると、将来の暮らしの姿を思い描きやすくなります。
ここで、保有を続ける期間の話とつながります。取り崩しを始めても、残っている分の運用は続いています。全部を現金にしてしまうか、使う分だけを取り出して残りは持ち続けるかで、資産の減り方は変わってきます。
7.2 まとまった額を一度に使う形と、毎月少しずつ取り崩す形は何が違うのか
老後資金は、大きな額を一度に引き出すのではなく、毎月決まった額を少しずつ取り出していく形が基本になります。
年金で不足する分だけを埋める、医療や介護の費用に備える、相場が下がっている時期の売却を避ける。こうした狙いに合わせやすくなり、結果として資産寿命が延びやすくなります。
平均寿命が延びている今は、どれだけ増やせるかと同じくらい、どれだけ長く持たせられるかが問われるようになっています。
7.3 日本の家計に「4%ルール」を当てはめるとき、どこを自分の数字に置き換えるのか
ただし、この4%という数字は海外市場の長い期間のデータから導かれたもので、日本の家計にそのまま当てはまるとは限りません。受け取る年金額、持ち家か賃貸か、医療や介護にかかる費用、夫婦か単身かといった条件によって、必要な生活費は大きく変わります。
4%という数字を安全圏の目印として受け取るより、自分の家計で毎月いくら足りなくなるのかを先につかんでおくほうが役に立ちます。受け取れる年金の見込み額については、年金事務所や「ねんきんネット」で確かめていただくのが確実です。
7.4 増やす段階から、使いながら持たせる段階へ何を引き継ぐのか
どの商品に投資するかという話は、資産形成の入り口では関心を集めます。ところが老後が近づくにつれて前に出てくるのは、積み上げた資産をどう取り崩し、どう長持ちさせるかという問いのほうです。
新NISAは資産を築く側を後押しする制度ですが、その先で老後の生活費としてどう使うのかまで見通しておくと、ライフプランは現実の暮らしに近づきます。積立を止めたあとの期間は、増やす段階と使う段階をつなぐ場所にあたります。
8. 長く保有することを前提にすると、「新NISA」のどの注意点が効いてくるのか
新NISAに取り組むときは、制度の良い面と並べて、先に押さえておきたい注意点も見ておきたいところです。
年間投資枠が広がり、非課税期間が恒久化されたことで、新NISAは以前より使いやすい制度になりました。その一方で、長い期間の運用を前提にする仕組みですから、自分のリスク許容度をつかみ、いつの時点で資産を取り崩すのかも合わせて考えておくことになります。
積立投資を続けていれば、相場が大きく下がる場面に出会うこともあります。株式市場は長い目で見れば成長を続けてきましたが、その途中では何度も急な下げがありました。持ち続ける期間が長いほど、そうした場面に立ち会う回数も増えます。
ですから、積立投資の仕組みと価格変動リスクを踏まえたうえで、値下がりした場面で何をするのかを、先に決めておきたいところです。
何を買うかという場面も同じです。金融庁が公表している「つみたて投資枠対象商品届出一覧」では、対象となる商品の見直しや追加が続けられており、現在は300本を超える商品が対象となっています。
選べる幅が広いぶん、人気があるからという理由だけで決めるのではなく、長く持ち続けられるか、自分の方針や目的に合っているかを確かめながら見ていくことになります。何年持ち続けるつもりなのかが決まっていると、この確認がしやすくなります。
税の面でも、NISA口座には通常の課税口座と違う特徴があります。その一つが「損益通算」ができないことです。ほかの口座で出た利益と、NISA口座の中で生じた損失を相殺する扱いは取れません。
損失を翌年以降へ持ち越す「繰越控除」も使えません。こうした制度上の特徴を踏まえたうえで使っていくことになります。保有している間や受け取るときにかかる費用や税の扱いは、選んだ商品や口座の区分によって変わるケースもあります。
9. 積立の設定を終えるまでに、決めておきたいことは何か
ここまでの話は分かったけれど、では何から始めればよいのか。そこで止まってしまう方も多いのではないでしょうか。
はじめから完璧な形を目指さず、小さく始めて後から整えるという進め方もあります。ここでは、はじめて取り組む方が着手しやすい三つの段取りを挙げます。
9.1 1つ目:積立に使う口座を用意して、毎月の引き落とし元まで決める
はじめに、積立に使う口座を用意します。手続きはオンラインで済むことが多く、本人確認の書類がそろっていれば、申し込み自体にさほど時間はかかりません。あわせて、毎月どこから引き落とすのかまで決めておくと、あとで止まりにくくなります。
9.2 2つ目:暮らしに響かない金額で積立の設定をして、値動きに慣れていく
はじめから上限いっぱいの額や高い目標を置く必要はありません。暮らしに響かない金額で設定して、値動きのある資産を持つ感覚に慣れていく進め方もあります。金額は後から動かせますので、無理なく続く水準に置いておくほうが、入金の期間を長く取りやすくなります。
9.3 3つ目:設定を終えたあと、何年持ち続けるつもりなのかを書き留める
自動での積立を設定し終えたら、毎日の値動きや評価損益を細かく追う必要はありません。長い期間の投資で足をすくわれやすいのは、一時的な値下がりに気持ちが動いて途中でやめてしまう場面です。あわせて、そのお金を何年後に使うつもりなのかを書き留めておくと、積立を止めたあとの期間が空白にならずに済みます。
積立にあてられる期間が15年と決まっている場合に、想定する利回りの違いが金額をどこまで動かすのかは、【新NISA】毎月5万円を15年運用するといくら?50歳から始める利回り別シミュレーションで確認できます。
10. 【独自試算】積立を止めて15年持ち続けた場合と、30年積み立て続けた場合で到達額はどこまで開くのか
記事の試算では、毎月10万円を15年積み立て、その後15年そのまま保有すると約3525万円という結果でした。ここでは、もし積立を止めずに30年間ずっと毎月10万円を入れ続けられたとしたら到達額がどうなるのかを計算し、二つを並べてみます。保有を続ける期間だけで伸びた分と、入金を続けて伸びた分を分けて見るためです。
前提条件
- 毎月の積立額はどちらも10万円とし、積立は毎月末に行うものとする
- 運用の利回りは一律年利3%とし、月ごとの利回りは(1+年利)の12分の1乗から1を引いた値で計算する
- ケース①は15年間積み立て、そのあとは新しく資金を足さずに15年間そのまま保有する。合計30年
- ケース②は30年間、毎月10万円を積み立て続ける。合計30年
- ケース②の元本3600万円は、新NISAの非課税保有限度額1800万円を超える。ここでは枠の内側か外側かを区別せず、入金を続けた場合と保有を続けた場合の効き方だけを比べるための計算とする
- 売買にかかる手数料や、保有している間にかかる費用、税は考えない
- 実際の相場は毎年同じ利回りでは動かない。ここでの金額は前提を置いたうえでの目安として見ていただきたい
①15年積み立てて、その後15年そのまま保有した場合
- 積立が終わる15年目の残高は約2262万円(元本1800万円)
- 20年目は約2623万円、25年目は約3041万円
- 30年目は約3525万円で、記事の試算と同じ結果になる
- 入金をやめたあとの15年で増えた分は約1262万円
②30年間ずっと毎月10万円を積み立て続けた場合
- 15年目までは①と同じ約2262万円
- 20年目は約3269万円、25年目は約4435万円
- 30年目は約5787万円(元本3600万円)
③二つの差をどこで見るか
- 30年目の到達額の差は約2262万円
- そのうち元本の差が1800万円を占め、運用益の差は約462万円にとどまる
- 運用益はケース①が約1725万円、ケース②が約2187万円
- ケース①が入金をやめたあとの15年で伸ばした約1262万円は、ケース②が同じ15年で追加した元本1800万円の7割ほどにあたる
この二つを並べると、読み取れることが二つあります。一つは、到達額の差である約2262万円が、毎月10万円を15年積み立てた時点の残高とちょうど同じ金額になっているという点です。後半の15年に入れたお金は、その15年ぶんしか運用されないため、15年積み立てた場合と同じ金額にしかなりません。追加で1800万円を入れても、増える運用益の差は約462万円にとどまる、という言い方もできます。
もう一つは、入金をやめた側の15年です。1円も足していないのに約1262万円伸びています。すでに積み上がった残高に利回りがかかり続けるためで、後から入れたお金より、早く入れて長く置いたお金のほうが働く時間を持っているということです。積立を止めることと、保有を止めることを分けて考える理由がここにあります。いずれも上の前提で置いた目安であり、投資には元本割れの可能性があります。利回りが毎年同じ水準で続くことも、実際にはまずありません。
11. 【監修者コメント・村岸理美】年利3%という前提と、非課税の枠が埋まったあとの扱いを補う
今回の数字で最も注目していただきたいのは、記事中の試算のように、追加で1800万円を入れた場合でも運用益の差が約462万円にとどまるという部分です。入れた金額の大きさと、増えた金額の大きさが比例していません。同じ1万円でも、30年前に入れた1万円と、5年前に入れた1万円では、運用されていた時間が違うからです。CFPとして家計相談を受けるなかでも、毎月の積立額を増やす話ばかりが先に立ち、いつ入れたかという時間の差が見落とされているケースは少なくありません。
適用の条件も添えておきます。この試算はどちらも年利3%で30年間ならして動いたと置いた計算で、増える年と減る年が入り混じる実際の値動きとは異なります。また、ケース②の元本3600万円は新NISAの非課税保有限度額1800万円を超えるため、同じ非課税の枠の中では成り立ちません。枠を超えた分を課税される口座で持つ場合は、運用益に課税されるため、手元に残る額はこの計算より小さくなるのが一般的です。非課税で保有できる限度額や枠の扱いは制度として定められたもので、今後の見直しで変わる可能性もあります。
ファイナンシャル・プランナーとしてお伝えしたいのは、積立の年数と保有の年数を、別々の数字として書き出していただきたいということです。ご自身が「積立を何年続けられるか」で悩んでいるのか、「そのあと何年置いておけるか」を決めかねているのか。どちらに近いかが分かれば、次に確かめる場所も変わってきます。老後にいくら入ってくるのかという土台の部分は、ねんきん定期便やねんきんネットで見込み額を確認するところから始めてみましょう。


