3. 元に戻す理由も説明されている

そもそも戻せるのか、という点にも触れられています。

3.1 消費税は社会保障の財源

会見では、飲食料品の消費税率を元の税率である8%に戻せないのではないかという指摘についても説明されています。消費税が貴重な社会保障財源として活用されていることは共通認識であるとされています。

下げたままにすると、社会保障の財源が細るという関係にあります。

3.2 財政の持続可能性と市場の信認

もうひとつの理由として、財政の持続可能性を実現し、市場の信認を確保していく観点が挙げられています。そのうえで、2年後には確実に税率を元に戻すとされています。

2年という期間があらかじめ区切られているのは、この考え方によるものです。なお会見では、給付についても法律で措置することを検討しているため、国会に提出予定の法律に景気条項を盛り込む必要はないと考えているとされています。

4. 影響を受ける事業者への対応は別に検討される

家計以外にも影響が及ぶ範囲が示されています。

4.1 仕入税額控除の還付が受けられない農業従事者

会見では、仕入税額控除の還付が受けられない農業従事者等に関して、その影響を見極めつつ、過去の様々な支援策も参考としながら、現場の納得感のある対応を検討し、今後の予算編成プロセスで具体化するとされています。

売る側の税率が下がると、仕入れで払った消費税を引ききれない場合が出てくるためです。

4.2 外食産業には資金繰りの予算措置

外食産業についても、その影響を見極めた上で、過去の様々な支援策を参考としながら、資金繰り等のための予算措置を検討し、支援策を具体化するとされています。

飲食料品の税率が下がっても外食は対象外ですので、価格の見え方に差が出ることが背景にあります。

5. 税率を柔軟に変えられる仕組みも整える

今回の引下げにあわせた取り組みも示されています。

5.1 システムの普及促進を図る

会見では、税率の変更に柔軟に対応できるシステムの普及促進を図ることとしており、これは我が国にとっての新たな挑戦でもあるとされています。

急な感染症や大災害などが発生した際に消費税率を柔軟に変更できるようにする、という考え方が背景にあると説明されています。

6. 家計として見ておきたい3つのこと

いま手元でできることをまとめます。

6.1 1%の期間は2年だと押さえる

令和9年4月から令和11年4月までの2年間が、飲食料品の消費税率が1%になる期間です。恒久的に下がるわけではありませんので、その前提で食費を見ておくと戻ったときに慌てにくくなります。

6.2 自分が給付の対象に入るか確かめる

上回る支援を受けられるとされているのは、給付の対象となる中所得・低所得の現役勤労者の大宗についてです。勤労意欲のある低所得の方への対応は本格導入までに、就労していない高齢者の方への対応は令和12年までに結論を得るとされており、いずれも検討の途中です。

6.3 9月の大綱を待つ

給付の額や対象の細かい線引きは詳細設計の途中です。9月に大綱を決定した上で臨時国会に法案を提出し、早期成立を目指すとされています。

いま示されているのは方針であって、確定した金額ではありません。

中本 智恵

この話でいちばん扱いにくいのは、日付が3つあることです。令和9年4月に税率が1%へ、令和9年6月から給付の先行導入、令和11年4月に税率が8%へ戻って給付が本格導入。窓口でも、こういう多段階の制度変更はいちばん誤解が生まれやすい形でした。カレンダーに3つ書き出してしまうのが、いちばん確実です。

そのうえで、家計として動かせるのは食費の前提だけではありません。給付は口座に振り込まれる形で検討されていますので、公金受取口座の登録状況を確認しておくと、始まったときの受け取りが滞りにくくなります。これは制度が固まる前でも済ませておける準備です。

ただし、いま出ている数字はすべて方針の段階のものです。給付がいくらになるのか、どこで対象から外れるのかは、9月の大綱と法案で形が見えてきます。今の時点で受け取れる額を前提に家計を組み替えるのは、まだ早いと考えています。

7. 下がる話と戻る話はセットで示されている

飲食料品の消費税率は令和9年4月から2年間1%に引き下げられ、令和11年4月の本格導入に合わせて元の8%に戻すとされています。日本で消費税を導入して以来はじめての減税で、0%ではなく1%としたのは事業者のシステム改修の期間を短縮できるためです。

1%の期間中も、令和9年6月以降は所得に連動したきめ細かな給付が先行導入されるとされています。税率としては1%が残りますが、給付を合わせて実質ゼロ化を実現するという組み立てです。

8%に戻す際の負担増への懸念については、給付の対象となる中所得・低所得の現役勤労者の大宗については消費税率引下げの効果を上回る支援を受けられるとされています。ただし「すべて」ではなく「大宗」で、対象外となる方の支援は別に検討される整理です。

9月に大綱が決定される段階です。1%の期間が2年であることを押さえて、食費の見通しを立てておきましょう。

参考資料

中本 智恵